↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/69

2028年6月。仕事も分けて金も分ける。清掃の仕事と自分の資産分散。弁当や構想等

 二〇二八年六月。

 ネイルと美容の管理を二人の店長に任せた博之は、もう一つ定期的に発生する

 仕事についても考えていた。

「そろそろ清掃お願いしてええ?」

「ええで」

 頼んだ相手は、以前から店の清掃を任せている常連のおじさんだった。

 今回はスナック三店舗分。

 一店舗六万円ほどとして、三店舗で十八万円。

「すまんな。これ毎月あったら一人雇えるぐらいになるんやろうけど」

「何が?」

「清掃。三か月に一回ぐらいやん。十八万掛ける年四回やから、七十二万ぐらいしか仕事出されへん」

 すると、おじさんは笑った。

「いやいや。十分ありがたいで」

「そう?」

「お前から仕事もらうことで、俺が別の営業せんでええねん」

「ああ」

「言うたら得意先一個できたみたいなもんや」

 毎月ではない。

 それでも三か月に一度、ほぼ確実に仕事が来る。

「オーナーがもっと店増やしてくれたら、その分うちの仕事増えるやろ?」

「増える増える」

「今スナック三軒やろ。ネイルもあるやん」

「あ、ネイルも掃除いるな」

「美容院も箱持ったらいるで」

「美容院やったら、ちょっと高そうやな」

「広さとか設備によるけどな」

 博之は笑った。

「俺、店増やしたら清掃屋まで喜ぶようになってきたな」

「それでええやん。仕事わけわけしてるだけでも偉いで」

 近くにいた女性スタッフも頷いた。

「美容もそうですよ。オーナーが最初のお客さん集めてくれるだけで、全然違いますから」

「入口だけやで」

「その入口が一番大変なんです」

「そこから先は腕とかトークやろ?」

「そうです。でも最初の十人、二十人がおらんと、そもそも腕見てもらえないですから」

「美容院多いもんなあ」

「めちゃくちゃ多いです」

 結局、博之の役割は同じだった。

 清掃屋には店を増やすことで仕事を作る。

 ネイリストには客を連れてくる。

 美容師にも入口だけ用意する。

 その先は本人に任せる。

「まあ、茨木をもうちょい固めるか」

 JR茨木。

 阪急茨木市。

 その間を行き来しながら、店と人を少しずつ増やしていく。

 そんな話をしていると、博之がまた余計なことを思いついた。

「弁当屋とかできへんかな」

「また増やすん?」

「いや、まだ妄想や」

 スナック三店舗。

 ネイル。

 美容。

 そこに関わる人も十五人前後まで増えてきた。

「この人ら向けに飯出せんかなと思って」

「まかない?」

「それに近いな。店に食べに来てもらうんちゃうねん。日替わり弁当作って持っていく」

 たこ焼き。

 唐揚げ。

 あるいは日替わり弁当。

「それやったら別に、かわいい姉ちゃんが店頭立つ必要ないやろ」

「おっちゃん?」

「そう。料理できるおっちゃん一人か二人でええやん」

 朝に作る。

 昼に各店舗へ配る。

 従業員が買ってくれれば、最初から少し売上が読める。

「十五人じゃ足らんやろ」

「足らんな」

「でも通り沿いの小さい店なら、普通のお客さんも買うんちゃう?」

「七百円ぐらいでどうやろ」

「七百円やったらオリジンとか強いで」

「ああ……」

「コンビニもあるし」

「飯は競争激しいなあ」

 博之は唸った。

 それでも、考えるだけならタダだった。

 将来、関係者が三十人、五十人になれば話は変わる。

 自分たちの内部需要だけで、最初の売上をある程度作れるかもしれない。

「まあ保留やな」

「珍しくすぐ店出さんのや」

「俺も学習してんねん」

 そして六月、もう一つ決めたことがあった。

 現金が少しずつ増えてきた。

 店を始めた頃は、手元資金が減るだけで怖かった。

 だが、今は毎月の収入もある程度読める。

「全部普通預金に置いとくんもなあ」

 そこで博之は、当面使わない資金のうち百二十万円を、NISA口座を使って投資に回すことにした。

「百二十万?」

「今すぐ使わん金やからな」

「次の店のお金大丈夫なんですか?」

「店用の現金は別で残す」

 全部を投資するわけではない。

 店舗の家賃。

 給料。

 故障。

 突然出てくる居抜き物件。

 すぐ使う可能性のある金は現金で持つ。

 その一方で、当分触らない金まで銀行口座に積み上げる必要はない。

「金も仕事と一緒やな」

「何がです?」

「分けるねん」

 店を回す金。

 何かあった時の金。

 将来のために置いておく金。

「全部一緒にしてたら、今いくら使ってええか分からんようになるからな」

 仕事も同じだった。

 ネイルはネイル店長。

 美容は美容店長。

 税務は税理士。

 清掃は清掃屋。

 博之は人と客を集める。

「最近、何でも分けてますね」

「俺一人で持ったらパンクするって分かったからな」

 清掃屋のおじさんが笑った。

「それでええんちゃう。お前は店増やしてくれたら、俺の仕事も増えるし」

「プレッシャーかけんなや」

「次は四店舗目やな」

「まだ言うてへん」

 六月。

 三軒のスナックを掃除してもらい。

 ネイルと美容は店長に任せ。

 次の仕事として弁当屋を妄想し。

 そして百二十万円を将来のための資産に振り分けた。

 店を増やすことだけが経営ではない。

 仕事を分ける。

 金を分ける。

 自分が抱えるものを少しずつ減らしていく。

「まあ、これでまた次なんかあった時に考えられるやろ」

 博之はそう言いながら、次に空く物件の話を少しだけ楽しみにしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。