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デェト

「幸せが壊れるのは、普通に起こりえることだ」

                  星宮星雅

 「何やっんのよ大将!?そこは優しく手を取って「足元に気をつけて(決め声)」ってエスコートするとこでしょう!?」

「何を馬鹿なことを・・・・それは隊長の趣味でしょう?」

護衛任務に就いている第二防衛小隊の3人+ガーネットの4人は、デートを邪魔しないようにサンビタリアをP2に任せて本社内で留守番・・・をするフリをして2人のデートを尾行していた。

「・・・やっぱり帰還しないか?心配なのは分かるが、流石に2人に悪い。」

「この馬鹿マルチ!それじゃあ、誰が大将とお嫁ちゃんを守るのよ!?これは護衛の仕事よ!」

「チバ殿・・・さっきから小声でヤジを飛ばしているようにしか見えないが、お嬢様たちの護衛も真面目にやってくれていたのだな!!」

「出歯亀にかまけて、仕事忘れるような馬鹿なら私も隊長とは呼びませんよ。」

真面目に護衛の仕事をこなそうとする気持ちが半分、単純にデートを見学したい野次馬根性が半分、4人はそれぞれ出店で買ったウサギ・リス・カメ・マンドリルのお面で変装し、串焼きの串を咥えたチバを先頭にヒソヒソと主たちのデートについて話している。4人は端から見れば完全にただの不審者にしか見えなかった。


 そんなストーキング護衛衆のことなど露知らず、サンビタリアとP2は並んで町を歩いていく。

サンビタリアが緊張で「すぅーはぁー」と深呼吸をするのを、P2が「本当に大丈夫だろうか?」と不安そうな目で見ていた。

「なぁ、やっぱり無理をしてないか?今日は戻って医者に診て貰った方が・・・」

「大丈夫です!?本当、大丈夫ですからっ!!ただ、ちょっとだけ・・・」

「ちょっとだけ・・・何だ?」

「ちょっとだけ・・・・・・その、男の方とデートをするというのは初めてのことで、緊張していまして・・・・」

「それは、つまり俺のことを男性として意識して・・・ッ!?」

モジモジと身体を揺らしながらたどたどしく話すサンビタリアの言葉で、P2の方も自分が異性として意識されているということを強く認識してしまい、2人して楽園にあるという赤い知恵の果実のようになる。

「あらあら、うふふ・・・」「若いっていいわぁ・・・」と、周囲の微笑ましい笑い声に2人は更に熱く赤くなってしまった。

「サ、サンビタリア嬢、何か食べたい物は無いか!?出店で腹拵えをしようと思うのだが!?」

「そっ、そうですね!久し振りの外出ですし、こういう露天のお店は初めてなのでワクワクします!」

無理矢理元気いっぱいに振る舞って気恥ずかしさを振り切るように、2人の声は大きくなった。


 「はぁい!天華名物『挽肉まんじゅう』2つお待ち!」

「わぁ!美味しそうです・・・あの、箸は何処ですか?」

「これは手で持って齧り付くんだ。パクッとな」

露店で買った挽肉まんじゅうは貴族のサンビタリアも知っている天華帝国の名物料理だが、貴族令嬢としてテーブルマナーを叩き込まれて育ったサンビタリアには素手で持って齧り付くという発想がなかった。

その為、箸を探してしまいP2に「齧り付くんだ」と教わった時にはかなり驚き、そして結果として常識知らずなところを晒してしまったと恥ずかしがり、ボンッと顔を爆発させたように赤くなった。

「ううっ・・・申し訳ありません。あまり視察以外では街に出たことがなく・・・」

「いや、サンビタリア嬢の経歴を考えれば仕方の無いことだ。俺の方こそ、事前に教えておくべきだった。」

「お気遣いありがとうございます・・・」

赤くなって俯きながらも、サンビタリアは挽肉まんじゅうを見る。

食べ方が分かったのはいいが、サンビタリアの常識では食べ物を素手で持って齧り付くというというのははしなたい食べ方であり、そんな真似を気になる男性の前でするのは気が利けた。

だが、折角今はお金の無いサンビタリアにP2が買ってくれたのだ。食べないという訳にもいかない。

欠片がくちについてしまったりしないかしら?大口を開けてしまったら下品だと思われてしまうのでは?等々、サンビタリアの胸中は不安でいっぱいだった。

「サンビタリア嬢」

P2は挽肉まんじゅうを手に固まってしまったサンビタリアの名前を呼び、P2の方へと顔を向けるのを確認すると、サンビタリアの目の前で大きく口を開けてバクリと挽肉まんじゅうへ齧りついた。

ポカンと呆気にとられるサンビタリアを尻目に、P2はもぐもぐと口を動かして挽肉まんじゅうを味わい、そしてゴクリッと飲み込んで見せた。

「お手本だ。」

そしてニカッと笑って見せた。

サンビタリアの胸はマグマのように熱くなって、とても言葉では言い表せないぐらい嬉しくなった。

もうサンビタリアの乙女回路がキュンキュン回りっぱなしである。また彼女は夫に恋をした。


 「腹拵えは済んだが、まだ少し時間があるな・・・・・・そう言えば、サンビタリア嬢の部屋はまだ備品の物のままだったか。よし!サンビタリア嬢、次は家具屋に行こうと思うだが・・・」

「はい、お気遣い有難く。私はぴぃつぅ様の向かうところ何処までも・・・っ!」

2人は出店で腹を満たし、次の目的地を家具屋に定めた。

その頃にはサンビタリアはもうP2にメロメロで眼の奥にはハートマークの幻覚が見えるほどだった。

しかし、P2は存外鈍感で(サンビタリア嬢・・・つまらないだろうに気を遣ってくれているのか?デートでの筈が買い出しのようで退屈だろうに・・・。)と、内心では自分のデートプランに呆れ果て、サンビタリアに謝罪していた。

カーンッ!カーンッ!

そんな、すれ違う2人の耳に届いたのは、街全体に響き渡る大きな鐘の音だった。

「敵襲!敵襲!アイツ等だっ!!黄金族のヤツ等、亡骸島まで上陸して来やがったッ!!」

それはデートの終わりと戦いの始まりを告げる怒号だった。

人物情報記録 チバ(第一項)

性別:女 年齢:18

身長:163cm 体重:65kg

種族:ケット・シー 所属:赤目製薬防衛第二小隊隊長


 赤目製薬防衛第二小隊隊長、素早く巧い剣術家。

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