表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

第6話

男の人が今まで通り剣を大きく振り被ったが、重い音を立てて、何かが地面に落ちた。

剣だと思った。

違う。

腕だった。

剣を握ったままの腕。

男の人は、声も上げずに崩れ落ちる。

血が、広がる。

――動かない。

何かを言ったように見えた瞬間、その身体は、光となって消えた。

「……」

次の人が、前に出る。

振り上げた瞬間――

身体が、ずれる。

上半身と下半身が、噛み合わないまま、崩れる前に、光になる。

消える。

また一人。

また一人。

追いつかない。

何が起きているのか、分からない。

誰も、声を出せなかった。

その悍ましい光景に目が離せなかった。


「おい、ぼさっとするな」

頬に痛みが走った。

矢来さんがわたしを睨んでる。

「一人でやるな!一斉にやれ」

矢来さんの合図でみんなで遠回しに影を囲む。

わたしも加わった。

「行くぞ」

矢来さんの合図で剣を腰だめにして影へと突き刺した。

何の手応えも無い。

――触れていない?

そう思った瞬間、身体が、後ろに弾かれた。

視界が一気に流れる。

気づいた時には、誰もいない家の中に叩き込まれていた。

背中に、鈍い痛みが走る。

息が、詰まる。

息が、うまく出来ない。

吸っているのに、足りない。

近くのテーブルに掴まって何とか立ち上がる。

水筒の水でうがいすると血が混じっていた。

外から、何かが砕ける音がした。

家の外を出ると丁度矢来さんが消えるところだった。

頭から血を流している。

「誰も助からない…」

その言葉が終わる前に、光になって消えた。

わたしは膝をつきそうになった。

「秋桜子ちゃん!駄目!」

「逃げて!」

雪野さんの声だ。

視線が、合わない。

どこを見ればいいのか、分からない。

雪野さんは逃げるように手振りしていた。

影が、雪野さんたちの方へ向かって行く。


逃げろって言われた。

分かってる。

でも――

剣を握り締める。

痛いくらいにしっかりと存在を確かめると息を吸い、影の後ろに走り込んだ。

「わたしは、ここだ!」

影がわたしの方を振り向いたような気がする。


『見えなくても、そこにある』

『そこにあるなら、触れられる』

『触れられた時が、好機だ』

ーー浮かんだ。

影の様子をじっと見る。

いつ攻撃されるのか?

じっと全身に神経を張り巡らせる。

何も起きない。

そう思った瞬間、左肘に、痛みが走った。

――遅い。

盾の隙間を刺された。

こんな狭いところを。

もう一度影を見る。

わたしは左手を前に突き出した。

盾に衝撃が走り、割れた。

そのまま、抜けてくる。

止まらない。

左手首から先が、無くなっていた。

「捕まえた!」

影に倒れかかるように剣を突き出した。

わたしは影に覆い被さってる。

影が、わずかに動きを止めた気がした。


歌が聞こえてくる。

低い声だけど澄んだ気持ちのいい歌声が徐々に大きくなってくる。

…女の人の歌?

歌の主は――

雪野さんだった。

素敵な歌。

「秋桜子ちゃん、急いで離れて!」

慌てて横転して離れる。

歌声がひと際大きくなる。

――静かになる。

直後、轟音が――歌をかき消した。

何かが物凄い勢いで落ちてくる。

人よりも大きい火の玉だった。

大きい火の玉が影を押しつぶそうとした時に銀色の膜が、静かに広がった。

その間、一瞬火の玉が地面に激突した。

その光景が、最後だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ