第5話
石畳を歩くわたしは、集団の真ん中より少し後ろに位置している。
雪野さんは後方の集団にいて、姿は見えない。
周りの男性陣は軽い笑い話をしていて、遠足のような空気だった。
とても、わたしにはそんな気分になれない。
歩きながら、この前の夜のことを思い出す。
あの骸骨の群れ。
押し潰されるような恐怖。
それを思い出すだけで、冷や汗が滲む。
妙に、静かだった。
足音だけが、やけに響く。
窓から、扉から見える部屋の中は、
テーブルがあり、絵があり、
確かに“人の街”だった。
ただ――
人も、他の生き物も、見えない。
……いや。
見えないだけで、
いないとは、思えなかった。
「何もいないな」
「おい、少し周りを確認してこい」
「残りは戻るまで待機だ」
矢来さんの指示で男の人たちが四方の散って行く。
わたしは水筒の水を1口含みながら、あたりを見渡す。
誰もいないはずなのに、視線だけが、どこかに残っている気がした。
雪野さんのいる集団も、いつの間にか足を止めていた。
誰も、何も言わない。
ただ待っているような空気。
その時、甲高い笛の音が、静寂を突き破った。
心臓が跳ねる。
「……!」
一瞬で、空気が変わる。
さっきまでの軽さは、どこにもない。
音は、左斜め前からだった。
「今回は新人やらせる。慣れないと使いものにならんからな」
「他の者はバックアップだ!」
わたしと何人かが引っ張り出される。
ニヤニヤした顔、力強く笑ってる顔。
様々な顔に見送られ、矢来さんのところまで来ると背中を思いっきり叩かれた。
痛みを堪えつつ、前を見る。
――いた。
黒々としたものが、複数。
人、と言われれば人に見えなくもない。
ただ、輪郭が、揺れている。
立っているように見えるがどちらを向いているのか分からない。
顔があるはずなのに、どこにも“表情”がない。
……いや、見えないだけで、こちらを、見ている気がする。
一人の男の人が鉄の板のような剣を振りかぶり、力いっぱい振り下ろした。
グシャ。
何かが潰れるような音がして、
男の人に、真っ赤なものが飛び散る。
これは……血?
錆びついたような生臭い匂いが遅れて届いてきた。
「うおおおおお!」
男は雄叫びを上げると、更に影へと迫る。
影の集団が、逃げるように後退っていく。
逃げてる?
他の人達も釣られて追って行く。
新人とか関係なく我先にと。
……。
何かが、引っかかる。
でも、それが何なのか分からない。
足が、前に出ない。
わたしは動けなかった。
「仕方ねぇな」
「おい、全員でやるぞ!」
矢来さんの合図で、雪野さん達も追って行く。
「秋桜子ちゃん、離れると危ないわよ」
雪野さんが横に来て囁く。
わたしは頷くと漸く前に出た。
なんのとか矢来さんのすぐ後ろまで行くことが出来た。
複数いた影も1体しか残っていなかった。




