第18話 火山麓の森と、贅沢すぎる「ハズレ」 ~A5ランクの肉しか出ないガチャ~
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灼熱の都市『ヴォルカ』での滞在を終えた俺たちは、山を下り、麓に広がる原生林へと足を踏み入れていた。
ここは火山灰の養分をたっぷり吸った木々が鬱蒼と茂り、独特の生態系を作っている。
「ご主人様、ここが噂の狩り場ですの?」
「ああ。ギルドの爺さんが言ってたんだ。『この森には、全身が黄金の毛皮で覆われたイノシシが出る』ってな」
ターゲットは『黄金火猪』。
その肉は、常に体内の熱で熟成されており、焼くだけで最高級の「燻製ベーコン」のような味がするという幻の食材だ。
「ベーコン……! ジュルリ……! お兄ちゃん、早く見つけよう!」
「ルビィ、よだれが出ているぞ。……よし、狩りの開始だ」
俺たちは森の中を探索し始めた。
新加入のダイヤ(お嬢様)が、優雅に日傘を構える。
「あら、熱源反応あり。……あちらの茂みですわ」
「よし、やれ」
「ごきげんよう」
ヒュンッ。
ダイヤの日傘から放たれた極細の熱線が、正確に茂みの奥を貫いた。
ドサリ、と何かが倒れる音がする。
「やったか!? 黄金か!?」
俺たちは期待して駆け寄った。
だが――。
「……なんだ、鹿か」
そこに倒れていたのは、立派な真紅の角を持つ巨大な鹿だった。
『紅蓮大角鹿』。
その角は高級な漢方薬になり、赤身の肉は脂肪が少なく、噛めば噛むほど味が出る高級ジビエだ。
市場価格なら、一頭で金貨30枚は下らない。
「ちぇー。ベーコンじゃないー」
「分析。……タンパク質含有量が高く、筋トレ後の食事には最適です。ですが、ターゲットではありません」
「まあ、ハズレだな。……一応、回収しておくか」
俺は「仕方なく」といった手つきで、その高級食材をアイテムボックスへ放り込んだ。
普通の冒険者なら狂喜乱舞する獲物だが、今の俺たちの口は完全に「燻製ベーコン」になっているのだ。
◇
気を取り直して探索を再開する。
数十分後、今度はルビィが鼻をひくつかせた。
「あ! お兄ちゃん! あっちからすっごくいい匂いがする!」
「おっ、でかしたルビィ! 今度こそ当たりか?」
俺たちは慎重に風下へ回り込み、開けた場所に出た。
そこには、岩のようにゴツゴツした皮膚を持つ、牛のような魔獣が草を食んでいた。
『溶岩水牛』。
全身に霜降りの脂を蓄え、その肉は「口の中で溶けるバター」と称される、超A級の牛肉だ。
「……またハズレかよ」
「牛ですわね。美味しいステーキにはなりますけれど、わたくし、今は豚肉の気分ですの」
「ううぅ……お肉はお肉だけどぉ……」
ルビィががっくりと肩を落とす。
贅沢な悩みだ。最高級の霜降り牛を前にして「ハズレ」呼ばわりとは。
「まあ、見つけたからには狩るか。ルビィ、出番だ」
「はーい。……えいっ!」
ドゴォォン!!
ルビィが軽くハンマーを振るうと、水牛は一撃で天に召された。
「……よし、回収。今夜はステーキも追加だな」
俺は溜息混じりに、巨大な水牛を収納した。
アイテムボックスの中が、鹿肉と牛肉の山になっていく。これだけで小さな国の食糧庫より豪華かもしれない。
◇
その後も、俺たちは森を彷徨った。
3匹目は、空を飛ぶ『極楽火鳥』。
その肉は、焼くとスパイスのような香りがする絶品鶏肉だ。
「……また違う。鳥かよ」
「美味しい焼き鳥にはなりそうですわね」
「分析。ボックスの容量が『食料』カテゴリで圧迫されつつあります」
ハズレを引くたびに、俺たちの食卓は豪華になっていくが、肝心の「黄金火猪」は姿を見せない。
俺たちの「物欲センサー」が強すぎるのだろうか。
「くそっ、どうなってるんだ! この森は高級食材のバイキング会場か!?」
「お兄ちゃん、もうお腹すいたー! あの鳥焼いて食べようよー!」
「待てルビィ。ここで妥協したら、俺たちの負けだ」
俺は錬金術師の意地を見せた。
ここで鶏肉を食べて満腹になったら、黄金火猪への情熱が冷めてしまう。
「諦めるな。必ずいるはずだ……本命の『特上カルビ』が!」
その時だった。
森の奥深く、夕闇が迫る木々の間から、ギラリと光るものが見えた。
「……! マスター、前方300メートル。極めて高い熱源反応!」
「あら? あの輝き……金貨かしら? いいえ……」
暗くなり始めた森の中で、そこだけ自ら発光するように輝く黄金の毛並み。
鼻息からは、シュウシュウと食欲をそそる白い煙が漏れている。
「いた……! 今度こそ!」
俺はゴクリと喉を鳴らした。
ようやくお出ましだ。数々の「高級なハズレ」を乗り越え、ついに本命が姿を現したのだ。
「全員、配置につけ。絶対に逃がすな。……今夜のメインディッシュは、あいつだ!」
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