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朝一番

この物語はフィクションです。

 西暦1582年6月13日


4時00分  近江国・安土城


「おはようございます、久太郎殿。」


「おはようございます、ガルベス殿。」



 昨日で織田家への引継ぎは終わったので、今日からは早朝に久太郎殿もしくは日向守殿に挨拶をする事となっている。


僕がまだ日の本にいる生存確認の為だ。


もし5日を超えて早朝の挨拶が無い場合には、僕は『別大陸行き』で日の本からはいなくなったと、判断してもらう事になっている。



「は?、はい?。朝の5時から屋台を安土城下で出したい?。」



「そうです。私は長年のライフワークとして。


時間がある時には偶に屋台を出していました。


日の本でも以前、京の町でカステラを売っていた事もあります。」



「?。ガルベス殿が本職は料理人 兼 按摩士というのは伺っていましたが。


屋台営業・・・。ちなみに何を出すのでしょうか?。」



「今朝はタコ焼きです。タコ焼きとは・・・~~~という物になります。


一皿6個入り・1永楽銭(約100円)です。


一人一皿の制限を設けます。


人件費他もろもろの費用を除いた原価率は400%。


一皿作るのに純粋な材料費だけで4永楽銭(約400円)掛かります。


赤・赤・大赤字確定の屋台営業です。」



「・・・、・・・、もちろん何処で何を売って頂いても、一向に構いません。」



「ありがとうございます、久太郎殿。」



~~~~~


5時30分  同


「何っ?。ガルベス殿が安土城下の人気の無い路上で。


屋台営業をしている?。


原材料費が売価を遥かに上回る、タコの身を入れた小麦粉焼きだと?。


何の・・・何のためにそんな事をするのだ?。」



「大殿。ガルベス殿の話によると。


ガルベス殿は22歳で世に出るまでに、料理人としても鳴かず飛ばずの下働きばかりの日々だったと。


魔力なる物も周囲の人々より大きく劣る、いわゆる落ちこぼれだったと。」



「ぬぅ~、今の大きな力を行使するガルベス殿の姿からは想像が出来ぬが。


そうか若い頃は苦労したのだな。」



「その時にはもし金が沢山入る事があったら、予算を気にせず好き勝手に旨い料理を作って、多くの人に食べてもらいたいと願う日々だったと。」



「そうか。貧しければ思い通りの材料も手に入らぬだろう。


ガルベス殿はそういう願いがあったのだな。」



「それでその後に魔力が増大し、仕事がどんどん出来る様になり、レンタイ国でも武将として頭角を現した後に。


金も唸る程手元に残った時に、初心を思い出して。


異常に安い売価で原価の怖ろしく高い料理を、屋台を開いて売った所。


日頃の辛い思いや苦しい思いが無くなり、とても楽しかったと。」



「ふむぅ~、何に意義を見出すかは人それぞれという訳か。」



「その為にガルベス殿はもう過去に6年~7年程。


今回の屋台営業の類を色々な所で続けているとの事。


この日の本でも織田家への引継ぎが終わったので、好きに屋台で美味しい物を売って、気晴らしがしたいとの事でした。」



「・・・何とも・・・、まぁ良い。


久太郎。後で人をやってそのタコ焼きなる物を食べよう。


朝食に足しにしよう。」



(後で食べた、タコ焼きは生地に昆布・かつお・シイタケの出汁が入っており。


大切りの絶妙な歯ごたえのタコが入っており。


ごま油で表面がカリッと焼かれて、中は生地の焼き加減が、えも言えぬ柔らかさだ・・・。)



(そこにガルベス殿自作のソースなる調味料が、薄く掛けられ。


青のり・かつお節・マヨネーズなる調味料(自家製)を掛けた料理だった。)



(美味かった・・・、一皿6個を直ぐに食べてしまった、大殿と日向守殿と私は。


再度人をやってもう一皿を平らげた。)



これが1永楽銭で路上で売っていたので、早朝から安土の町の人々が屋台に殺到した。


直ぐにガルベス殿の見張り役から連絡があったので。


問題が無いように屈強の武士5人を現場に使わせて、騒ぎが起きぬ様にした。



(これは町の人々が猛り狂って、屋台に殺到しかねない。


こんな旨い物を誰でも買える値段で売るとは・・・なるほどこれがガルベス殿の信念という事かと、改めて驚いてしまった。)

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