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シェヘラとサンビタリア

 「ああ、酷いことを言わないでくれ!愛は確かに不変なのだと信仰し続けてくれ!」

                                   星宮星雅

 「ストーキング行為については謝まります。ですが、P2様の花嫁と聞いて黙っている訳にはいきません。赤目の旗の下に亡骸島は流刑地から永世王国に生まれ変わり、私たちはP2様という素晴らしい王を戴くのです・・・・・・ッ!!そんな我らが王の花嫁は王に相応しい女で無くてはならないのです・・・!」

「確かに亡骸島の開発計画はありますが、建国する予定はありませんよ。」

「ええ、ええ、ですが人々は新たな王を望む望むでしょう。大衆の熱量というのは恐ろしいものですよ?」

クスクスと笑いながら話すシェヘラの瞳は、話している相手であるレコメンドではなく後ろのサンビタリアをジッと見つめていた。冷たく見定めるようでもあり、纏わり付くような嫉妬の視線のようでもあった。

「ですが、本当のところ私は永世王国云々はただの予想で、そうならなかったなら、それでもいいのです。ですが、私たちにとって重要なのは王・・・即ちP2様がお幸せになれるか否か。そうでしょう?」

「それについては同意します。そのために、私は社長の命令を遂行しなければなりません。」

「それが私も同じことですわ。レコメンドの忠義の形が命令の遂行であるように、私の忠義の形は花嫁の見定めなのです。」

睨み合うシェヘラとレコメンド。辺りには一触即発の緊張した空気が流れ出した。

シェヘラに着いてきた部下達は万が一に備えて身構え、ガーネットもサンビタリアを隠すように少し前に出た。

「シェヘラ様、情報編纂室ではどのようなお仕事をするのか教えて下さいませんか?」

ピリピリとした緊張を打ち破ったのは、守られていた筈のサンビタリアだった。


 「へぇ、なるほど・・・そうきますか・・・・・・いいでしょう。お望みの通り情報編纂室を案内しましょう。」

少しの間何かを考える素振りをすると、シェヘラはサンビタリアの望みに答えた。

レコメンドは演習で使用した弩鬼説奇から、室内で携帯して持ち歩いていたクロスボウに持ち替え、その発射口をシェヘラの身体に押しつけ、「妙な真似をすれば同じ社員相手と言えども撃ちますよ。」と脅した。条件付きで情報編纂室の見学を認めたのである。

ガーネットは流石につけ回して来た相手にノコノコ着いていくのは危険すぎると止めようとしたが・・・・・・

(お嬢様・・・・・全て覚悟の上でお進みに成られるのですか、本当に立派に成られた。)

その覚悟に満ちた表情を見て、自分の真の役目は止めることでは無く、支えることだと悟るのだった。


 そうして、一行は情報編纂室へとやって来た。

そこには大量のデスクが向かい合うようにして並んでおり、そのデスク一つ一つにパソコンが乗っかっていて、多くの社員達がそのパソコンに向き合ってキーボードを叩いている。そういう場所だった。

勿論、情報編纂室にはパソコン以外にも設備が揃っており、幾つも並んだプリンターや無料で透き通った綺麗な水が飲めるウォーターサーバー、円盤状の地を這う自動掃除機まであった。

「情報編纂室の仕事はその名前の通り、赤目製薬に関連する情報全てを精査した後、情報媒体に記録し、編集すること。そして資料庫に情報媒体に引き渡すまでが私たちの仕事よ。資料庫に引き渡された情報はそれぞれの業務に役立てるため社員達が自由に利用することが出来るわ。」

「防衛隊に所属した場合、主に情勢の変化に関する資料や他の部隊の作戦記録等を閲覧するために資料庫を頻繁に利用することになります。他の部署でも調べる資料の種類が変わりますが、頻繁に利用することに変わりはありません。」

「つまり、私たちの仕事の成果は赤目製薬全体の業務に影響するということよ。誰にだって任せられる仕事じゃない、責任ある仕事なの。」

「室長は仕事だと本当に有能な人なんです。ただの狂信者じゃないんですよ。

シェヘラの説明にレコメンドやシェヘラの部下たちが補足を加えていく。

サンビタリアたちは新入社員向け資料で大体の業務内容を知っていたが、実際にその現場を目の当たりにし、そこで働く人間の言葉を聞いたことで、漠然としたイメージが段々と輪郭を帯びていく。

「なるほど、確かに情報の把握は大切です。実家・・・カウ家でも情報収集のために専門の方々を多く雇っていましたから、その重要性はよく分かっているつもりです。シェへラ様はP2様に信頼されておいでなのですね。」

「・・・政略結婚女にしては中々よく分かっているじゃない。」

「ありがとうございます。私たちはまだまだ外様の身、どうかもっと赤目製薬のことをお教え下さい。」

見事なカーテシ-を見せ、優しげに微笑むサンビタリアの姿に、シェヘラの方も段々とサンビタリアがただの箱入りお嬢さんではないと感じ始めていた。それは、シェヘラがP2に見ている、本当の意味での貴い人の在り方に良く似ている気がした。

(・・・・・・・・・まぁ、卑怯者の政略結婚女から真っ当な恋敵程度には格上げしてあげましょうか。)


 「・・・と、まぁ、正式な社員じゃない貴女に教えられる範囲としてはこんなところね。」

暫くして、シェヘラ室長の情報編纂室講座もとうとう終ろうかという時間がやって来た。

キラキラとした純粋な目で「すごい!それでそれで?」と相槌を打ちながらメモを取っていたサンビタリアだったが、流石に疲れたのか少し怠そうな表情をしている。必死に隠そうと体裁を整えてはいるが、長い付き合いのガーネットと仕事の都合上観察力に優れたレコメンドにはお見通しだった。

「・・・2カ所休まずの見学でお疲れでしょう。いい時間ですし昼休憩を兼ねて食堂にいきましょう。」

「良い考えです、レコメンド殿。お嬢様、適度な休みもまたお身体には必要ですので・・・。」

「分かりました。それでは、いきましょうか。シェヘラ様、情報編纂室の皆様、今日は本当にありがとうございます。私も近い将来、同じ社員として肩を並べて働きたいと思います。」

なので、2人はサンビタリアに休憩を提案して、一行は食堂に向かうことに決めた。

「・・・ねぇ?最後に一つだけ聞いてもいいかしら?」

挨拶を済ませ、情報編纂室を去ろうとする一行を呼び止めたのはシェヘラだった。

「何故P2様ではなく赤目製薬の仕事のことを聞いてきたの?」

サンビタリアはゆっくりと目を閉じて、胸に手を当てる。

(傷心に優しさが沁みたとはいえ、私はこんなにも簡単な女だったでしょうか?)

単純な自分に苦笑しながらも、心優しい旦那(会ったのは1回だけ)のことを思うと自然と気が高ぶり、抑えつけるのに苦労した。

「それは勿論、ぴぃつぅ様の支えになりたいからです。それに、ぴぃつぅ様のことはぴぃつぅ様ご自身の口からお聞きしたいと思いますから・・・・・・・・・」

出した答えに迷いは無かった。

 人物情報記録 サンビタリア・ラックス・デ・カウ

性別:女 年齢:14歳

種族:カウ 所属:???

 元々軍閥貴族カウ家の御令嬢であり、バルハードの腕は親譲りである。

婚約相手だった第1皇子が他家の令嬢に執心した末に、婚約破棄と断罪(彼女本人曰く(身に覚えが無い無実の罪)をサンビタリアに突きつけたことで、流刑地である亡骸島へやって来た。

また、その際に彼女を心配した父親が権力を用いて強引に政略結婚をねじ込んだことで、赤目製薬社長のP2と1度も顔を合わせることなく夫婦となった。

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