春の陽(はるのひ)
瀬田と久保の、ある日の昼下がり。
レースのカーテンがふわっと揺れる。
気まぐれに入り込むひんやりとした風が、なんとなく……心地いい。
春の陽射しで温められた空気は、仕事をする気力を奪っていく。
「こんな天気がいいのに……。なんで、俺はパソコンに向かって仕事してるんだろうな」
誰もいないから、気が抜けているみたいだ。
思わず出るあくびは、声も一緒に吐き出す。
大きく伸びをして、首をぐるりと回すが、それで眠気がおさまるはずもなく……。
諦めて、パタンとパソコンの画面を閉じる。
耳を澄ますと鳥の囀り。
揺れたカーテンの隙間からは、綺麗な青空が見えた。
少しぐらい、ぼーっとしてもいいよな。
こんなのんびりした時間は……いつぶりだろう。
ふと、部屋の中に散らばった小さな虹に目が留まる。
「……なんか、たまには……必要なのかもな。こういう時間も」
手元に落ちる、小さな虹をつつく。
気づいたら口元が緩んでいた。
時間がゆっくり流れてる気がして、のんびりした空気に、またしてもあくびが出た。
「……うん?」
何かが頬を触る感じがして、目が覚めた。
「あっ、ごめん、起こしちゃったな」
「あれ?久保さん?おかえり」
目の前には頬杖をついて、柔らかく笑ってる久保さんが。
「俺、寝てた?」
伸びをしながら、またもあくびが出る。
「気持ちよさそうに寝てたぞ。瀬田の頬に虹が写ってて。かわいいなって思って、触ったら起きた」
「かわいくない」
条件反射のように、机の下でボスッと音がする。
プイッと顔を逸らすと、向かいから笑い声が聞こえて、またしても机の下でボスッと音が鳴る。
「サンキャッチャー買ってよかった。瀬田と虹って組み合わせ、良いな」
どんな組み合わせだよ……。
そう思いならも、突っ込むのもめんどくさくて受け流す。
「それにしても、眠くなる暖かさだよな。まぁ、春眠暁を覚えずって言うしな」
笑いながらそう言って、自分も机に突っ伏して寝ようとしてる久保さんに呆れた。
「はぁ〜。久保さん、それ、朝に使う言葉だから」
でも……。
俺も、もう少し寝ようかな。
二人仲良く、キッチンのテーブルで春の陽射しを満喫した。




