第21話 風の宿場町と、懐かしき受付嬢 ~あの時のポーション代、1000倍にして返します~
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貧しい村での「キャベツ投資」を終え、俺たちは『翠緑の樹海』の手前にある、大きな宿場町『ウィンドル』に到着した。
ここは街道の要所であり、多くの冒険者が行き交う休息の地だ。
「懐かしいな……。勇者パーティーにいた頃、ここにはよく立ち寄ったもんだ」
俺はビークルのハンドルを握りながら、街並みを眺めた。
当時は、巨大な荷物を背負わされ、泥だらけで歩いていた道だ。
だが今は、空調の効いた快適な車内で、美女たちに囲まれている。
「ご主人様、この街にもギルドがありますわ。ご挨拶に行かれますか?」
「ああ。どうしても会っておきたい人がいるんだ」
俺たちはビークルをギルド前の広場に停めた。
ドワーフの技術とエルフの意匠(と俺の趣味)が融合したスーパーカーに、街の人々がどよめく中、俺たちは颯爽と降り立った。
◇
ギルドの扉を開けると、馴染みのある喧騒が響いていた。
俺は真っ直ぐに一番端の受付カウンターへ向かった。
そこには、書類の山と格闘している、栗色の髪の女性がいた。
「すみません、買取をお願いしたいんですが」
「はい、ただいま! ……えっ?」
顔を上げた彼女――受付嬢のセリアは、俺の顔を見て目を丸くした。
ペンを取り落とし、口をパクパクさせている。
「ク、クロウさん!? クロウさんじゃないですか!!」
「よう、セリア。久しぶりだな。元気にしてたか?」
「元気も何も……! 死んだって噂を聞きましたよ!?」
セリアがカウンターから身を乗り出す。
彼女は、俺が勇者パーティーで冷遇されていた頃、いつも傷だらけの俺を気遣い、こっそりと廃棄予定のポーションを分けてくれたり、安い宿を紹介してくれた恩人だ。
「勇者様たちが先日ここを通った時、『あの役立たずは野垂れ死んだ』って笑っていて……私、心配で……!」
「はは、あいつら相変わらずだな。……でも見ての通りさ」
俺は両手を広げてみせた。
泥だらけの服ではなく、今は『フェンリルの白衣』を纏い、肌艶も良く、何より表情が明るい。
「ピンピンしてるよ。むしろ、あそこを抜けてから人生絶好調だ」
「え……? でも、お一人でどうやって……」
セリアが戸惑っていると、背後から華やかな声がかかった。
「ご主人様、手続きは終わりましたの?」
「マスター。この街の市場レート、分析完了しました」
ダイヤが優雅に日傘を閉じ、サフィが眼鏡を光らせ、アミィが微笑み、ルビィが手を振り、ゴルドが直立不動で敬礼する。
ギルド内の冒険者たちが、その圧倒的なオーラ(と美貌)に息を呑んだ。
「こ、この方々は……?」
「俺の今のパーティーメンバーだ。……まあ、家族みたいなもんだな」
「か、家族!? こんな綺麗な人たちと……!?」
セリアは腰を抜かしそうになっていた。
かつての「薄汚れた荷物持ち」が、今は「国を傾けるほどの美女軍団」を引き連れているのだ。理解が追いつかないのも無理はない。
「積もる話もあるが、まずは仕事だ。……これ、買い取ってくれるか?」
俺はアイテムボックスから、火山の森で狩りすぎた『溶岩水牛』や『紅蓮大角鹿』の肉塊をドサドサと出した。
さらに、本命の『黄金火猪』の燻製肉も、お裾分け程度に混ぜておく。
「ひぇっ!? こ、これ高級食材ばかりじゃないですか! 市場価格で金貨50枚はしますよ!?」
「ああ。全部換金してくれ。……それとな、セリア」
俺はカウンター越しに、小袋を一つ渡した。
中には、市場には出回らない『黄金火猪の特上ブロック』と、数枚の金貨が入っている。
「これは個人的なプレゼントだ」
「えっ!? そ、そんな! 受け取れません!」
「いいから取っとけ。……昔、傷だらけの俺にポーションをくれただろ? あの時の借りを返しに来ただけだ」
俺がウインクすると、セリアは顔を真っ赤にして、袋を抱きしめた。
その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「クロウさん……。本当に、良かった……。あんな酷い人たちと別れて、幸せになれたんですね……」
「ああ。おかげさまでな」
◇
その後、俺たちはギルド併設の酒場で、セリアの休憩時間を待って軽く食事をした。
彼女の話によると、先日ここを通った勇者パーティーは散々だったらしい。
「もう、酷かったんですよ! 『俺たちは勇者だぞ! 宿代くらいタダにしろ!』って騒いで……。装備もボロボロで、見てられませんでした」
「へぇ、あのプライドの高いアレクが値切り交渉か。落ちたもんだな」
「それに比べてクロウさんは……ふふ、見違えました。今のクロウさん、すごくカッコいいです」
セリアの屈託のない笑顔。
それは、俺が勇者パーティーを抜けて正解だったと確信させてくれる、何よりの証拠だった。
「ありがとう、セリア。……また来るよ」
別れ際、俺は彼女に手を振った。
彼女はギルドの入り口で、俺たちのビークルが見えなくなるまで、ずっと手を振り続けてくれていた。
「いい子でしたわね、ご主人様」
「ああ。あの笑顔が見れただけで、この街に寄った甲斐があったよ」
過去の精算は、復讐だけじゃない。
受けた恩を倍にして返すこと。それもまた、最高の「ざまぁ(見返し)」であり、成功者の特権だ。
心温まる再会を経て、俺たちの心は晴れやかだった。
さあ、次はいよいよ『翠緑の樹海』。
エルフの賢者のラボへ向けて、心機一転、出発だ!
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