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第8話

今日もこの街にいる。

わたしはどこからここに来るのだろう。

この間雪野さんは大丈夫だったのだろうか。

「あんたが華鳥さんかい」

声を掛けられた。

「そうですけど…」

見覚えのない男の人だった。

「あんたがいなければ俺の相方がやられてたよありがとう」

男の人が頭を下げる。

「いえいえ。よかったです」

わたしには彼の相方を助けた覚えは無いな、と思いつつ返した。

そう返すしかなかった。


去っている男の人を見ていると、突然肩を叩かれた。

明らかに歳上の男の人だ。

背中に剣を背負っている。

「あんたが華鳥さんか」

低い響く声だった。

「…そうですが」

男の人が見透かすかのような鋭い視線を送ってくる。

「そうかい。俺は萬葉光彬という」

「あなたが戦ったことであの男の知り合いは助かった、そういうことだ」

「聞きたいのだが、いいか」

「わたしに答えられることであれば」

「そうかい。ありがとう」

萬葉さんが笑った。

安心させるような笑顔だ。

が、それから一転して厳しい顔つきになる。

「華鳥はどのようにして影に勝った?」

「恐ろしく強い影に全員やられそうになった…そう聞いたが」

あの時の恐怖が戻ってきた。

左手を失った時の熱さ。

刺した時の嫌悪感。

少しずつ思い出してきた。

「言葉が…頭に浮かんだんです」

「言葉?…どんな?」

「『見えなくても、そこにある』」

「『そこにあるなら、触れられる』」

「おお!それはまさに境地」

「見えないものは、分からない」

「だが存在する」

「なら戦いようはある」

萬葉さんは、納得したように頷いた。

「で、どのように触れた?」

「こうやって受け止めて…刺しました…」

わたしは左手を前にした後、右手を前に出す。

「まさか…左手で受け止めて…奴の身体を見つけたのか!?」

萬葉さんが驚いた後何やら呟いているが、わたしには聞こえない。

「ただの若い子が出来ることではないぞ」

「いや…何も知らない故か…」

「なら…」

意を決したようにわたしを見る。

その目は鋭く有無を言わさぬ迫力がある。

「華鳥よ……お前さん、生き残りたいか」

わたしは無言で頷いた。

「覚悟を見せよ!」

萬葉さんに恫喝された。

「生き残りたいです!」

「それでよい…声は気合じゃ」


萬葉さんと、向かい合う。

「まずは俺に打ち込んでみてくれ」

わたしは踏み込もうとするが足が出なかった。

ただ剣を持って立っているように見えるが、隣にいた時に感じた何倍も大きく感じる。

姿は見えている。

だが――あの影よりも、恐ろしい。

「どうした?」

「怖いか?」

いつの間にか吹いていた汗を拭った。

「見える方が恐ろしいのだ」

「見えないのが恐ろしいと思うのは当然だ…どんな姿かもわからない。何を考えてるかもわからないからな」

「だが…それだけだ」

「見えるからこそ、その姿に引き摺られる」

「それでは生き残れないぞ!」

わたしは左側に打ち込んだ。

萬葉さんの剣で軽く薙ぎ払われる。

まるで攻撃が初めからわかっていたかのように。

そのまま喉元に剣を突きつけられた。

「引き摺られるのがわかったか?」

萬葉さんの言ってる意味がわからなかった。

「お前さんは俺が右手に剣を持っているから左に打ち込んだのだろう?」

なんで…わかるの?

「はい…」

「だから引き摺られたと言ったのだ」

「右に剣を持てば、左の対応は遅くなる」

「そこを狙ったな」

わたしは頷いた。

「だが、それがわかってれば対応も容易い」

わたしは萬葉さんに打たされたのだ。

「それに剣に力が無い…人に斬りつけることも出来ないのだろう」

「だから力が無い」

「総じて覚悟がまるで足りん」

「見ろ」

「そして…読め」

萬葉さんの声が落ちる。

「生き残りたいのだろう」

わたしは、頷いた。


わたしはもう一度剣を握り、向かい合った。

両手でしっかり持つ。

萬葉さんをしっかり見る。

けど見惚れない。

同じように右手で剣を持って立っている。

視線は真っ直ぐわたしを見ている。

目には、何も浮かんでいない。

わたしには感じられない…読めない。

ならば…。

「やあ!」

いっぱいの声をあげ、萬葉さんへと踏み込む。

剣が届くか届かないかまで接近すると左手の盾を投げ放った。

「む?」

はじめて萬葉さんが驚きの声をあげた。

「目眩ましか…だが」

萬葉さんが左に意識するのがわかった。

「捕まえた」

右手で持っていた剣を素早く左手に持ち替え、斬り上げる。

萬葉さんが後ろに下がる。

わたしは走り寄って両手で振り下ろした。

衝撃。

握っていたはずの剣が、消えた。

「見事!……釣られたわ」

萬葉さんが、楽しげに息を漏らした。


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