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ぶつかり合い

「私たちが生きるのは大抵誰かの為だ」

               星宮星雅

 白虎門街の郊外、荒れ果てた亡骸島に黄金色の布を頭や腕に巻いた集団があった。

カチャカチャとそれぞれの武器や防具がぶつかり合って音を奏で、ザッザッと大地を踏む音が幾つも重なって白銀の門へと近づいて行く。

集団の先頭を行くのは、もふもふのフードがついた黒コートの右腕に黄金色の布を巻いた1人の少年で、それなりに整った顔立ちだが、ボサボサの灰色の髪と赤い眼の下の隈が薄暗いアンダーグラウンドな雰囲気を醸し出していた。少しだけ開いかれた口からは鮫のようにギザギザの鋭い牙がその鋭利な顔を覗かせていて、両の手にはそれぞれ武器らしき1本づつ両刃の鎌が握られていた。

「クソッ!荒れた島でやっと街かと思ったら、中々立派な防壁付きじゃねぇか。」

「バキャ野郎ッ!!こんな荒れ地であんな立派なモン作れる訳ねぇだろうが!ありゃ張りボテに決まッ!?」

黄金色の布をつけた集団こと黄金族の仲間たちがヒソヒソと白銀の門と黒の外壁について噂していると、先頭の少年が話している途中の男の口へと右の鎌の刃を突っ込んだ。

「テメェで確認した訳でもねぇクセに、妄想で勝手に油断してんじゃねぇよ」

口に刃を突っ込まれた男は怯え竦んだブルブル震えながら、刃が当たらねぇようにコクコクを頷いた。

少年の名はマンティスライサ、黄金族の幹部である。


 「マルチ、本社に支援要請!ちゃんと秘匿回線でやりなさい!」

「分かった」

「レコメンドは見張り台まで行って狙撃準備!レコメンドの目と腕なら十分当てられるでしょ!?」

「分かりました。当然、百発百中です。」

「ガーネットは対象とお嫁ちゃんのところへ行ってやんな!」

「言われなくてもそのつもりだが…チバ殿は?」

「ワタシはこの街の戦力を集める。って言っても、小規模な自警団ぐらいしかないけどね!」

黄金族襲撃の混乱の中、チバたち護衛ストーキング組は隊長色であるチバがテキパキと指示を出して、それぞれの仕事を果たすために走り出した。


 ガーネットがサンビタリアたちの下へ走っていくと、2人は何故か言い争いをしていた。

「嫌です!ぴぃつぅ様が戦うなら私も一緒に戦います。」

「しかし、サンビダリア嬢は獲物もなく、防衛隊員でもなく、私のような立場ある人間でも無い。」

「ぴぃつぅ様だって!PMCでも無い、ただの製薬会社の社長ではありませんか!?」

「ああ、そうだ。私は赤目製薬の社長だ。サンビダリア嬢のような無辜の民を守る、社会福祉に積極的な優良企業の社長なのだ。だから、私は町を守りに行かねばならない。」

「それなら、私だって社長夫人です!連れて行ってください!」

サンビダリアは泣きながらP2に掴みかかって、その涙と鼻水でP2の服をグチャグチャにしながら、そんなこと知らないとばかりに服に見向きもせず、ただ「行かないで」と叫んでいた。

だからといって危険な防衛前線に連れて行く訳にも行かず、P2は無理矢理にサンビダリアを引き剝がすことも出来ないまま、困った顔をしていた。

「お願いします、連れて行ってください。私を…1人にしないで……」

余りにも弱弱しい、死にかけの潰れたカエルと同じくらい小さくてか細い悲鳴。

そんな訴えを聞いてしまって、P2はますますサンビダリアを無理に引き剥がせなくなってしまった。

「お嬢様…ッ!?」

ガーネットは慌てて2人(主にサンビタリア)の下へ駆けつけようとしたが、何者かが背後からガーネットを捕まえて、声も上げられないように口を塞いでしまった。

「しーッ!気持ちは分かるけど、サンビタリアが社長夫人になる上で、いづれ乗り越えなければならない転機の時が来たのよ。今は社長に任せなさい、貴女の出番はいづれ必ず来るからっ!!」

背後から捕まえてきて謎の人物、彼女の声と言葉にガーネットは目を見開いた

謎の人物の正体はサファイア、かつてサンビタリアと同じように貴族社会から追放されてきた少女である。

(この非常時に一体何を・・・っ!話なら後ですればいいでしょう!?)

(馬鹿ね、この非常時だからこそよ。2人と相手に気を遣うタイプだからこんな時じゃないと本音でぶつかりあったり出来ないでしょう?)

ガーネットはまた口を塞がれないよう、サファイアサンビタリアたちに聞こえないように小声で話す。

ガーネットは今すぐにでもサンビタリアの元に駆けつけたかったが、サファイアの言い分にも思うところがあった。過去のトラウマもあって押しが弱いところがあるサンビタリアが、あそこまで夫のP2に食ってかかる姿を見ることになるとは、ガーネット自身思いも寄らなかったことだ。

(・・・危険と判断すれば飛び出しますよ?)

(まぁ、それは仕方ないわね。2人の安全には変えられないわ。)

ガーネットは条件付きで2人を見守ることに同意した。


 「・・・サンビタリア嬢、貴女の心意気は有難く思うし、貴女を1人にはしたくない。」

「だったらっ!!」

「しかし!!私は貴女を死なせたくはないのだっ!!」

あんまりP2が真剣な眼をして悲痛な叫びを上げた訴えるものだから、サンビタリアは思わず口をつぐんだ。

サンビタリアはP2に連れて行って側で支えされて貰えるなら、ここで凶弾に倒れてもいいと思っていた。サンビタリアが習ってきた妻としての在り方は、夫を支え、家を守り、その為に命を賭す在り方だ。

だから、こんな風に死なせたくないから逃げてくれと云われるなんて想像すらしていなかった。

「・・・っ!!すまない、叫んで脅かすような真似をしてしまった。しかし、私はもう2度と・・・仲間を失いたくはないのだ」

P2の表情に更なる影が差した。

人物情報記録 マルチ(第一項)

性別:男性   年齢:25歳

身長:205cm 体重:75kg

種族:ノービス  所属 赤目製薬防衛第二小隊

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