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2028年6月。久しぶりに梅田のコンカフェで近況報告。任せられる人と出会うのが大変www

 二〇二八年六月。

 少しだけ仕事が落ち着いた平日の昼。

 博之は久しぶりに梅田へ出た。

 目的は、以前しこたま通っていた昼のコンカフェである。

「……久しぶりに行くか」

 店を始めてからというもの、どうしても時間が取れなかった。

 一号店。

 二号店。

 三号店。

 ネイル。

 美容。

 人の採用。

 予約。

 税理士。

 清掃。

 気がつけば、昔は暇さえあれば行っていた店にも、何か月も顔を出していなかった。

 扉を開けると、すぐに声が飛んできた。

「あー! おじさん久しぶり!」

「久しぶりですね」

「生きてたんですか?」

「生きとるわ」

 博之は笑いながら席に座った。

「全然来なくなったから、どうなったんかなと思ってました」

「仕事忙しくてさ」

「会社?」

「いや、もう会社辞めてる」

「あ、そうやった」

「店や」

「まだやってるんですか?」

「まだってなんやねん」

 博之は酒を注文しながら、近況を話した。

「スナック三軒になった」

「三軒?」

「あとネイルサロン」

「は?」

「美容室まがいのシェア営業もやってる」

「めちゃめちゃ広がってますやん」

「俺もよう分からん」

 一号店と二号店は、もうかなり落ち着いた。

 女性スタッフだけでも回る日が増え、博之が毎回細かく仕切る必要もなくなってきた。

「だからあっちは、そろそろ店長みたいなん立てた方がええかなと思ってる」

「今までいなかったんですか?」

「俺」

「全部自分でやってたん?」

「せやで」

「そらコンカフェ来る暇なくなるわ」

 三号店はまだ立ち上げ途中。

 そこだけは、もう少し博之自身が顔を出す必要がある。

 ネイルと美容には、六月からそれぞれ責任者を置いた。

「月三万ずつ店長手当出して、予約とかまとめてもらうようにした」

「ちゃんと会社みたいになってる」

「個人事業やけどな」

 そんな話をしていると、店のオーナーも顔を出した。

「なんか面白い話してるやん」

「こいつ今、店三つやってるらしいですよ」

「三つ?」

「あとネイルと美容」

「お前、何してんの?」

「俺も分からんです」

 博之は笑った。

 オーナーはしばらく話を聞いてから、感心したように言った。

「でも、それすごいじゃないですか」

「いや、すごいというか、もう抱え込みすぎて困ってるんですよ」

「そらそうやろ」

「だから最近、仕事をちょっとずつ人に渡してます」

 税務は税理士。

 ネイルはネイルの店長。

 美容は美容の責任者。

 清掃は常連の清掃業者。

「俺が全部やってたら、次のこと考える時間ないんですよ」

 するとオーナーが頷いた。

「それでいいと思いますよ」

「そうっすか?」

「オーナーって、全部自分でやる仕事ちゃうから」

 博之は少し身を乗り出した。

「どういうことです?」

「案出して、人集めて、金出して、形にする。そこが仕事ですよ」

「ああ」

「現場全部やろうと思ったら無理です」

「やっぱり?」

「絶対無理」

 特に人の問題が一番難しいという。

「任せられる人って、なかなかいないっすよ」

「そうなんですよ」

「仕事できるだけじゃダメでしょ。金も触るし、人も見るし、変なことしない人じゃないと」

「そうそう」

「だからもう、面接しまくるしかない」

「結局そこなんや」

「人は数打たないと見つからないっす」

 博之は妙に納得した。

 自分はこれまで、店を増やすことばかり考えていた。

 だが、本当に必要なのは、その箱を任せられる人なのかもしれない。

「俺、物件見るより人探す方が大事かもしれんな」

「多分そうですよ」

「箱なんか金出したら借りられるもんな」

「人は金だけじゃ無理っす」

「確かになあ」

 遊びに来たつもりが、また仕事の話になっていた。

「なんで俺、コンカフェ来て経営相談してんねやろ」

「いつも仕事の話してるじゃないですか」

「そうやったっけ?」

「そうですよ」

 博之は笑った。

「まあええわ。久しぶりやし、みんな飲んで」

「ほんまですか?」

「今日は出す」

 何人かにドリンクを入れた。

 久しぶりに、仕事とは直接関係のない時間を過ごした。

 くだらない話をして。

 店の話をして。

 女の子に笑われて。

 オーナーとも少し真面目な話をして。

 気がつけば、会計は二万円ほどになっていた。

「……使ったなあ」

「久しぶりなんだからいいじゃないですか」

「いや、最近こういう金使ってなかったから、財布めっちゃ寂しく感じるわ」

「店にはもっと使ってるでしょ」

「店の金と遊びの金は感覚ちゃうねん」

「知らんがな」

 博之は笑いながら店を出た。

 梅田の人混みの中を歩く。

 二万円は減った。

 だが、妙に気分は軽かった。

「たまにはええな」

 仕事を渡す。

 人に任せる。

 そして、自分の時間も少し戻す。

 店を増やすことだけが、前に進むことではない。

 そんなことを思いながら、博之は久しぶりの梅田を後にした。

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