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P2の誘い

「自らを知ると豪語する人間は、意外と自分のことをよく知らない。」

                             星宮星雅

時計の針を少しだけ巻き戻して、P2がサンビタリアの部屋を訪ねる前の話。

第二防衛小隊の迎えに出ている間もパソコン等を使って仕事はしていたが、やはり本社でなけでば出来ない仕事も多く、黄金族の対策という急務の課題があったこともあり、P2は毎日忙しなく動き回っていた。

常に側に付き従うのは秘書のカッタッパ。彼が支えが無ければP2はとっくの昔に過労で倒れていたことだろう。


 その日、P2はキャンディを口内で転がしながら歩いていたチバを引き留めて尋ねた。

「サンビタリア嬢の様子はどうだ?元気にやっているだろうか?」

「どうって・・・報告書に書いたとおりだよ。襲撃の1回も無い、平穏な日々さ。」

「いや、そういうことを聞きたいのでは無く・・・」

「そういうことじゃないって・・・じゃあ何を聞きたいのさ?お嫁ちゃんが元気かどうかなんて言われても、流石の私も毎日顔を合わせてる大将以上のことなんか私が知るわけ無いだろ?」

「いや、会ったのはまだ初日と本社に帰ってきた時の2回だけだが・・・」

「は?」

チバは思わず口を開けてキャンディを落としそうになるほど、信じられないモノを見る目で呆れかえった。

政略結婚とはいえ2人は新婚夫婦なのだから、てっきり毎日同じ顔を突き合せて仲良くしているモノだと思っていたからだ。サンビタリアの部屋にあるシングルベッド2つはサンビタリアとP2のものだと思っていた。

「いくら夫とは言え、男の我儘に振り回されてフラれた彼女の近くに会ったばかりの男が居ては余計なストレスが掛かるだろう。それに、今の彼女は俺と同じく忙しそうだ。」

だから今の今まで放って置いたという。

確かに一見するとロジックが通っているが、チバからすれば何も分かってない人の回答だった。

「・・・大将のこと尊敬してるよ、恩だってあるし、大将が「俺の為に死ね」って言うならどんな死地にだって行くつもりさ。」

「お、おう・・・ありがとう?」

「でも、ソレは無い。乙女心的に考えて0点だよ大将・・・お嫁ちゃんが可哀想だ。」

今度はP2がポカンと口を開ける番だった。何がダメなのかまるで分かっていないのだ。

「今すぐお嫁ちゃんのところに行って」

「いや、しかし仕事が・・・」

「アタシとカッタッパでどうにかするから!早く行って来い!」

そんなP2の姿にチバは怒り、感情のままに叫んだ。

こうして、P2は困惑しながらも仕事を抜け出してサンビタリアの元へ向かったという訳である。


 そして現在、過程で色々悩んだり落ち込んだりはしたものの、自らの遺志で未来へと進もうとしている真っ直ぐなサンビタリアの姿を見て、P2は勝手にサンビタリアを傷ついた弱い存在だと思っていたことを深く反省した。

そして、初めて彼はサンビタリアを政略結婚の相手でも傷ついた少女でも無く、サンビタリア・ラックス・デ・カウを見た気がして、強い興味を抱いた。目の前の少女をもっと知りたいと思った。

「ああ、成程、確かにチバの言う通りだ。俺は「無し」な対応をしてしまったらしい。サンビタリア嬢、貴女はとても強い人だ。侮って悪かった。」

「い、いえ・・・・傷ついて塞ぎ込んでいたことも事実なので・・・」

P2の謝罪を戸惑い、困惑するサンビタリア。

実際、フラれた時のことを気にして何度も落ち込んだのは事実なので謝られると、何だか悪いことをさせてしまっているようで少しむず痒かった。

「だが、サンビタリア嬢のことを誤解していたことに変わりは無い。そこで、その・・・提案なのだが・・・」

P2は口ごもって先の言葉を続けることを躊躇った。

よく見れば頬も赤く、言いにくそうにしているのも気恥ずかしさのように見える。

(これは・・・もしかして・・・夜のお誘い!?い、いえ、嫌な訳ではありませんが・・・でも、私たちは夫婦なのですから夜をともにすることになっても何も可笑しくありませんよね?はしたなくありませんよね?ね?)

サンビタリアまで顔を赤らめ、愛を知った穢れ無き乙女の一面を見せた。

夫婦とよりは付き合う前の両片思いの男女である。

「・・・1度デートをしないか?」

「は、はい、喜んで!身を清めて夜をお待ちして・・・・・・でぇと?」

「?そうだが・・・それ以外に何かあるか?」

「い、いえ・・・私が早とちりをしてしまっただけです。喜んでお付き合いします。」

サンビタリアは自分が如何にいやらしい女なのかを思い知ることとなった。

 


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