第36話 救世主の凱旋と、轟く錬金術師の名 ~「ただの薬師」という噂が、いつの間にか「神」になっていた件~
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世界樹の治療を終え、プリムローズを仲間に加えた俺たちは、エルフの里へと戻ってきた。
だが、報告するまでもなかった。
里は既に、お祭り騒ぎどころではない大騒ぎになっていたからだ。
「おおぉぉ……! 見ろ! 世界樹様が輝いておられる!」
「枯れていた枝から、一斉に花が咲いたぞ!」
「空気が……魔力が澄んでいく! 奇跡だ!」
里の中央にそびえる世界樹は、今や神々しい虹色の光を放ち、その生命の輝きは夜空をも焦がすほどだった。
そこへ、俺たちが悠々と歩いて戻ってくる。
「……あ、戻られたぞ!」
「クロウ殿だ! 錬金術師のクロウ殿が、世界樹様をお救いくださったんだ!」
エルフたちが駆け寄ってくる。
かつて俺たちを「奴隷商人」と罵り、弓を向けた者たちが、今は涙を流してひれ伏し、道を開けていく。
まるで王の凱旋だ。
◇
広間の最奥。
ゼルコバ長老が、震える巨体を揺らして待っていた。
「クロウよ……! お主、本当にやり遂げたのか……!」
「ああ。約束通りな。……それに、とびきりの土産も連れてきたぞ」
俺が一歩横に退くと、後ろから分厚い眼鏡をかけた小柄なエルフ――プリムローズが進み出た。
「ひ、久しぶりだな、ゼルコバよ。……鼻垂れ小僧だったお前が、随分と老けたものだ」
「なっ……!? そ、そのお姿は……まさか、初代様がお作りになられた『管理者の大賢者』様か!?」
長老が腰を抜かす。
数百年引きこもっていた伝説の存在が、外に出てきたのだ。
「うむ。私の新たなマスター、クロウ様の命により、これより私も里の発展(と食生活の向上)に協力する」
「マ、マスターだと!? 伝説の賢者様が、人間に従うと言うのか!?」
広間がどよめきに包まれる。
世界樹を治し、伝説の賢者を従えた人間。
もはや、彼らにとって俺は「客人」ではない。「生ける伝説」そのものだった。
「……クロウ殿。いや、クロウ様!」
ゼルコバ長老が、ドカッと地面に膝をつき、深々と頭を下げた。
それに倣い、警備隊長のリード、生意気だったリリア、そして里の全エルフが一斉に平伏する。
「我らエルフ一族、この御恩は未来永劫忘れませぬ! 貴方様こそ、我らの真の盟友……いや、守護神です!」
「いや、神ってほどじゃ……」
「宴じゃァァァ!! 今夜は朝まで、救世主様を称えるのじゃァァァ!!」
俺の謙遜も虚しく、盛大な祝宴が始まった。
俺が作った『ちらし寿司(エルフ風)』が振る舞われ、エルフたちは涙を流して「美味い! これぞ神の味!」と舌鼓を打った。
◇
そして、この出来事は「噂」という翼に乗って、瞬く間に世界中へと拡散していった。
エルフは閉鎖的だが、交易を行う商人はいる。
さらに、俺に餌付けされた「森の精霊」たちが、風に乗って噂を運んだのだ。
――『北の森の世界樹が、一夜にして蘇ったらしい』
――『死の病を治したのは、一人の人間の錬金術師だとか』
――『伝説の賢者を従え、虹色の薬を作る男』
――『その男、白衣を纏い、絶世の美女たちを連れている』
噂は尾ひれをつけて広がり、街の酒場で、王都のギルドで、そして王城の奥深くで囁かれ始めた。
『白衣の賢者』
『奇跡の錬金王』
そんな二つ名と共に。
◇
一方、とある宿場町の安酒場にて。
勇者アレクたちは、薄いスープを啜りながら、隣の席の冒険者たちの会話を耳にしていた。
「おい聞いたか? エルフの里を救った英雄の話!」
「ああ! なんでも、神話級の薬を作って、世界樹を生き返らせたってよ!」
「すげぇなぁ。それに比べて『勇者』様たちは……最近パッとしないよな」
アレクがピクリと反応する。
「……またあいつの話か。どこに行っても『白衣の錬金術師』の話ばかりだ」
ガルドが忌々しげに吐き捨てる。
彼らはまだ気づいていない。その「英雄」が、自分たちが捨てたクロウであることに。
ただ、漠然とした焦りと、得体の知れない敗北感だけが、彼らの心を蝕んでいた。
◇
エルフの里、翌朝。
俺たちは、里中のエルフに見送られながらビークルに乗り込んだ。
荷台には、長老が無理やり詰め込んだ『世界樹の枝(最高級杖素材)』や『エルフの秘薬』、そしてリリアが泣きながらくれた『手摘みの花』が満載されている。
「お兄ちゃん、また来てね! 絶対だよ!」
「ああ。また美味いもん作りに来るよ」
俺は手を振り、アクセルを踏んだ。
助手席には、新たな仲間プリムローズ。
後部座席には、アミィ、サフィ、ルビィ、ダイヤ。
そして最強の護衛、ゴルド。
俺たちのパーティーは、世界を救う力を持ちながら、気ままな旅を続ける。
次なる目的地は――地図に記された5つ目の光。
「次は……海か?」
「分析。海中都市に反応あり。古代の『海洋プラント』と思われます」
「海か! いいな! 新鮮な魚介類が待っているぞ!」
勇名など、俺にとっては「行列のできる店の予約」が取りやすくなる程度の特典でしかない。
俺たちは新たな食材と技術を求めて、海を目指して走り出した。
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