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まだ会うのは2回目な2人

「私はけっこう恋愛脳なんだよ、だってハッピーエンドの方が幸せだろう?」

                                星宮星雅

 「大将!こっちはアタシたちでやっとくから、お嫁ちゃんの相手してあげなよ!」

という、チバの節介焼きにレコメンドを初めとする社員たちが協力したことで、サンビタリアとP2の2人は荷物や負傷者の運搬の仕事から外され、話す内容が抜け落ちたサンビタリアは無言で夫と見合うことになった。

「・・・」

「・・・」

この2人、夫婦ではあるもものの直接会うのはまだ2回目である。

しかも1回目の邂逅の際も大した会話は無く、サンビタリア不安になった1回電話した時の会話が唯一の会話と言っていいほどで、まだまだ顔は見たことがある程度の付き合いしか出来ていない。故に、2人は何を話せばいいのかもよく分からず黙ったままジッと見つめ合った。

「・・・仕事探しの方は順調か?」

「はい、社員の皆様のご協力で全ての部署を見学させて戴きました。」

「そうか・・・モリアーティに発破を掛けられたからといって、無理をしなくてもいいぞ。別に働かなくても放り出したり、命を狙ったりするような真似はしない。」

「・・・私では力不足でしょうか?」

「いや、そういうことでは無く・・・ただ、本当に無理をして欲しくないだけだ。」

実のところ、サンビタリアはP2が突き放すつもりで言ったのでは無いと、薄々予想がついていた。

だが、それとこれとは話が別である。そんな筈が無いと思っていても、「もしかしたら?」と不安になってしまうのが人の心というものだ。「無理をして欲しくないだけだ。」という言葉に不安が歓喜に変わり、バクバク喧しい心臓の音すら心地よく感じて、ニヤける顔を手で無理矢理押さえつけた。サンビタリアはまだ恋に恋するお年頃、夫の一挙一動で心がまるで早馬に引きづられるように揺り動かされていた。


 「あの、お仕事の方で少し相談したいことがありまして・・・・・・その、私の、実家の話なのですが・・・」

亡骸島では社長夫人なサンビタリアだが、本土の方では流刑された罪人である。

面子商売の一面がある貴族家の令嬢でありながら罪人として流刑に処されたサンビタリアとしては、実家に方に幾らか後ろめたさがあり、心情的に頼り辛く戻り辛いものがあった。

だが、このままでは政略結婚で嫁いだ身でありながら赤目製薬に何の利益も齎さない、ただ無駄に押し付けられだけの荷物女になってしまう。それはサンビタリアにとって貴族としても個人としても耐え難いことだった。

なので、レコメンドの提案に乗ることにしたのだが、いざ本番となると、やはり言い辛かった。

「・・・話は変わるが、私のスケジュールが変更になってな。帝国本土のカウ領の方へ行くことにした。」

「ぴぃつぅ様、それは・・・」

「サンビタリア嬢もよければ一緒に来ないだろうか?故郷に思うところもあるだろうし、それに、その・・・夫婦なのだから一緒に出掛けることがあってもいいだろう?」

歓喜・慕情・屈辱・後悔・・・・・・とても一言では言い表せない。

多くの感情が入り乱れて、混ざり合い、相乗効果を生み、サンビタリアの心は混沌としていた。

自分の気持ちを察して気を遣ってくれたことが嬉しくて仕方が無いし、気を遣わせてしまったことが情けなくて仕方が無い。しかし、サンビタリアは淑女のでどうにかこうにか笑みを浮かべる。

「・・・エスコート、していただけますか?」

「喜んで、マイレディ」

P2の唇がそっと彼女の手に触れた。



 「~~~~~ッ!!??」

荷物の積み下ろしが終り、P2が責任者として最終確認に向かうのを見送ると、林檎の皮のように真っ赤に染まった顔を両手で隠して声なき叫びを上げた。サンビタリア・ラックス・デ・カウ、魂の咆哮である。

(確かにエスコートしていただけますか?と聞いたのは私ですけど!私ですけど!)

(誰がキスまでしろ何て言いましたぁ!?いくら、夫婦と言っても順序というものが・・・・・・・・・それに私はまだキスしてないのにぃ!?)

サンビタリアは一言も喋っていない。音1つ立てていないのだ。

だが、受け止めきれないほどの感情の嵐を前に狂乱する彼女の無言の叫びの正体が、付き合いの長いガーネットには不思議と良く分かった。それはただの惚気なのだと。

「P2殿とのデートの約束、おめでとうございます。」

「な、ななな、何を言っているんですかガーネット!私たちはただ仕事で一緒にカウ寮に向かうだけ・・・」

「何を仰いますか、本当に仕事ならエスコート等という言葉が出て来ないでしょう。」

「~~~~~ッ!!??」

サンビタリア・ラックス・デ・カウ、またしても発狂する。反論の言葉は出てこなかった。

そんな主の姿にガーネットの方は大満足。内心、「この様子であれば、皇子のことを忘れて新しい恋に乗り出せそうですね。」と、一息ついて、悶絶するサンビタリアを優しく見守るのであった。

「・・・鎮静剤が必要でしょうか?」

一方、護衛のレコメンドはサンビタリアの大悶絶に少しズレた感想を呟いていた。

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