織田はおかしいのではないか?
この物語はフィクションです。
西暦1582年6月5日
13時00分 山城国・京
「近衛(近衛前久・前太政大臣)。もっと近くに寄ってくれ。」
「は、ははぁ。」
「もっと、もっと近くだ。それでは話が出来ない。頼む。」
「はっ、それでは失礼したします。」
儂の名は近衛前久。五摂家(近衛・九条・二条・一条・鷹司)筆頭の近衛家の現当主だ。
朝廷では織田殿に面と向かって物を言える、唯一の人物などと言われている。
その織田だが最近は正気を疑う様な活動をしている。
レンタイ国なる南蛮の国と友好を結んだ後に。
雪系炭系が大量に日の本に現れたり、異常な金・銀・永楽銭で物を買い漁ったり。
あるいはレンタイ国産の便利な品々を、異様な安値で大量に売りさばいたりしている。
今日はエロフなる人?・・・全身を黒く光沢のある生地にピッタリと覆われ、鼻と口だけ出した者?。
その者に男が股間を近づけて・・・色々あって出して・・・、報酬が200永楽銭(約2万円)を支払っている。
京の町は異様なざわつきをしているが、そんな事で永楽銭が貰えるならと。
町人が考え無しにエロフに殺到している。
「近衛よ。織田はどうしてしまったのだ。
元々我らの理解が及ばぬ破天荒な事は何度もあったが。
5月下旬以降、今に至るまでは異常・異様の目白押しだ。」
主上がギリギリ聞き取れる囁き声で、儂に話しかけて来る。
御簾越しで表情は見えにくいが、眉間に皺が寄りまくって厳しい表情だろう。
「朝廷でも下働きの身分の低い者は、200永楽銭が貰えるならと。
よく分からぬ黒ずくめの女?に下を差し出すなどと・・・。
それも織田の武士が先陣を切ってやっている等と・・・。
儂はもう織田の事が分からぬ。」
主上は大変な苦労人。朝廷の財政難と長期の戦乱を乗り越えた偉大な方だ。
約25年も在位して朝廷の立て直しに尽力されてきた。
足利とも三好とも織田とも、粘り腰をもって乗り越えてこられた。
だが今は既に御年66歳。高齢でありがなら朝廷を支えてくれている。
如何な主上の粘り腰といえども、今の状況に対応する事は出来ないのでは。
「近衛。儂はもう引退したい。もう十分に働いて来たはずだ。
本音を言う。織田が朝廷を残してくれるのであれば、もう多くは望まぬ。
儂が懸念する事は織田が余りに増長してしまい。
唐の王朝革命の様に朝廷を倒して、新たな織田による朝廷を作るのでないか。
その一点だけだ。」
「しゅ、主上。それは有り得ません。
織田は父親の信秀も信長本人も、常に朝廷を立てて献金や内裏の修復や、米の寄進を行ってくれたではありませんか。」
「それは織田の敵がいたからだ。だから織田と朝廷は上手く行っていた。
朝廷の権威を利用して織田は敵と有利に戦っていた。
だがもう織田の大敵・石山本願寺は降伏。毛利も降伏した。」
「主上。織田は確かに朝廷を利用しましたが、勤皇の志は変わらず持っています。
今後織田が日の本を統一する事があっても、それは変わりません。」
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13時30分 同
「近衛。三職推任(関白・太政大臣・征夷大将軍への就任要請)はどうなった?。」
「・・・今だ織田から明確な回答はございません。」
「近衛。本当にどれでも良い。織田をこのどれかにつけてくれ。
儂は気が気ではない。織田の事だ仮に役職についても、好き勝手はするだろう。
儂とて朝廷の枠内に織田が収まる等と、甘い考えはしておらぬ。
だが織田が役職についているという事は、朝廷を倒して新たな織田の朝廷を作る事は無い。」
「はい・・・。」
「近衛。困難な事を命じるが織田相手に粘ってくれ。頼む、この通りだ。」
主上は儂に向かって頭を下げた。
正座をして両手を床に付けて、頭を床に付けてだ。
「わ、分かりました。主上。この近衛。
必ず織田を三職のどれかに付けまする。」




