魚は意外と高級品
この物語はフィクションです。
西暦1582年6月2日
9時00分 丹後国・田辺の海
「ガルベス殿。今日はこれから養殖用の魚を捕ってくるのか?。」
「はい。ギギロ様。いわゆる蓄養ですね。
養殖する魚が小さい内に取って来て、海の生け簀に囲い込んで。
人が餌を与えて丸々と太らせてから食べるって物ですね。
それが出来たら後は人工養殖で稚魚を自前でふ化させて。
所謂完全養殖をしたいですねぇ。」
「ふーん、それで何の魚を捕ってくるんだい。」
「出来れば鰤・真鯛・カンパチ・真アジですねぇ。
これらの魚は適水温が広くてですねぇ。
その上に身の太り方も良くて、直ぐに大きくなるんですよねぇ。
耐病性なんかも比較的高い物が多いですし。
しかもしかも、鰤なんかはビタミンD・EPA・DHAも豊富なんですよねぇ。」
「ふぅん、確かに旨そうな魚達だなぁ。」
「はい。この日の本の人達なんですが。
沿岸部では魚は食べられているんですが、冷蔵・冷凍の方法は無く。
沿岸部を離れると干物や塩漬けや酢を使って、何とかかんとか少量を消費しているんです。
だからですね、沿岸部以外では魚自体が高級品扱い。
貴族や武家の偉いさんでも滅多と食べられない物なんですよ。」
「そうか、可哀そうだなぁ~。旨いのになぁ魚は。」
「はい。ですから僕がですね。これから水中探知魔法で養殖に向いた魚。
適水温が広くて、成長が早く、栄養価が高くて、耐病性等も優れた魚を。
稚魚をどんどこ、どんどこ、ドンドンドーンと捕って来ます。
もちろん日本海の生態系に悪影響が無い様に、捕るグループや量は加減をしてバラバラにしますんで。
ギギロ様は他の方達と一緒に、養殖場を整備してて下さい。
養殖の専門家の方にも来て頂いていますので、宜しくお願いします。」
「おーし、分かったよ。ガルベス殿。こっちは任せてくれ。」
「では行って来ます。色々と捕って来ますよぅ~。」
~~~~~
10時00分 同
「ガルベス殿・・・、これは・・・取り過ぎじゃないのか?。
用意した養殖場の施設が明らかに足りないんじゃないか?。」
「ギギロ様。ちょっと調子に乗ってしまいました。
この地は全然漁業が発達していないからか、魚がウジャウジャいましてね。
それと僕の水中探知魔法の精度が上がり過ぎてですね。
稚魚だろうが成魚だろうが、何処に何があるか丸わかりで・・・。
群れを見つけると全体の10分の1しか、捕っていないんですが。
群れその物が馬鹿みたいな数が・・・。」
「分かった、分かったよ。つい面白過ぎて取り過ぎたんだろう。
まぁいいさ。養殖場はこれからでもいくらでも増やせるんだからな。
なんせ海にいくらでも場所を設定して、資材入れればもう養殖場だもん。
気にするなよ、ガルベス殿。
仕事が増えれば首都レンタイで、暇している人達にも宛がえるしさ。」
「それではギギロ様。僕はもう一度行ってきますので。
当初の養殖場の7倍を新設して頂けますか。」
「いいとも、いいとも。ドンドン捕って来てくれよ。
さっき話に出ていた鰤・真鯛・カンバチ・真アジ以外でも良いぞ。
この際だ。旨い魚で養殖出来る奴は、捕って来てくれよ。
俺は旨い魚を食いたいんだ。」
「分かりました、ギギロ様。それじゃぁ行って来ます。」
~~~~~
11時00分 同
「・・・ガルベス殿。これってサァ、俺あんまり魚は詳しくないんだけど。
猛毒のある奴じゃなかったか?。」
「ギギロ様、よくご存知で。これはトラフグって奴です。
身が白身なんですが、もう圧倒的に旨いんですよ。
刺身・鍋・唐揚げが絶品ですよ。
・・・欠点としては仲間内で噛み合うとか、飼育網を破るとか。
後は肝臓と卵巣にマジで猛毒があります。」
「こいつは養殖出来るのか?。」
「レンタイ国では北海で養殖していた実績がありますし。
専門家の方も慣れていますので、何とかなるはずです。」
「・・・このデカくて不細工な茶色い奴は何だ。
明らかに成魚だよなコイツは・・・、これも養殖できるのか。」
「ギギロ様、これは九絵って名前の奴でして、身がもう旨さが凄い奴なんです。
これはただ単に余りに旨いから捕って来ました。
鍋ですよ、鍋料理。特製別袋で保存しますから、今度食いましょう。」
「こいつは随分と平べったい成魚だが・・・これは何だ。」
「ヒラメです。ギギロ様。こいつはですねぇ。
海でも養殖出来る上に、陸上養殖も可能な奴でして、これは首都レンタイに持って行ってそっちでも養殖しましょう。
白身の高級魚で、女性にはお肌に嬉しいコラーゲンがたっぷり入ってますよ。」
「こいつはヒラメと違って縦に真っすぐな魚だな・・・。」
「いやぁ~、いい奴を捕える事が出来ましたよ。
これはカワハギと言いまして。鰤と混合養殖出来る上に。
飼育網に付いたムラサキガイなんかの付着生物を、掃除(食べて)してくれるんですよ。
身は白身の肉質で旨いですし、きも(肝臓)が凄い旨いんです。」
「ガルベス殿。養殖場が全然足りないぞ。
まぁ良い、更に増設しよう。後は専門家の方がいるんだから。
彼に全てを任せよう。
・・・ただなぁこれだけやるとなぁ。
多分だけどこの丹後国・田辺の街は魚の聖地とかになると思うぞ。」
「良いですねえ。北改1号の港湾都市であり、魚の聖地。
めっちゃ良いですねぇ。」




