勝利報告
「物事が終る時は、案外あっけないものだ。」
星宮星雅
一方その頃、P2とサンビタリアはといえば黄金族の雑兵たちに囲まれていた。
お互いに必要なことだったとはいえ、この非常時に街中で突っ立って話をしていたりしたら出遅れるのは当然のこと。戦うにしろ、逃げるにしろ、もっと速く行動を起こすべきだった。
「サンビタリア嬢、近くにいてくれ。」
「ぴぃつぅ様・・・・」
サンビタリアがP2の袖をギュッと掴んで身体を寄せると、P2はそれに答えるように拳を握った。
「げっへっへっへぇ!かっこつけも大概にしねぇと痛い目見るぜぇ?兄ちゃん」
黄金族の1人がズイッと前に出て、下卑た笑い声を上げた。
その手にはギラリと光に輝くサーベルが1本握られており、その刃がP2へと向けられていた。
「女と身包み丸ごと置いていって貰おうかぁ!!」
サーベルを振り上げ、P2へと襲いかかる黄金族の凶刃。サンビタリアは思わず目を瞑ってしまう。
ドゴォン!!だが、聞こえてきたのは肉が切り裂かれるものとは違う、大砲が放たれたような轟音が耳を襲っい、サンビタリアは思わず、耳を塞いでしまう。
「ぴぃつぅ様・・・?」
サンビタリアが恐る恐目を開くと、そこには右腕を真っ直ぐ伸ばし拳を振るったP2。そして頬が拳の形に抉れ、吹き飛ばされて遠くの地面で死骸のように転がっている黄金族の姿だった。
「それで、1つ聞きたいのだが・・・まだ私と戦うつもりはあるか?」
P2はそれはそれは晴れやかな笑顔を浮かべていたが、黄金族たちにとっては悪魔の笑みに見えただろう。
「くそっ!初戦1人だ、囲んで畳んじまえ!!」
「女だ!女を狙え!あの女は戦闘要員じゃねぇ!」
口々に怒号ぼ叫びを上げながら、黄金族はP2たちへと一斉に襲い掛かる。
P2が咄嗟にサンビタリアを庇いながら拳を構え戦闘に備えていると、黄金族たちの向こう側、奥の方から此方へ向かってくる人影が見えた。
「お嬢様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――っっっ!!」
「ガーネットっ!!どうしてここに居るのですか!?」
ゴンッ!!と黄金族の後頭部を跳んで蹴り飛ばし、そのまま黄金族の身体を足場にしてやって来たのはサンビタリア唯一にして最高の従者ガーネットだった。
彼女も本来は戦闘要員では無い筈だが、主のために黄金族の包囲網の中へ態々突っ込んできたらしい。
「お嬢様、お怪我はありませんか!?」
「え、ええ、ぴぃつぅ様が守っていて下さったので・・・」
「なるほど、流石は旦那様です。ですが、旦那様でもこれだけの数を相手に人1人を守り続けながら戦うのは難しいでしょう。」
「そうですね・・・足手まといになってしまって申し訳が・・・・ん?ガーネット、今ぴぃつぅ様のことを旦那様と・・・」
「しかし!私が来たからにはもう安心です!!密かに習っていたクン・フーの技をもってお嬢様を御守り致します!!」
「そ、そう・・・ありがとう。(触れない方がいいのかしら?)」
いきなりのことで困惑を隠しきれないサンビタリアを他所に、「ヒョーォ」と奇妙な声を上げながら意外に堂に入った構えをとるガーネット。これが話に聞くクン・フーの構えらしい。
「な、なんだか分からんが2人が3人になっただけだ!一緒にやっちまえ!」
1人の黄金族がいち早く冷静さを取り戻し、その手に握るライフル銃を構える。
しかし今度は後ろからフライパンが回転しながら飛来してきて、黄金族の頭をゴンッ!と鈍い音を立てて殴りつけた。
「まったく!1人で突っ走られては困りますわ!!」
フライパンを投げたのは、「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」と息を切らしたサファイアだった。
「四人目だと!?一体何がどうなってやがる!!」
P2たちを囲んでいた黄金族のリーダー格が憤慨のままに怒号を上げる。
楽な仕事の筈だった。思ったよりは立派だったが、所詮は地図にも載っていないような隠れ里。
大規模な襲撃など想定もしていないような街を軽く蹂躙して、何時ものように略奪を楽しむ筈だったのだ。それが蓋を開けてみればどうだ?やたら強固な外壁と門、バカみたいに強い女が仲間を紙切れみたいに切り裂き回って、それを潜り抜けて街に入ったと思ったら、たった2人相手に手間取ってしかも増援まで来やがった。黄金族にとっては悪夢以外の何ものでもなかった。
『やったよ大将!こっちはカマキリぶっ倒してやった!連中は総崩れ!私たちの勝ちだ!』
そんな時だった、P2の耳にチバからの勝利報告が届いたのは。




