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季節の言葉遊び  作者: ユズ(『ラジ裏』修正版・順次更新中)


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11/15

春、香るまで…

ハチと伊織のもとにやってきた、小さな春のお話です。

「あれ?いーくん、帰ってたんだね。おかえり」


買い物から帰ると、いーくんがリビングのソファーに寝そべっている。

何か見てるのかな?



「ただいま。ハチも、おかえり」


「うん、ただいま」


そのままキッチンへ行き、手早く買ってきたものを片付ける。

今の僕は、ちょっとだけ心が弾んでる、かな。


ガラス容器に水を入れ、リビングに持っていく。



「ハチ、なに持ってるの?」


「これ?さっきもらったんだよ」


テーブルの上にそっと置くと、横からいーくんが物珍しそうに覗き込んでくる。


買い物から帰る途中で、いつも庭の手入れをしてくれている庭師さんが球根をくれたこと。

どうやって育てるのか聞いたら、容器もくれたことなどをいーくんに説明していく。


「もう、芽が出てるんだね。なんの球根?」


「ヒヤシンスだって。何色が咲くのかはお楽しみ、らしいよ」


色んな角度から覗き込んでいるいーくんが面白くて、思わず笑ってしまった。

なんか懐かしい感じがするんだけど……。


あ、そうか。思い出した。


「いーくん、小学校でヒヤシンス育てたよね。覚えてない?」


隣で遠い目をしてる。これは覚えてないな。


「……なんか、育てたような?」


誤魔化すように隣で写真を撮りだしたいーくんがおかしくて、また笑ってしまう。


「ねぇ、ハチ。これ、毎日写真撮って観察するの、面白そうじゃない?」


いーくんが撮った写真を覗き込み……


「じゃあ……」


『day1』と指で書き込む。


「これで観察日記っぽくならない?」


「ハチ、それ最高」


二人で顔を見合わせ、ニコッと笑いあった。

なんだか、うちにだけ春が来たみたいだ。



ソファーの横にある出窓。ここなら日差しもあるし、ちょうどいいかな。

砂時計のような形をした容器は、午後の日差しを受けて光が柔らかく広がって、散らばる。

部屋の中に小さな陽だまりができたみたいだ。


「毎日観察するのが楽しみだな」


「花が咲くと、春の香りがするんだろうね」


春の香りか…。


あっという間なんだろうな。


でも、今は……。


この小さな春を、少しでも長く感じたいって思った。

ユズ自身、ヒヤシンスの球根を育て始めたので、ハチと伊織の二人にも同じことをしてもらいました(笑)

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