ウサギはカマキリよりも速くて強い
「可愛いと強いは両立する」
星宮星雅
――時を少し戻して数分前
ギィンギィンと加速し続けるチバとマンティスライサの刃が何度もぶつかり合っていた。
既にそのスピードは常人の目では捉えきれない領域に達しており、黄金族や自警団の兵たちはその姿を見ることが出来ず、刃同士がぶつかり合う音や戦いの巻き添えで切り裂かれた地面等からしか、その凄まじい戦闘の形跡を辿ることが出来なかった。
「ローラーソー!!」
「兎跳び突き!!」
身体を折りたたんでクルクルと車輪のように回転しながら鎌の刃で切り裂きにかかるマンティスライサを、チバが身体ごと飛び出す素早い突きで迎撃し、マンティスライサは技を中断して身体を後ろに捻ることで突きを躱して着地する。
「右早斬り(うさ斬り)!!」
「鎌安芸!!」
今度はチバが右に向かって刀振るうが、マンティスライサはそれを鎌で器用にカチ上げた。
マンティスライサはもう片方の鎌で反撃を狙うが、素早く察知したチバはバックステップで距離を取った。
「驚いたなぁ。油断していたつもりは無ぇが、サシで俺と互角に斬り合えるヤツが居るとは・・・」
「こっちの台詞よ!!大将の記念すべき初デートの日にこんなヤツが来るなんて・・・もしかして、私呪われてる?お祓い行った方いい?」
「安心しなぁ、スグに幽霊どものところに行かせてやるからよぉ!!」
お互いに減らず口を叩き合いながら、チバとマンティスライサは何度も何度も刃をぶつけ合う。
チバが押され始めたかと思えば、マンティスライサが押され始め・・・攻撃と防御または回避が何度も何度も入れ替わる。状況か完全に膠着状態にあった。
ドスリッ!膠着状態を破ったのは、そんな鈍い音だった。
恐らく2本の鎌に意識を集中しすぎたのだろう。マンティスライサの靴先から突き出た小さな槍が、チバの美しい脚を貫いており、タラリと鮮血が流れ出ていた。
「ランスパイク」
「・・・ッ!兎跳び斬り(うさぎとびきり)!!」
チバが刀と上に振り上げると、マンティスライサは後ろに跳んた。
マンティスライサとの距離が空いたことで靴の槍は抜けたが、チバの脚が負ったダメージは消えていない。
瞬発力が自慢のスピードタイプ剣士であるチバにとって脚は命のようなもの。
互角の勝負から一転、兎の少女は窮地に立たされた。
(やっば、これ負けたかも・・・)
脚を貫かれながらもチバはニヤリと不敵な笑みを崩さなかったが、内心では大分焦っていた。
チバは足元への警戒を怠っていたさっきまでの自分を殴り飛ばしたい気分なのを抑えつけ、表面上は「ん?今、何かした?弱すぎて気がつかなかったわ!」とでも言いたげな余裕の表情を創って見せた。
それは、チバの隊長としての矜持の成せる技だった。
「ずいぶん、痩せ我慢の強い女だ。だが、傷は深いだろう!」
鎌を振り上げ向かってくるマンティスライサに応戦する為、チバは地面を踏みしめる。
(・・・痛ったいわね!!)
風穴の空いた脚が悲鳴を上げ、チバは思わず片目を瞑ってしまう。
「羅津鬼威復土!!」
まるで風穴1つぐらい何でも無いとでも言うように、チバは態と貫かれた方の脚で蹴りを放つ。
そのことに驚いて、一瞬怯んでしまったマンティスライサの腹部に靴が突き刺さった。
「ぐぅっ・・・!!この女ぁ!!」
チバの蹴りに押され、数歩後退ったマンティスライサは怒りを露にして鎌を振るい上げる。
チバも刀を構えて、迎え撃とうとしたその時だった。
『・・・こちらP2、チバ、戦況はどうだ?大丈夫か?』
通信機が電波を受け取り、P2の声がチバに届いたのは。
「大将!!すまねぇ、こっちはちょっとキツい!!1人厄介なカマキリが居てね!」
「通信とは余裕だなぁ!!今度は縦に風穴を開けてやろうかぁ!?」
チバは通信に意識をさきながらも、咄嗟にマンティスライサの鎌を刀で弾いた。
動く度に脚の傷がズキズキと疼く。痛みだけなら耐えられるが、何時まで脚が言うことを聞いてくれるかどうか・・・・・・チバは戦々恐々としていた。
『そうか、私たちは今其方に向かっているところだが・・・街の中にまで黄金俗画は入ってきていてな、そいつらを蹴散らしてからになりそうだ。』
「ちっ!何時の間にそんなトコまで・・・分かった!じゃあ、こっちはこっちで踏ん張ってみるよ!」
『ああ、頼んだ。カマキリよりも速くて強いウサギの力を見せてやってくれ』
「了解!」
(カマキリよりも速くて強いか・・・・・・1度は黄金族相手に逃げ帰った私を大将は信じてるんだね。)
チャキッ!チバは刀を握り直した。
あんな簡単な言葉で、今の自分でもマンティスライサに勝てそうな気がするから不思議だった。
(へへっ、どうやら私も相当大将にやられちゃってるらしい。お嫁ちゃんのこと笑えないね。)
チバはニヤリと笑うと、目の前のカマキリに勝つため・・・刀を鞘に収めた。
「一跳び音越え・抜刀居合――」
「ほう?音越えとは大きく出たな?じゃ、テメェを音ごと引き裂いて仕舞だァ!!」
腰を低く落とし、目を瞑って、刀を鞘に収め、居合抜きの態勢に入ったチバに向かって、マンティスライサの凶刃が危険な輝きを放つ。チバは身体を前に倒し、突撃の態勢を取る。
ゴクリッとツバを飲み込んだのは、いった何処の誰だろうか?
「ギロチン!」
「刃仁威我亞流!!」
ボロボロと武器だった金属片が地に落ちてゆき、切り裂かれた戦士の身体から噴水の如く血が噴き出す。
首を目がけて振るわれた2本の死神の鎌は、ウサギの少女の抜刀術によって斬り砕かれた。
「悪いね。でも、これで分かっただろ?・・・ウサギは可愛くて強いのよ!!」
――白虎門街・白虎門前 チバVSマンティスライサ 勝者・・・・チバ




