断章Ⅱ
会議室には桜野とサロリアだけだった。
サロリアはカップのお茶を口に付けると満足そうに微笑んだ。
「お兄様たちは全軍を森へ動かしました」
「街の方は問題ありません」
桜野が正面のサロリアを見つめる
「本当によいのですか」
「ええ」
「願いを叶えるためには仕方がないですわ」
迷いはない。
「わかった。決して無駄にはしないと約束する」
「ところで――」
わずかに間を置く。
「この街の人々の避難は終わっているかな」
「はい。既に完了しています」
サロリアは嬉しそうに続ける。
「皆さん、とても喜んでいましたわ」
「ヒロキ様が一番最初に、避難してほしいと仰ってくださったことを」
桜野は、何も言わなかった。
扉がノックがされた。
サロリアが一礼して部屋を出て行く。
「入ってくれ」
ノックがあった方へ桜野が声を掛けた。
一拍の後、扉から矢来が現れる。
「矢来さん、準備は出来た」
「隣の街を通って進んでくれ」
「街はもう空ですか」
「その筈だ」
桜野はあっさりと答えた。
「だから――もし何かいればそれは敵ということになるな」
「わかりました」
矢来は迷いなく頷く。
「そうそう」
桜野が軽く付け加える。
「もし敵がいたら、新人の子に任せてほしい」
「早く慣れないと、可哀想だからね」
わずかに笑う。
矢来は何も疑わず、頷き、出て行った。
「さて……」
わずかに視線を落とす。
「みんなの願いは、なんだろうね」




