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第9話

萬葉さんに剣の構え方や足捌きを教わっていると、聞き慣れた声が後ろから届く。

「秋桜子ちゃん。この間はありがとうね」

雪野さんだ。

隣に見知らぬ男の人を連れている。

わたしをじっと見つめており、笑みを浮かべている。

「秋桜子ちゃん。身体大丈夫?」

「ええ…」

「桜野さん。この子が華鳥秋桜子さん。前回秋桜子ちゃんがいなければ全員やられたよ」

雪野さんがわたしの腕を取り、男の人の前に連れて行く。

「運命ですね…まさに」

桜野さんが天を仰ぐ。

言葉は小さく聞き取れなかった。

「はじめまして。桜野大輝といいます。皆さんを助けてくれてありがとうございます」

桜野さんが手を差し出す。

「華鳥秋桜子です。わたしこそ皆さんに助けられてばかりです」

わたしは頭を下げて、その手を握った。


「あの時は矢来さんをはじめ、みんな退場してしまい、華鳥さんがいなければ全員退場していたでしょう」

「それはこの国の人達に苦しみが続いてしまうことになります」

「全員が貴女に感謝しているに違いありません」

桜野さんの言葉が止まらない。

だんだん聞いてるのが辛くなってきた。

「わたしは何故ここにいるのか…そして何処から来ているのかわからないのですが」

「僕たちはこの国の人々を守るために来ています」

「謂わば正義の味方です」

「僕たちはこの国を襲っている敵から守るために集まってます」

「ここに来るのは選ばれた人のみで、その絆は運命ですね」

桜野さんは、手を離さなかった。

その視線も、わたしから外れない。


「おう。桜野さん」

今まで黙っていた萬葉さんが声を発した。

「いい加減、華鳥を解放してくれないか」

「彼女には教えてる途中なんでな」

萬葉さんが、桜野さんの腕を掴んだ。

桜野さんは萬葉さんを見ない。

「萬葉さん。邪魔しないでくれますか…」

「わたしは秋桜子さんに感謝してるんですよ!」

桜野さんに握られた手が痛くなってきた。

「桜野さん。相手に受け入れ切れない感謝は時に迷惑にも感じる」

「一旦…落ち着いたらどうだろうか」

萬葉さんの目が細くなった。

「桜野さん。わたし…生き残りたいんです。だから強くならないと…」

「……遠慮しなくていい」

桜野さんが、わずかに言葉を切る。

「秋桜子さんは、僕が守るから」

やはり桜野さんの視線が外れない。

わたしは雪野さんを見る。

雪野さんが小さく溜息をついた。

「桜野さん。秋桜子ちゃんが困ってるよ」

「秋桜子ちゃんは純粋だからあまり言ってると辛く感じちゃうよ」

「桜野さんは秋桜子ちゃんを大事にしてあげないと」

「そうだな」

桜野さんが小さく頷く。

「僕が守るんだから」

桜野さんの手が離れた瞬間、雪野さんの背に隠れた。

手の痛みだけが、しばらく残っていた。

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