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神メンテで最強の美女ゴーレムに溺愛される追放錬金術師 ~俺を見下した勇者パーティーは『金メッキの呪い人形』で勝手に自滅中~  作者: さらん


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第107話 星の産声と、双子の精霊耳 ~神代の全領域(オムニ)ソナー~

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


「さて、お待たせしたな。パール、コーラル。前へおいで」


 俺が優しく手招きすると、部屋の隅で手を持て余しながらソワソワと待機していた小さな双子の少女たちが、パァッと顔を輝かせて駆け寄ってきた。


「はいですぅ! マスター、お待たせしましたぅ!」

「わたくしたちも、お姉ちゃんたちみたいに、ドカンと強くしてくださいですぅ!」


 白と黒の対になるようなゴシック調のドレスを揺らし、二人は俺の目の前でピタリと息を合わせてお辞儀をした。


 第一の隠しラボでサフィの後に見つけ出した、索敵と解析に特化した双子のレーダー手。彼女たちの広域ソナーがあったからこそ、俺たちは複雑なダンジョンの罠を避け、見えない敵の射線を躱し続けることができた。


「お前たちは十分役に立ってるさ。だが、これまでのソナーはあくまで『音波』や『魔力波』といった物理的な反響エコーに頼るものだった。……だから、空間が歪んでいたり、絶対的な防音結界を張られたりすると、途端に精度が落ちるという弱点があった」


 エルフの迷いの森での空間ループや、白フクロウの試練での見えない壁。あれらの異常な空間では、彼女たちのソナーは完全にノイズに飲まれてしまっていた。


「シルヴィ、プリムローズ。二人には『知覚の拡張』と『情報の選別』を頼みたい。……この子たちの耳を、ただ音を拾うだけの機械から、世界の『脈動』そのものを聴き取る精霊の耳へと進化させる」

「世界の脈動、ですか。……なるほど、生命錬金術における【星界共鳴アストラル・レゾナンス】の理論ですね」


 シルヴェリアが群青の瞳を瞬かせ、深く頷いた。


「万物には固有の波長(いのちの音)があります。岩の軋み、風の巡り、星の瞬き。……それらすべてと『調和』し、自己の感覚器官を世界そのものへと拡張する。……素晴らしいアプローチですわ」

「だがクロウ、危険だぞ」


 プリムローズが腕を組み、厳しい表情で警告する。


「世界中の『音』を直接脳へ流し込めば、情報過多で精神が崩壊する。先ほどのサフィの熱暴走と同じだ。……だからこそ、私がエルフの『調和』の術式で、強固な精神防壁フィルターを構築してやろう。必要な音だけを掬い上げ、不要な雑音を川のせせらぎのように受け流す、大自然のフィルターをな」

「頼むぜ。……さあパール、コーラル。少しだけくすぐったいぞ」


 俺は双子の前に膝をつき、二人の小さな手をそれぞれ握りしめた。

 アイテムボックスから取り出したのは、エルフの森の奥深くで採取した『月光のムーン・ドロップ』と、イエティのラボで手に入れた『氷雪竜の魔石』だ。


 冷たく澄み切った魔力触媒を錬金釜へ放り込み、極限まで不純物を取り除いた「純粋な知覚の媒体」を精製していく。


「シルヴィ、生命のリンクを! プリムローズ、調和の旋律を頼む!」

「はい。……星の産声よ、この子たちに安らぎの歌を」

「森羅万象よ、幼き魂を護る揺り籠となれ……!」


 シルヴェリアの白銀の光と、プリムローズの翠緑の魔力が、双子を優しく包み込む。

 俺はその光の中に、錬金釜から取り出した「知覚の媒体」を溶け込ませた。


「繋がれ……! 『錬金極致・感覚再定義センス・リブート』!!」


 俺の魔力が、双子の耳から脳、そして疑似魂魄コアへと浸透していく。


 ルビィやダイヤの時のように、激しい爆発や凄まじい熱量は発生しない。

 マスター・ルームは、まるで深い海の底に沈んだかのように、しんと静まり返った。


 だが、その静寂の中で、双子の身体は内側から淡い真珠色と珊瑚色の光を放ち、少しずつ、しかし劇的にその構造を書き換えていた。


「あぅ……っ、マスター。……頭の中が、キラキラしてますぅ」

「いろんな声が、聞こえますぅ……。お星さまが、歌ってますぅ……」


 双子が目を閉じ、うっとりとした表情で呟く。

 彼女たちの耳の裏側、髪に隠れた部分に、氷雪竜の魔石と月光の雫が結晶化した、美しいエルフのような『半透明の尖り耳(精霊耳)』が形成されていく。

 それは外界の音を拾うのではなく、世界の魔力と生命の波長を直接受信するための「星のアンテナ」だ。


「よし、定着したな。……パール、コーラル。ゆっくり目を開けてみろ」


 俺の声に、双子は長い睫毛を揺らし、ゆっくりと目を開けた。

 その瞳の奥には、まるで銀河のような無数の星屑がキラキラと瞬いていた。


「……マスター。聞こえますぅ」

「はいですぅ。……この壁のずっとずっと向こうで、砂漠の砂が風で擦れる音がしますぅ」


 双子は立ち上がり、何もない空間にそっと手を伸ばした。


「それから……足の下の、ずっと深いところで、赤いドロドロ(マグマ)がゆっくり流れる音も、聞こえますぅ」

「あ……。北の森の奥で、ツノ丸のお友だちの虫さんが、葉っぱをかじってますぅ」

「なっ……!?」


 俺は息を呑んだ。

 砂漠の風? マグマの脈動? 森の虫の音?

 今いるのは、何層にも及ぶ強固な結界と分厚い岩盤に守られた、地下要塞の最深部だ。

 にもかかわらず、彼女たちの耳は、空間と物質の壁を完全に無視して、惑星レベルの事象をピンポイントで「聴き取って」いるのだ。


「完成だ。……名付けて、全領域知覚『星界の共鳴アストラル・レゾナンス』。お前たちはもう、音の反響に頼る必要はない。この星で起きている事象そのものを、直接感知する『世界の耳』になったんだ」

「分析。……信じられません」


 サフィが、自らの生体量子脳をフル稼働させながら、驚愕の声を上げた。


「パール姉さんとコーラル姉さんの知覚データが、私の演算領域に直接リンク(共有)されています。……これは単なる索敵ではありません。周囲半径100キロメートル圏内の、すべての生命反応、魔力流動、物理的構造物の配置が、誤差0.001ミリの精度で3Dマッピングされていきます……! まるで、神の視点オムニサイトです!」


 これまでのソナーは「そこに何かがある」と分かるだけだった。

 だが今の彼女たちは、対象の呼吸、心拍、筋肉の収縮、魔力を練る前の微細な予備動作すらも感知し、それをサフィの超演算を通じて、パーティー全員の脳内へ直接「戦術データ」として共有できるのだ。


「わぁ……! ボクにも見えるよ! アミィお姉ちゃんの心臓がドクドクしてるの、頭の中で分かる!」

「あら本当。これなら、背後からのどんな不意打ちも、完全に『見えて』しまいますわね。ルビィの攻撃の着弾予測も完璧にサポートできそうですわ」


 前衛組が、その反則的な戦術ネットワークの恩恵に戦慄している。


「……マスター。わたくしたち、お役に立てますかぅ?」

「マスターのお目々や、お耳になれますかぅ?」


 パールとコーラルが、新しく生えた半透明の精霊耳をピクピクと動かしながら、不安そうに俺を見上げてくる。

 俺は深くしゃがみ込み、二人の小さな身体をまとめてギュッと抱きしめた。


「ああ、もちろんだ。お前たちがいなきゃ、いくらアミィたちに破壊力があっても宝の持ち腐れだからな。……最高だぞ、お前ら」

「えへへ……! やったぁ! マスターに褒められましたぅ!」

「マスターの心臓の音、とっても優しくて、あったかいですぅ……♡」


 双子は俺の胸にすり寄り、嬉しそうにクスクスと笑い声を上げた。

 これで、前衛・後衛・そして知覚のサポート。

 錬金術師のパーティーを構成するすべての「オートマタ」たちが、神代の生命錬金術の洗礼を受け、完全に新しい次元の生命体へと劇的な進化を遂げたのだ。


「ふふっ。素晴らしい調和ですわ。お父様の遺した知識が、貴方様の手によってこれほどまでに美しく花開くとは……」


 シルヴェリアが、その様子をまるで自分の子どもたちの成長を見守る母親のように、目を細めて見つめている。


「さて……。これで予定していたアップデートは完了、だな」


 俺が立ち上がり、満足げに手をパンッと叩いて宣言しようとした、その時だった。


「……おい」


 背後から、地を這うような、そして明らかに不機嫌さを煮詰めたような、低いドス黒い声が響いた。


 振り向くと、そこには腕を組み、分厚い眼鏡の奥の瞳をギラギラと光らせたエルフの賢者、プリムローズが立っていた。


「私の……『調和』の術式のアップデートは、どうなったのだ? 先ほど、一番最後にやってやると、確かにそう言ったはずだが?」

「あ……」


 しまった。

 完全に終わった気でいた。

 オートマタたちの進化があまりにも劇的で完璧だったため、生身のエルフであるプリムローズの強化というタスクが、俺の脳内からすっぽりと抜け落ちていたのだ。


「あ、いや……忘れてたわけじゃないぞ? ちゃんと今から、極上のメニューを……」

「嘘をつけ!! 今、完全に『これで合宿終了!』という顔をしていただろうが! この私を、ただのバフ掛け要員として使い倒した挙句にポイ捨てする気か、この恩知らずの悪徳錬金術師め!!」


 プリムローズがスレートを放り投げ、本気で怒り狂って俺の白衣の胸ぐらを掴みにかかってくる。


 アミィやサフィたちが「あらあら」「自業自得です」とクスクス笑う中、俺は必死に弁解しながら、このプライドの高いエルフの賢者をどうやって「生命錬金術」で強化するか、脳内で最高速の錬金演算を走らせる羽目になるのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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それでは、次回もどうぞお楽しみに!

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