第17話 灼熱ギルドの買取騒動と、マグマの上のピクニック
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ガランの工房で「封印」の処置を終えた俺たちは、そのまま街を去る……のではなく、もう一日だけこの火山都市『ヴォルカ』を堪能することにした。
せっかく来たのだ。名所巡りと、ギルドへの挨拶は欠かせない。
「暑苦しい街ですわね。……ですが、この熱気、悪くありませんわ」
新メンバーのダイヤが、優雅に日傘を差して歩く。
彼女のドレスは純白で、一見するとこの煤だらけの街で瞬く間に汚れそうだが、彼女の周囲には微弱な熱結界が張られており、埃一つ寄せ付けない。
「オオ! 我ガボディモ、この熱気デ調子ガ良イデス!」
「ゴルド兄さん、はしゃぎすぎて足元の石畳を砕かないでください」
真っ赤な装甲に生まれ変わったゴルド・改と、冷静なサフィ。
この異様な集団が歩くだけで、道行くドワーフたちが目を丸くして道を空ける。
◇
俺たちは街の中央にある『冒険者ギルド・火山支部』の扉をくぐった。
中はサウナのような熱気だ。上半身裸のドワーフや、汗だくの戦士たちがジョッキを片手に怒鳴り合っている。
「うわっ、なんだあの連中……?」
「すげぇ美人だぞ……しかも全然汗かいてねぇ」
「後ろの赤いのはなんだ? ゴーレムか?」
一斉に視線が集まる中、俺は涼しい顔で受付へ向かった。
もちろん、俺の『熱エントロピー操作』で、半径3メートル以内は快適な24度だ。
「買取を頼みたい。……ここの掃除で出たゴミなんだが」
俺はドワーフのラボ(自動工場)で拾った、真っ黒な石ころの山をカウンターに出した。
それは、工場で合金を精製する際に出た「残りカス」だ。熱エネルギーを吸いすぎて黒化している。
「はぁ? ゴミなら裏の捨て場に……んんッ!?」
気だるげに対応した受付のドワーフ娘が、石ころを見た瞬間に眼鏡をずり落とした。
彼女は震える手で石を掴み、ルーペで確認する。
「こ、これは……『濃縮・火精石』!? しかも純度100%!?」
「火精石?」
「そうです! これ一個で、一般家庭の暖炉なら3年は燃え続けるという、幻の燃料ですよ!?」
ギルド内がざわつく。
俺にとっては「燃えカス」だが、この世界の住人にとっては「エネルギーの塊」だったらしい。
まあ、あの工場の出力なら、カスですらその程度の熱量は帯びるか。
「へぇ、そうなのか。じゃあ、全部買い取ってくれ」
「ぜ、全部!? こんな量を!?」
ドワーフ娘が慌てて奥からギルドマスター(頑固そうな爺さん)を呼んでくる。
マスターは石を見るなり、「どこで拾った!? 火口の底か!?」と詰め寄ってきたが、俺は「まあ、その辺の散歩中に」と適当に誤魔化した。
結局、俺たちは「ゴミ処理」に来たつもりが、またしても『国家予算規模の換金』を行うことになった。
「まいったな。財布が重すぎて歩きにくい」
「ご主人様、嬉しい悲鳴ですわね」
◇
懐が温まりすぎた俺たちは、街を出て火山の火口付近へピクニックに向かった。
普通なら自殺行為だが、今の俺たちには関係ない。
「よし、ここにするか」
俺が選んだのは、眼下にマグマがドロドロと流れる、断崖絶壁の岩場だ。
地面は熱くて靴底が溶けるレベルだが、俺は第11話で手に入れた『神霊蛇の抜け殻』をレジャーシートとして敷いた。
「わーい! マグマだー!」
「ルビィ、落ちないようにね」
ルビィがキャッキャと走り回る中、ダイヤが優雅にテーブルセットを展開する。
「マスター。本日のランチは、この地熱を利用した『マグマ・バーベキュー』ですわ」
ダイヤが指先から細い熱線を放ち、岩盤の上に置いた厚切りの肉を瞬時に焼き上げる。
外はカリッ、中はジューシー。完璧な焼き加減だ。
「いただきます! ……美味い! 遠赤外線効果か?」
「ええ。それに、この紅茶はマグマの熱で沸かした『ヴォルカ茶葉』です。香ばしさが違いますの」
俺たちは灼熱の地獄絵図を眺めながら、極上のランチを楽しんだ。
通りかかった他の冒険者パーティーが、
「お、おい見ろ! マグマの横で茶を飲んでやがる!」
「正気か!? 死ぬぞ!」
と指差して絶叫していたが、俺たちは優雅に手を振り返してやった。
「いい眺めだ。……そういえば、勇者たちもこの辺りに来るんだったか?」
「分析。彼らの装備と資金力では、このエリアへの到達は不可能です。麓の温泉街で足止めを食らっている確率、98%」
「そうか。まあ、無理せず温泉にでも浸かってればいいさ」
俺は冷えたシャンパン(魔法で冷却済み)をグラスに注ぎ、赤く燃える空に掲げた。
「この火山での収穫に、乾杯」
「乾杯ですわ、ご主人様!」
最強の仲間、最強の装備(ゴルド・改)、最強の技術(熱核錬成)、そして莫大な資金。
全てを手に入れた俺たちは、明日からの旅路――次なる賢者の遺産「森のエルフ」のラボへ向かうことに思いを馳せた。
火山観光、これにて終了。
俺たちは食べ終わったゴミ(骨など)をマグマに投げ込み(一瞬で気化した)、立つ鳥跡を濁さず、颯爽と下山を開始した。
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