再び近衛様
この物語はフィクションです。
西暦1582年6月14日
14時00分 近江国・安土城
「お、大殿。近衛様がお越しになられました。
上杉家の武士を連れてまもなく城に・・・。」
「何!。上杉家だと。」
「はい。近衛様の先触れが申すには、直江兼続という名だという事です。」
「日向守。直江兼続と言えば、直江信綱の妻を娶って直江家を継いだ者か。」
「御意。まだ年は23歳のはずです。」
「良かろう。何にせよ近衛様の同伴者だ。
しっかりと話を聞こうではないか。」
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14時20分 同
「織田様。ご尊顔を拝し恐悦至極にございます。
上杉家当主・上杉弾正小弼景勝が臣、直江兼続と申します。」
「であるか。お使者殿よ。近衛様がお連れされた故に儂は会うが。
織田家は既に春日山城を、柴田・滝川の計4万人で包囲している。
降伏を希望か?。」
「織田殿。ここは、ここは儂に免じて上杉家を残しては頂けぬか?。」
「近衛様・・・。成程、近衛様は上杉家とは縁が深い。
以前は関東で活動していた時は、上杉家が近衛様の後見をしておりましたな。」
「その通りじゃ。上杉家には、上杉不識庵謙信殿には真に世話になった。
儂はその恩義を返したい。
も、もちろん上杉家は越後から出る。
石高も今の様な物もいらぬ。
3万石でどうだろうか。越後以外の国で3万石。
上杉の名跡を残す事をどうか認めて頂きたい。
この通りだ。」
近衛様が折り目正しく正座をして、土下座をした。
上杉家使者の直江も同じく必死の土下座だ。
「・・・、・・・、大和国南部で3万石・・・。
それならば上杉家の存続を認めましょう。」
「おおっ!。真か。これは目出度い。
織田殿、恩に着ますぞ。
それでは織田殿、早速だが儂を越後に向かわせて欲しい。
春日山城を開城する手続きが必要だ。
このまま若狭から船で越後まで向かう。
誰か織田の家臣を付けて頂きたい。柴田殿と滝川殿を止められる人物を頼む。」
「青地与右衛門に儂の近習50名を付けましょう。
春日山城まで行く手配も織田家で致します。」
「織田様。上杉家の存続を認めて頂き、感激の極みにございまする。
上杉家は戦場で働きまする。戦の際には先鋒の陣に加えて頂けます様に。
必ず・必ず敵を倒して恩義に報いまする。」
「直江。期待しておるぞ。上杉家の事だ、儂は些かも心配してはおらぬ。
それはそうとコレを持って行け。
大和国南部に行くまで資金はいくらあっても足りぬであろう。
金小判1,000枚だ。」
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15時00分 同
「大殿。宜しかったのですか。上杉家の存続を認めてしまって。」
「日向守。久太郎。上杉家なら構わぬ。
実際に戦となれば先鋒で大いに働いてくれよう。
武田家は滅ぼしたが・・・、上杉家も滅ぼさねばならぬ理由はない。」
「上杉がしっかりと働いてくれたならば、儂は加増もするぞ。
働ける者にはしっかり働いて貰えば良いのだ。
織田家に損は無い。それに春日山城が開城すれば、柴田勢も滝川勢も他の仕事に使えるしな。」




