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「次は花園か。あ、九条さんにソファの上のブランケットをかけておいてあげて」
「はい」
言われて、コタツ布団サイズの白いブランケットをバイオリン姫に掛けた。その間にも、神センは、治療台の上の花園君に何かしている。
ん?
「先生!」
とんでもないものを見ちゃった。なんと神センは花園君のデニムを脱がせていたのだ。
「ぴったりしたタイプの服だから、治療ができないんだよ」
花園君が穿いていたのは、スキニーなタイプ。
「切ればいいじゃないですか」
「戻せない」
「あ、そっか」
「一応、仁科は見るな」
「はい」
さっき、ちらっと見えちゃったんだよね。パンツ。
「こんな貧弱なガキンチョの体見たって、幻滅するだけだ」
あららー。ディスられてるよ、花園君。
「見ませんって。なんか手伝うことはありますか?」
「下心が見え見えだよ。さっきの九条さんの上着をお腹の辺に被せてやって」
「下心とか言うの、やめてください」
バイオリン姫から脱がせた上着を取ってきて、花園君の治療台に行くと、花園君の脚が剥き出しになっていた。意図的にパンツの部分を神センの手が隠してる。
いや、別に見たいわけじゃないですってば。レディですから。
「今、僕の手はリモート操作されている。わざわざ隠しているのは、僕じゃないからね」
私、リモート操作している医者に、どう思われてるんだろ。
見たいとか思ってないからね。だって、水泳の時間や運動会の騎馬戦って同じくらいの露出じゃん。ってか、上半身に上着まで着てるから妙なんだけど。
なんてことを考えていると、神センは英語でいろいろと喋っていた。医者と相談しているみたい。骨折具合としてはバイオリン姫の方が酷かったのに、なぜだろう。
神センはしばらく英語で喋った後、ふうっと一息ついて黙った。
「どうかしたんですか?」
「花園を、完治まで1週間くらいの状態にしたいって提案したんだ。でも仁科の時代では、小さなヒビでも、結局、骨折の治療としては同じで、ギブスで固めて松葉づえになるんだってね。不便だし蒸れて痒いって。だから完全に治すことになった。そうすると、事故のとき、貧血を起こして、あんなに痛がったのが不自然なんだよ。
何かで殴って打撲傷でも適当につけろと言われた。医者は治療しかしたくないそうだ。僕だって打撲傷になるほど殴るなんてできない。暴力はムリ」
「怖くてびっくりしたってことでいいんじゃないですか?」
殴れって言葉の方が私には怖くてびっくり。
「そうするか。1か月近く松葉づえになったら、花園は塾に来なくなりそうだ」
治療が始まった。
バイオリン姫のときよりもずっと簡単。
立体映像でヒビの位置を確認しながら、針を刺して骨の組織を形成する薬を注入していた。最後に針の痕に皮膚を再生させるスプレーをして終了。
その後の方が大変そうだった。足をなるべく動かさずにぴったりしたデニムを穿かせる作業。
手術着を脱ぎ、手術用手袋を取ると、神センは寝室らしきドアの向こうから毛布を持ってきて花園君に掛けた。
「お疲れ様でした」
「仁科もね。お疲れ」




