亡骸島港
「ああ、ああ、何故だ!?一体どうして俺はこうなってしまったんだ!?」
星宮星雅
そうして、支度を済ませたサンビタリアは赤目製薬地上1階から、迎え用の貨物輸送トラックチームに同乗されて貰い、亡骸島港へと走って行った。
ガーッとエンジン音を吼えるながら、亡骸島の荒野を駆けるトラック。
初めて来た時には窓の外の景色を楽しむ余裕も無くて気がつかなかったサンビタリアだが、改めて亡骸島を良く見てみると遠く時々、人里らしき小さな影を見つけることが出来た。
「いくら赤目製薬でも亡骸島の住民を全員社員として雇う余裕はありませんからね。社員でない住民は寄り集まって集落を作った暮らしています。」
「だが、この荒野の中でどうやって生活しているんだ?」
トラックを運転する壮年の男性社員の説明に疑問を投げかけたのはガーネットだった。
確かに、亡骸島はその殆どが雑草1本生えていない荒れた大地でとても日々の糧を得るに向いた土地には見えない。港の方まで行けば魚が捕れるかも知れないが、港には護送されてきた罪人が本人か確認するために役人が常在しており、亡骸島周辺の海で勝手に漁をしようとすれば直ぐに飛んできて密猟者として捕まえられるだろう。尤も、元から亡骸島の住人は罪人とその家族しか居ないのだが。
「それも赤目製薬の事業の賜物ですよ。社長、農業用の土やら肥料、種に指南書に道具と、利益も出ないのに帝国本土の最新の品を態々買って、島のみんなに配ったんですよ。お陰で亡骸島の島民は自給自足の生活が送れています。」
「なるほど、それでP2殿は社員以外の島民からも一目置かれているというわけか。」
思い出すのは、亡骸島に来た日のこと。
ならず者に囲まれ、俯いていたサンビタリアと頭にきていたガーネットの前に現れたP2の姿を見て、ならず者は「P2の客なら仕方が無い」と大人しく引き下がった。彼等もP2の主導する赤目製薬の慈善事業に助けられた島民達という訳だ。
「口で言うほど簡単では無かったでしょうに・・・本当にぴぃつぅ様様は凄い御方です。」
サンビタリアは誇らしげに笑みを浮かべた。
亡骸島の最東端、石の灯台と併設される形で亡骸島港は作られている。
石をブロック状に切り、それらを積み重ねる形で作られた円柱状の石の灯台は建っていた。灯台の最上階にはコップ型の器具があり、その中に火を灯し、特殊な紙を貼りつけることで1方向へ光りを集中させることが出来るようになっている。この石の灯台が役人が常在する基地でもあった。
亡骸島港は灯台のそれとは別種の白いコンクリートで作られていた。動物の骨を粉にして水とセメントで混ぜ合わせて作られたコンクリートは木材や石材に比べて近代的で、積み重ねた痕も残っておらず頼もしい。
赤目製薬が所有する貨物船は全てで払っている為、今は帝国政府の船一隻しか停泊して居らず、その停泊している船も型落ちの小さな輸送船で、埃や汚れまみれでボロボロだった。そのせいか、港自体も少しだけ寂しく見える。
「おやおやぁ、カウ家の御令嬢方じゃあーりませんか。赤目製薬のみなさんもおーそろいで、一体どーなされましたかな?」
妙な話し方をしながら、役人らしき軍服の男が近寄ってきた。
埃一つ無い前開きの真っ黒な服に金のボタンがピカピカ輝いており、腰に差した剣も新品同様の姿をしていたが、役人の男自身は嫌らしく下卑た笑いを浮かべており、折角の立派な服もこれでは台無しだった。
「おや、これはこれは、お役人殿。こんな真昼間に態々「そんなこと」を話しに来て下さるとは・・・相変わらず暇そうで何よりです。お陰様で、我が社は忙しいので真似できそうにありません。」
皮肉である。レコメンドは暗に「私たちはお前と違って暇じゃないんだよ」と挑発したのだ。
「港に怪しい人間が立ち入らないどーか、目を光らせるのが私の仕事で-すからな。暇なのは平和な証拠なーのですよ。」
これも皮肉である。役人はレコメンドの挑発に「テメェら罪人が何やらかすか分かったもんじゃねぇからな、しっかり見張ってんだよ。」と、言い返すついでに警告したのだ。
そうこうしている間に、海の向こうから巨大な影が近づいてきた。
巨大な影が港に近づいてくれくるほど、その巨体の全容が見えてくる。魚のような形状をした影の正体は白く塗装された輸送船で、船体の側面には赤い目のシンボルマークが描かれており、甲板の上には緑のコンテナが積まれており、その上には人らしき影もあった。P2たちを乗せた船、輸送船『白魚』である。
「おやおや、あれは赤目製薬の船じゃあーりませんか。帰還するには早いように思いますが・・・・・・・・・なーるほど、貴方も黄金族にやられたというわーけですか。罪人同士潰し合ってくれたようでたーすかりますよ。」
「ええ、お恥ずかしい限りです。討伐されていればこんなことにはならなかったのですが・・・」
暗に「お前らが頼りにならんもんやから苦労するわ」と言われた役人はブスッと不機嫌な顔をしながらも、「精々、迷惑をかーけないように」と、基地の中へ消えていった。
ゾロゾロ大勢で港にやって来た理由が分かったので、もう用事は無いらしい。




