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家族の在り方 

「愛、私はそれを信じたいのだ」

            星宮星雅

 (右から斜め上への振り上げ、左から振り下ろしからの振り上げ、と同時に右から斜め下へ振り下ろし。ちっ、右と左でまるで鎌が違う動き・・・・・・厄介ったら無いわね。こいつ、脳みそが2つあるっていうの!?)

チバは想定以上の苦戦に内心舌打ちをした。

マンティスライサの2本の鎌はまるでそれぞれ違う人間が振っているかのように変則的で、それでいて一撃一撃の太刀筋は真っ直ぐで鋭く、一振りごとに速く重くなっていく。まるで、名のある剣豪を2人同時に相手取っているようだ。

だが、チバにも負けられない理由があった。

現状、チバは白虎門街側の大将であり彼女が敗れれば士気はガタ落ちして敗戦は必須、そうすれば白虎門街は黄金族に荒らし回られ、街は壊れ、多くの人が傷つき苦しみ死んでしまう。

(街は・・・大将たちみんなと一緒に作った白虎門街はやらせない!!)

「マンティスライサ様に加勢しろ!!」

「あたぼうよ!あの女を討ち取れぇ!!」

その上、敵はマンティスライサだけでは無い。黄金族たちが武器を手にチバへと襲いかかる。

だが、敵が1人で無いのはマンティスライサの方も同じである。


 『配置完了、いつでも支援射撃開始できます。』

チバの耳へ通信機越しにノイズ混じりの吉報が届いた。

それと同時に、チバへと向けって来ていた黄金族たちを分厚い鼠色の塊が吹き飛ばす。

「支援要請が完了した。10分耐えろとのことだ。」

本部への支援要請を終えたマルチが、巨大な金属レンチのような武器を片手に担いで現れた。

集まった隊員たちの声に自然とチバの表情から笑みがこぼれた。

「まったく、頼もしいヤツらだこと・・・よっし、さっさと終らせて大将のデート見物の続きといこうか!」

「いや、もうストーカーはよした方が・・・」

「お黙り!護衛だよ護衛!現に・・・カマキリがイナゴ引き連れてやってきただろ?」

「口の減らない女だ。いいだろう、テメェのいう大将も含めて・・・全員細切れといこう!!」

もう1度、ギィンッと激しい音を立てて刀と鎌がぶつかり合った。

だが、今度はさっきとは訳が違う。

もう、相手が何カマキリだったとしてもチバは負ける気がしなかった。


 

 一方、サンビタリアは生きた心地がしなかった。

というのも、P2の過去を聞き、その上で自分の思いを伝えたのはいいものの、P2からの返事をまだ貰えていないからだ。

バクバクと亡骸島に来た時以上に心臓が喧しく跳ね回る。早く返事が欲しいのだが、聞きたくないような気持ちもある。サンビタリアの頭の中はもうぐちゃぐちゃで碌に働いていなかった。

「・・・サンビタリア嬢、その、気持ちは嬉しいのだが・・・・・・」

頭を軽く掻きながら考えを纏めていたP2が口を開き、そう切り出し始めたのを聞いた時、サンビタリアは己の身体が凍りついたかのような錯覚を覚えた。

冬でも無ければ、風が強い訳でも、水や氷に触れた訳でも無い。なのにどうしてだろう?サンビタリアは身も心も冷たくて寒くて、凍えて息まで凍ってしまいそうだった。

(・・・やっぱり、そうですよね。私のような荷物が居たって仕方がありません。それに元とはいえ、私はぴぃつぅ様たちを苦しめたベルギャルド卿と同じ貴族なんです。そんな私にぴぃつぅ様の隣に居る資格なんて・・・・・・・・・)

仕方が無い。仕方が無いのだ。心の中で何度も繰り返して、サンビタリアは自分を納得さようとした。

だが、どうしてだろう?寒さがちっとも治まらないどころか、ますます身体が冷たくなっていくように感じるのだ。サンビタリアは自分を暖めようと、必死に自分の二の腕を掴む。あんまりに力を入れ過ぎてしまったので、少し爪が食い込んで血が滲んだ。

「サンビタリア嬢、血が出ている。早く消毒と治療を・・・」

「・・・いえ、いいんです。先に、避難地へ向かっていますね。」

携帯式の簡易救急キットを急いで取り出そうとするP2を、全然力を感じさせない老人のように弱々しく制止する。そしてサンビタリアは、これ以上P2の負担になるものかと重苦しい足を足を必死に動かし、避難地へと歩みを進めた。筈だった。

「まて、話はまだだ。」

その歩みを止めたのは、ずっとサンビタリアを避難地へ行かせようとしていたP2であった。


 P2はパシッとサンビタリアの手首を掴むと、器用に引っ張ってサンビタリアの身体を回し、また自分へと向き直らせた。

P2が自分の方へと引っ張ると、サンビタリアはポタポタと涙を流していた。

P2は何も言わずそっと目を閉じて、ポケットから黒いハンカチを出して、押しつけるようにしてサンビタリアへ渡した。

「あ、ありがとうございます。・・・まだ、私に何か?」

「ああ、伝えなければならないことがまだある。」

「・・・避難地の場所なら存じています。どうか、心配鳴らさず。」

「そういうことじゃない。私は・・・サンビタリアの心を嬉しく思う。だが、サンビタリアの言葉は少し的が外れていた。」

「的が外れていた・・・ですか?」

黒いハンカチをグシグシと目元に押しつけながら、サンビタリアはキョトンと首を傾げた。

一体何を言われるのかと戦々恐々としたところに予想外の指摘をされて、虚を突かれてしまった。

「ああ、私は社員と社長という上下関係こそあるものの、カッタッパにモリアーティ、チバやレコメンド、サファイアと115。みんなみんな家族だと思っているし、隣に誰も居ないなんて思っていない。」

「それは・・・」

確かに、過去の話でもP2は家族の笑える島を作ると言っていた。

そんなP2に家族が居ないのは考えてみるとおかしい話だ。だが、サンビタリアは厳しい階級社会の中で生きてきた少女であるが故に、部下が家族というP2の考え方に行き着くことが出来なかった。

サンビタリアの中では上の立場の人間と下の立場の人間が仕事以外で交わることは有り得なかったのだ。

(・・・ガーネットが私についてきてくれたのも、家族だと思ってくれていたからなのでしょうか?)

サンビタリアは身近な実例になり得るかも知れない従者を思い描く。

ガーネットは主人と従者だからと一言で片付けるには余りにも献身的で、もしかすると、彼女にとってのサンビタリアも単なる主人ではなく、P2のいう家族なのかも知れない。

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