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誓いの日

「薬というのは毒にもなる」

          星宮星雅

 義景がベルギャルドを踏み潰していた頃、少年と男の子は安全のために離れた場所に寝かせた2人の側に座り込み、襤褸切れのような自分たちの服をちぎって応急処置を施していたが、ベルギャルドの信じられない言葉に目を見開き口を薄らと開けて愕然とした表情になっていた。

「くすりがない?なんだよ、それ・・・」

少年は友を・・・仲間を助けるために命を張ってベルギャルドのところまでやってきた。

男の子は助けを信じ、仲間と2人で生きて帰るために必死になって走っていた。

一緒に帰るべき仲間の1人は既に死にかけ、助けにやって来たクロッセルも血を吐いて顔色が段々悪くなっていってる。なのに、2人を助けるための薬が無い。

薬以外を頼ろうにも流刑地のこんな島に療設備など整っている筈も無く、医者の心当たりも無い。

目の前で大切な仲間が仲間が苦しんでいるのに、死に向かっているのに、少年には何も出来ないのだ。

少し時間が経ち、そのことを理解し始めると、2人の目からはボロボロと大粒の雫が流れ出した。

少年は無意識に右胸を押さえた。今まで感じたことが無いくらい胸の奥がズキズキと痛み出して、まるで鋭い刃物が突き刺さっているかのような錯覚に覚える、胸を幾ら探ってもそれらしい刃物に触れることは無かった。


 「まぁ・・・しょうが・・・ないよね。かくごは・・・してたから」

「イバラギ、しゃべるな!だいじょうぶだ、キラはすごいから、きっと・・・」

「でも、いしゃじゃ・・・ない」

「それは・・・っ!!」

少年は反論したかった。大丈夫だと、イバラギとクロッセルを安心させてやりたかった。

だけど、幾ら考えても2人を安心させてあげられる言葉が見つからず、それでも2人が死ぬことを考えると右胸の奥がもっと苦しくって、とても受け入れることが出来ない。だから、何度も何度も2人を安心させられる言葉を探すのだが、結局、見つからなくって口をモゴモゴさせることか出来ない。泣くことしか出来ない。

もう少年と男の子の顔は涙と鼻水で見る影も無いほどにボロボロのぐしゃぐしゃであった。

「そんなかお・・・しないでよ・・・ふたりは・・・たすかったんだから・・・」

クロッセルは腕をふらふらと頼りなく揺らしながら、少年と男の子の頬にそっと触れる。

たった2年とはいえ、母親であった経験がなせる技か?

2人の頬に触れるクロッセルは苦しみながら死に向かっているというのに、とても優しく、柔らかく、そして穏やかで、まるで慈愛の女神や救いの手を差し出す聖女のような美しい微笑みを浮かべていた。


 「おれはたすかったけど・・・イバラギとクロッセルが・・・っ!!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!おれが、いきたいなんていったから・・・あしひっぱったから・・・っ!!」

少年と男の子が次々と口にする苦しみの嗚咽の言葉を、クロッセルは頬に当てていた手を口に持って行くことで静かに止める。隣で寝ているイバラギは安心したように少し笑った。

「いいのよ・・・わたしは・・・おや・・・だもの。レコメンドに・・・むねはれる・・・おんなじゃ・・・ないと・・・」

「わたしも・・・こうかいは・・・して・・・ないわ。だって・・・ちばの・・・みんなの・・・おねえちゃん・・・だもの」

「それ・・・いいわね・・・わたしも・・・みんなの・・・・・・・・まま・・・に・・・」

途切れ途切れの言葉をそこまで続けると、クロッセルは「げほっ!ごほっ!」と吐血し始めた。

少年と男の子は益々たくさんの涙を流し、顔に滝のような水のラインを作って寝かせた2人に寄り添う。

胸の奥で感じるズキズキとした痛みは収まるどころか悪化の一途を辿り激痛が走るが、最早、少年たちにはそんなことを気にする余裕すら無い。

しかし、皮肉なことにその痛みこそが、少年たちに家族であるということがどういうことかを教えていた。喪失を苦しみを持って、初めて2人は本当の意味で家族を知ったのた。

「ねぇちゃん・・・イバラギお姉ちゃん!」

何かを決意したように、歯を食いしばって男の子が叫んだ。

少年はそんな男の子の姿を見ると、悲鳴を上げる心を無理矢理頬を引き上げ、歯を出して笑って見せた。

「安心してくれよ、俺が・・・俺たちがチバちゃんが笑って暮らせる亡骸島を作る。」

「いや、チバだけじゃねぇ。おれたちなかまの・・・かぞくのみんなが、わらえるなきがらじまをつくる!」

「ああそうさ、名無しの言う通りだ!チバちゃんもレコメンドちゃんも家族なんだ!俺たちは絶対見捨てねぇ!約束する!」

「ああ、やくそくだ!おれたち・・・5にんで!」

そう言うと少年はクロッセルとイバラギの手を取って、無理矢理指切りの形を作ると、自分も指切りの形を作って小指同士を絡ませた。そこに男の子の小さな指と、義景の大きな指も加わる。

「おれは・・・いつか、しゃちょうになる!せかい1のデカいかいしゃをつくって!それで・・・いつか、かならず、なきがらじまをかってやる!おれたちかぞくのりそうのシマにつくりかえてやる!」

「だったら、俺はコイツを側で支える!コイツが立派な大社長になれるように、俺が地図になる!」

「だったら、この童2人が立派に成長するまでは儂は親代わりとなって育てよう。」

「「「だから、チバとレコメンドは・・・残った家族は俺たちに任せろ!」」」

こうして、最初の5人の原初の約束が成されたのだった。


 暫くして、クロッセルとイバラギは安心したように穏やかに笑って逝った。

少年たちは木を十字に組んで十字に縛った簡素な墓の前で目をつぶって手を合わせ、それが終ると少年は一歩踏み出して墓に近づき、家族たちへ向かって高らかに宣言した。

「おれ、くすりのかいしゃをつくるよ。たとえ、そこに、いしゃがいなくても、くすりがあればすくえる・いのちが・・・まだ、たくさんあるはずだから!」

少年を決意を聞いて、義景は少年の頭を乱雑に・・・そして優しく撫でた。

「童・・・ずっと保留にしてた名前の件だが、薬屋をやるのならP2というのはどうだ?公用語でポーションとポイズン・・・・・・薬と毒という意味だ。」

「くすりと・・・どく?」

「ああ、薬というのは使い方1つで毒にもなるし、毒もまた使い方1つで薬になる。P2、お主は家族や患者を癒やす薬になれ、そして、ベルギャルドのような命を踏みにじる輩を倒す毒になるんだ。」

「くすりとどく・・・P2・・・うん、わかった!おれ、さいこうのくすりとさいあくのどくになる!」

人物情報記録 P2 (第一項)

性別:男     年齢:23歳

体重:80kg  身長:175cm

種族:ノービス  所属:赤目製薬代表取締役 赤目製薬薬剤研究・開発部主任


 亡骸島で育った青年。今や世界有数の大企業となった赤目製薬の代表取締役(つまり社長)

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