乙巳の変 その4 揺歌の紹介
日本書紀では、皇極天皇紀で多くの謡歌を引用しています。謡歌とは、古代において政治や社会を風刺、または予言したとされるはやり歌のことです。日本書紀では、それぞれの揺歌に解釈をしているのですが、私にはどうもしっくりきませんので、これを紹介します。皆様は、これらをどのように解釈しますでしょうか?
まずは最初の歌――
伊波能杯儞 古佐屢渠梅野倶 渠梅多儞母 多礙底騰裒囉栖 歌麻之々能烏膩
イハノへニ コサルコメヤク コメダニモ タゲテトホラセ カマシシノヲヂ
「岩の上で小猿が米を焼いてます 山羊のおじいさん、米だけでも食べに来なさい」という意味。
これは、蘇我入鹿が山背大兄王を襲う前に紹介されています。
次は――
武舸都烏爾 陀底屢制囉我 儞古泥舉曾 倭我底烏騰羅毎 拕我佐基泥 佐基泥曾母野 倭我底騰羅須謀野
ムカツヲニ タテルセラガ ニコデコソ ワガテヲトラメ タガサキテ サキテゾモヤ ワガテトラスモヤ
「向うの山に立っている人の柔らかい手ならば私の手を取っていいけれど、ひどくひび割れした手で、どうして私の手を取れるのでしょうか」という意味。
これは、蘇我入鹿が中大兄皇子に暗殺される前の部分で紹介されていますが、日本書紀はこれを蘇我入鹿が山背大兄王を襲う前兆だったと解しています。
続けて、日本書紀は3首の揺歌を紹介しています。
最初は――
波魯波魯儞 渠騰曾枳舉喩屢 之麻能野父播羅
ハロバロニ コトゾキコユル シマノヤブハラ
「島の薮原で、かすかに話し声が聞こえてくる」という意味。
次は――
烏智可拕能 阿娑努能枳々始 騰余謀作儒 倭例播禰始柯騰 比騰曾騰余謀須
ヲチカタノ アサヌノキギシ 卜ヨモサズ ワレハネシカド ヒトゾトヨモス
「遠くの浅野の雉が声を立てて鳴いている。私は熟睡していたのに人が騒ぎ立てる」という意味。
最後は――
烏麼野始儞 倭例烏比岐例底 制始比騰能 於謀提母始羅孺 伊弊母始羅孺母
ヲバヤシニ ワレヲヒキイレテ セシヒトノ オモテモシラズ イへモシラズモ
「林の中に私を誘いこんで犯した人の顔も家も知らない」という意味。
ここで紹介した揺歌について皆さまはどのように解釈されますでしょうか? 面白い解釈があったら、是非とも感想などでコメントください!!




