第14話 紅蓮の守護神と、溶けない合鍵 ~ドワーフの親父が徹夜で仕上げた最高傑作~
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翌朝。
宿の窓から差し込む日差しは既に強烈だったが、俺たちは快適な室温の中で優雅に目覚めた。
「おはようございます、ご主人様」
「ああ、おはよう。……いい匂いだ」
ルームサービスで運ばれてきたのは、昨日市場で買い込んだ食材を使った特製朝食だ。
メインは、マグマの熱で茹で上げた『極上・温泉卵』を乗せた、炊きたての『黄金小麦』のパン。
サイドには、『サラマンダーの尻尾』をカリカリに焼いたベーコン風ソテー。
「いただきまーす! ん~っ! 卵がトロトロ~!」
「サラマンダーの尻尾……ピリッとした辛味が、寝起きの体に活力を与えます。合理的かつ美味です」
ルビィとサフィが舌鼓を打つ。
俺も温泉卵をパンに絡めて一口。……濃厚だ。マグマの遠赤外線効果なのか、普通のゆで卵とはコクが違う。
精力もついたところで、俺たちは身支度を整え、ガランの工房へと向かった。
◇
工房の扉を開けると、そこには充血した目を見開き、鬼気迫る表情でハンマーを握るガランの姿があった。
「お、来たか……! 待ちくたびれたぞ!」
「おはようガラン。顔色が悪いぞ、寝てないのか?」
「寝てられるか! 50年ぶりに『星核鉄』を打ったんじゃぞ! アドレナリンが出まくってギンギンじゃわい!」
ガランは興奮気味に鼻息を荒げ、作業台の上の布をバッとめくった。
「まずはこれじゃ! 『白蛇の抜け殻』で作った特製インナー、名付けて『水精の薄衣』!」
そこにあったのは、シルクのように薄く、光にかざすと虹色に輝くシャツとドレスだった。
「すげぇ……。こんなに薄いのに、魔力を通すと鉄より硬くなるのか」
「うむ。しかも『熱遮断率100%』じゃ。これを着ていれば、マグマの海を泳いでも火傷ひとつせん!」
早速、アミィたちが着替える(もちろん魔法で瞬時に装着)。
見た目は涼しげなドレスやシャツだが、その周囲には微細な冷気の膜が張られていた。
「素晴らしい着心地ですわ。肌に吸い付くようです」
「体温調整機能、正常。……マスター、これで火山環境における活動制限時間は『無限』になりました」
そして、ガランは恭しく、黒く輝く一本の鍵を差し出した。
「そしてこれが、例の扉を開けるための鍵……『星核の鍵』じゃ」
俺が受け取ると、ズシリと重い。
耐熱温度は驚異の5000度。これなら、あの溶鉄の扉の鍵穴に差し込んでも溶けることはないだろう。
「完璧だ、ガラン。……で、最後のアレはどうなった?」
俺が視線を向けた先。
工房の奥に、巨大な布で覆われたシルエットが鎮座していた。
「ふふふ……。これこそワシの最高傑作。見るがいい!」
ガランが勢いよく布を引き剥がした。
バァァァン!!
「オオオオオッ!!」
そこに立っていたのは、かつての金色のボディとは似ても似つかぬ、深紅に輝く巨体だった。
素材は、俺が昨日市場で買い占めた『オリハルコンの粉塵』を再精製し、『星核鉄』を合金として混ぜ込んだ超・合金。
色は、ルビィの瞳のような鮮烈なクリムゾン・レッド。
頭部には、ドワーフの兜を模した鋭いツノが一本生えている。
「カ、カッコイイ……!」
「シャアアア……ッ(排気音)! システム・オールグリーン! 出力、従来比300%!!」
ゴルドが起動し、その紅蓮の瞳を光らせた。
一歩踏み出すだけで、工房の床がミシリと鳴る。
「名付けて『ゴルド・改』! 耐熱、耐衝撃、耐腐食、すべてが規格外じゃ! マグマダイバー機能も搭載しておいたぞ!」
「素晴らしい……! 我が主よ! この溢れる力、まさに守護神の名に相応しい!」
ゴルドが俺の前に跪く。その装甲からは、熱気すら寄せ付けない圧倒的なオーラが漂っていた。
金メッキのポンコツと呼ばれた過去は、もうどこにもない。
「よし。行くぞゴルド、みんな。この最強装備で、火山のダンジョンを征服してやろう」
◇
俺たちはガランに余った素材(と言っても国宝級だが)を報酬として渡し、意気揚々と火山の火口付近にあるダンジョン入り口へ向かった。
周囲は溶岩が流れ、硫黄の煙が立ち込める地獄のような環境だ。
だが、俺たちは涼しい顔で進む。
『水精の薄衣』と『熱エントロピー操作』のダブル効果で、体感温度は春の高原そのものだ。
「ここだな。最初の難関」
ダンジョンの第一階層を抜けた先に、それはあった。
『溶鉄の扉』。
扉全体が赤熱し、触れるものすべてを溶解させる、冒険者殺しの門番だ。
扉の前には、過去の挑戦者たちが残した溶けた剣や、諦めて帰った痕跡が無数に残っている。
「ふん。熱いだけだな」
俺は『星核の鍵』を取り出し、迷うことなく赤熱する鍵穴へと差し込んだ。
ジュッ……! と音がしたが、鍵はビクともしない。
カチャリ。
重厚な解錠音が響く。
「開いたぞ」
ズズズズ……ッ!
数百年もの間、誰も開けることのできなかった扉が、重々しい音を立てて左右に開いた。
「さあ、お邪魔しようか。この奥に、ドワーフの賢者が遺したラボがあるはずだ」
俺たちが足を踏み入れると、そこには灼熱のマグマを動力源とした、巨大な地下工場が広がっていた。
無数のパイプ、蒸気を上げるピストン、そして自動で稼働するハンマーたち。
「うわぁ……! 工場萌えだねお兄ちゃん!」
「分析。……この施設のエネルギー効率、現代の鍛冶工房の約50倍です」
「ふふ、ここでなら、私たちのお肌(装甲)のケアも捗りそうですわね」
そして、先頭を歩く赤い巨体――ゴルドが、頼もしく叫んだ。
「主ヨ! 敵性反応ハ アリマセン! この紅蓮ノ盾ガ、全テノ障害ヲ排除シマス!!」
俺たちは最強の布陣で、灼熱のラボへと侵入を開始した。
ここにはきっと、新たな技術と、もしかしたら4人目の仲間が眠っているに違いない。
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