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第4話

わたしは前と同じ格好をしている。

森の中ではなく、石造りの町中に立っている。

周りには同じような格好した男女と、コートを着た男女が何人も立っている。

「そろそろ始めるぞ」

壇上に男が立った。

「はじめて俺に会う奴もいると思うが、俺は矢来浩平やらいこうへい。矢来と呼んでくれ」

「一応ヒロキ様から俺たちチャンピオンの纏め役を言われている」

「よろしく頼む」

『チャンピオン?』

わたしには馴染みのない言葉だった。

「前回来た奴はあの骸骨どもにいいようにやられたと思う」

「今日は奴らは他のに任せ、俺たちは別に向う」

『骸骨…』

わたしは思い出した。

前に骸骨に襲われたことを。

その瞬間、喉の奥がひりつく。

息が、うまく吸えない。

――あれは、夢じゃなかった。

指先が、わずかに震えた。

「そこの女、大丈夫か」

矢来がわたしを見ている。

「…大丈夫です」

「初めてか、戦うのが」

「はい…」

「そうか。なら俺がしっかり教えてやるよ」

何となく身の危険を感じる。

「だ、だ、大丈夫です」

「生半可じゃ、ここじゃ生きていけんぞ」

矢来が壇上から降りてくる。

後退る。

矢来が向かって来るのに合わせて後退る。

「私が教えてあげるよ。女は女同士って言うじゃない」

大人っぽく、それでいて艶のある声が矢来を止めた。

声の元を振り返る。

コート姿の、美しい女性。

泣き黒子のある、整った顔立ち。

思わず、見惚れる。

「お前には勝てん…」

呟きながら矢来は戻って行った。

張り詰めていた空気が、ふっと緩む。

さっきまでの息苦しさが、

少しだけ楽になる。


「はじめまして。わたしは雪野莉紗。莉紗って呼んで」

「わたしは華鳥秋桜子です」

「秋桜子ちゃん、って呼んでいい?」

「え!?」

「駄目かな…秋桜子ちゃん、って感じなんだけど」

「いえ、大丈夫です」

「本当!?ありがとう」

なんか調子が狂う。

雰囲気がどんどん壊れていく気がする。

「秋桜子ちゃんは武器、何がいい?」

「何がいい?と言われても…」

「使いたい武器とかあればそれを使うのもアリだと思うわ」

そもそも戦いたくなんて無いのだけど。

「わからないです」

「そっか…じゃあイメージしてみて。自分が戦う事を」

わたしは前に骸骨に襲われた時を思い出す。

あの骸骨と戦っている姿を。

イメージの中で戦っているわたしの手には小振りの剣があった。

「見えました」

「よく出来たわね。それをもっと強くイメージして」

わたしはイメージの中で、小振りの剣を握る。

骸骨の攻撃を避ける。

踏み込む。

「秋桜子ちゃんは小剣なのね」

雪野さんが、わたしの手元を見る。

つられて視線を落とす。

――そこにあった。

さっきまで何もなかったはずの手に、小振りの剣と盾が握られている。

「……え」

指に伝わる重さ。

革の感触。

冷たい金属の感触。

思わず、握り直す。

消えない。

「これ……」


「ここはそういうところよ。自分の心にあるものが現れるの」

「だからといって何でも出来る訳じゃないけどね」

「わたしたちはここで戦うのよ。相手はその時によって違うけどね」

「わたしたちはここに呼ばれて戦って――」

一瞬だけ、言葉が途切れる。

「そして…死んでいく」

わたしは、骸骨の波を思い出した。

押し潰されるような恐怖。

逃げ場のない感覚。

「その顔は、もう“知ってる”顔だね」

「……」

言葉が出ない。

「大丈夫よ。死んでも生き返るから」

少しだけ、笑う。

「ただ――」

ほんのわずかに、声が低くなる。

「死んだ時のことは、ちゃんと残る」

「……」

喉の奥が、またひりつく。

あの感覚が、蘇る。

「だから、みんな強くなるの」

優しい声だった。

けれど――

わたしには逃げ場は、なかった。

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