第五話 ステータス へようこそ
カナン・ステラリスの来訪は、これから新ギルド設立を考えていたエルとフリムにとって大きな前進となった。
ギルド設立条件の一つ構成員五名の確保。その第一歩が早くも踏み出せた形となった。
これでパーティーメンバー三人となり、クエストが受けられ、稼ぐことができる。すぐに買うのは無理だが、館が借りられ拠点確保にもつながる。
最高のスタートだ!
三人は勢いのまま、国営ギルド本部エリナの下に相談に行った。
「おはようございます、アステリア様。本日はどのようなご用向きでしょうか?」
本日も、厳格職員モードのエリナさん。
「今日はエリナさんに相談に乗ってもらいたいことがあってきました。」
相談にきたと聞くや、冒険者サポートモードに切り替わるエリナさんに、昨日の出来事を話した。
「それは大変な一日でしたね。あちらにフリム君と一緒にいる女性がカナンさん?」
「えぇ、そうです」
「アクレスさんたちのことは私が責任を持って、上に報告しておくから安心してね。」
「助かります。」
「ギルド設立の件だけど、構成員は彼女も含めて現在三人だね。リスはさすがに含めちゃだめだよ。あと二人、良い仲間が見つかることを祈っているよ。」
「ありがとうございます。」
「館や拠点の話だけど……ちょうどこんなクエストがあるけどやってみない?」
とんとん拍子に話は進み、どんどん砕けた口調になっていくエリナ。
ーーーE級クエストーーー
依頼主:ギルド【ゴコーレイ】
内容:リナーカカイナ村でのギルド活動補助
条件:若者
報酬:ギルドの館
「報酬がギルドの館!?やります。やらせてください!」即決。
「ありがとう、エル君。君なら受けてくれると信じてたよ。」
エリナはニッコリ微笑んだ。
「あっそうだ、クエストに行く前にやっておいたほうがいいことあるから二人も呼んできて。」
何か腑に落ちない感じのエルだったが、二人に報酬の話をすると喜んでくれたので、気にしないことにした。
エリナに呼ばれて三人はある部屋にきていた。部屋には大きなクリスタルが並んでいる。
「みんな、ここにくるのは初めてだよね。」
三人とも頷く。
「やれやれ、アクレスさんたち、やっぱりクエストでそれどころじゃなかったのかな?」
「いったい、何の話ですか?」
エルは質問しながら一つのクリスタルに触れる。
クリスタルは光を放ち、能力値の文字と数字が浮かび上がった。
――エル・アステリア――
STR:14
VIT:18
INT:5
MND:16
DEX:8
AGI:12
LUX:12
等 級:無印→鉛
《等級を鉛に更新しますか?》
「なんだこれ?」
能力値はさすがに分かる。己の能力値だ。等級は、無印から鉛に昇級できるようだ。問題はこの装置のことだ。
「ここにあるクリスタルはね、それぞれ役割があるの。」エリナが説明を始める。
どうやら冒険者はここで己の属性、スキル、能力値の確認や更新を行い、クエストに備えるらしい。クリスタルは触れた者のデータを記録・保存する物らしい。
エリナが説明を続ける。
――属性――
「基本的な属性の相性を知っておくことで何事も有利に進められるわ。生死に関わることだからしっかり覚えておくこと!」
「Lv1~10まであってLv5ともなれば一流の冒険者ね。経験や加齢で増減することも覚えておいて。」
――スキル――
「発現しただけで大きな力となる固有能力。
クエストによっては必須条件のスキルもあるから確認忘れずにね。」
「Lvについては属性と一緒。スキルにもよるけど、やはりLv5を超えてくれば一流と言われているわ。」
――能力値――
「自分の力を数値化したもの。国営ギルドにある情報端末で、モンスターの能力値も確認できるから、現在の自分と比較のため、把握しておくと冒険の役に立つよ。」
「大事なのは等級更新。能力値の三項目が基準を超えれば昇級できるようになるの。クエストは難易度によって、受けるのに必要な等級が変わるわ。無印三人組では、モンスター討伐やダンジョン探索で、受けられるクエストは出てこないのよ。」
なるほど、こんな大事なことを国営ギルド支部もない故郷にいた頃はしかたないとして、ここに来て半年も知らずに過ごしていたのか…自己嫌悪に陥るエルとフリム。
「仕方ないよ、普通は先輩冒険者がすぐに連れてくるものだからね。ほら、元気出して!」
アクレス達が帰ってきたら文句の一つでも言ってやろうと心に誓った。
「ところでエル君。鉛等級に更新できるようだからしておいてね。更新されたデータを元に受付で鉛等級の証交付するから。」
鉛等級、今まで証すらない無印。急に強くなったりするわけではないが、なんとなく誇らしく感動しているとエリナさんの指示が飛ぶ。
「次はこっちでスキルの確認をしてね。」
促されてクリスタルに触れる。
ースキルー
盾Lv1New
「わっ凄いね、エル君。スキルは中々発現しないんだけど、ギルドや仲間を守りたい気持ちが現れたみたいだね。」
盾のスキル。前衛を担う者には発現しやすい珍しくはないスキルだが、仲間を守れるスキルの発現がエルには嬉しかった。
「エルばかりずるい、僕にもやらせて。」
「別に順番なんてどうでもいいだろう。」
「私もやってみたいかも。」
一対二の状況になり先を譲ることにした。
――フリム・グラント――
STR:21
VIT:17
INT:8
MND:10
DEX:16
AGI:8
LUX:5
等 級:無印→鉛
《等級を鉛に更新しますか?》
ースキルー
薬師Lv1→2
ー属性ー
土Lv3
「やった!僕もスキル発現した~、しかもLv2になってる。土属性Lv3も凄くない?」
ステータス、スキル、属性を一気に確認し、己の能力値にはしゃぐフリム。
「スキルにNewはついてないから、元々持っていたみたいだね。属性は、種族の影響もあるから、ドワーフの血を継いでるフリム君ならLv2くらいはあり得ると思ってたけど、いきなりLv3は驚きだわ。」
エリナ曰く、スキルも属性もステータスと一緒で、基本は経験を積むことで成長するらしい。
「これは毎日、食費を浮かせるために土いじりと山菜採りしてたからかな。最近、光って見える植物が増えてきたんだよね。」
どうやらスキル[薬師]持ちには特定の薬草等が光って見えるらしい。
土いじりや山菜採りについては、本人は本気でそう思っているようだけど、たぶんそこまで関係ない。そんなことで影響されるのなら、農家はみんな土属性Lv10だし、漁師は水属性Lv10だ。
「フリム君は肉弾戦を得意とした前衛もいいけど、薬師としてみんなをサポートする中衛もできそうで、万能タイプだね。」
エリナさんが的確な判断をしてくれる。
「次は私だね。」
――カナン・ステラリス――
STR:2
VIT:4
INT:37
MND:888
DEX:8
AGI:7
LUX:32
等 級:無印→鉄
《等級を鉄に更新しますか?》
ースキルー
精霊召喚Lv2 光魔法Lv2 風魔法Lv1
ー属性ー
光Lv5 風Lv2
「えっ、うそMND888……こんなの英雄クラスのステータスじゃない……しかもスキル精霊召喚に光魔法まで使えるの?」
彼女いったい何者なの?といつも冷静なエリナさんが驚愕していたが、すぐに眼鏡をかけ直し冷静なアドバイスをくれる。
「ステータスに偏りがありすぎるから、等級は鉛で止めておいた方がいいわね。ゆっくり他のステータス上昇に合わせて昇級して行きましょう。魔法も使いすぎないように気をつけて。
「あと、精霊召喚はあまり人前で使わないで。」
なぜなのか尋ねてみると、精霊召喚は強力なレアスキルのため、ギルド間で奪い合いが始まってしまうほどらしく、駆け出しのギルドでは守り切れないからだそうだ。
こんな規格外のステータスを叩き出した当の本人は、あまり理解していないのかにっこり微笑んでいる。
カナンは規格外として、フリムも青銅等級に届きそうなステータスに万能スキル。属性まで高く期待できる。
それに比べて、オレは前衛盾役の無難なステータスとスキル。みんなを守れる力は嬉しいが、何かこう必殺技的なヤツに期待できる能力が欲しい。
「最後の属性診断に賭ける!」
エルが属性クリスタルに触れると、今までとは違い七色に輝き始めやがて、部屋全体を包み込んだ。
十数秒続いた輝きはゆっくりと収まり、クリスタルはエルの属性を映し出した。
エル・アステリア
ー属性ー
全属性Lv0
「……ゼロって何?」エルは呟いた。
「……ゼロはゼロなんじゃない。」フリムが当たり前のことを言う。
「……オールゼロなんて綺麗だね。」カナンがお祈りを捧げる。
「……ゼロなんて見たことも聞いたこともない。」エリナの眼鏡がずり下がり。
全属性Lv0、前代未聞だ。
全属性保有者は稀にいる。本当にごく稀にだが。しかし、Lv0というのが前代未聞だった。通常Lvは1~10で表示される。
現時点では判断のしようがないので頻繁に更新して様子を見るようにエリナから指示があった。
全員ステータス更新が終わり部屋を出た。
……スキルクリスタルが再び七色の光を放っている。そこには〈絆Lv1〉の文字が浮かび上がっていた。
属性クリスタルが七色の輝きを放った時、エルがスキルクリスタルに触れていたことに誰も気づいていなかった。
ステータス更新を終え、受付で鉛等級の証を申請し交付を待っている。エリナさんの話だと、三十分程で呼び出しがあるはずだ。
待っている間は、冒険者の情報交換にも使われているロビーで待機することにした。
「しかし、カナンには驚かされたな。」
「本当だよね。魔法が使えるのはわかっていたけどエルに使った攻撃魔法は風魔法?」
「違うよ、光魔法Lv2のスターライトアローだよ。」
「そうなんだ。他にも風魔法だったり…使える訳でしょ。今日新しく発現した訳でもなさそうだし、凄いよね。」
危うく精霊召喚を口にしかけたフリム。
「フリムだってSTRは既に青銅等級クラスだし、薬師Lv2だったじゃないか。どおりでお前の作った山菜料理を食べた後、体の調子がいいと思ったんだ。」
「知らぬ間にドーピングしてたんだね。」
「ドーピングいうなw」
「ドーピングって何?」
そんな他愛もない話をしていた時。
「そこにいるのはエル君。また会えたね。」
話しかけてきたのは、真っ赤な長髪に、長剣を携えた冒険者ライラ・スカーレット。
「あ、ライラさん。昨日はありがとうございました。」
エルは慌てて立ち上がり頭を下げた。
「そんなにかしこまらないでよ。それより、私もここ、相席させてもらってもいいかな?」
「もちろん。こんなところで良ければいくらでも。」
「フフ、ありがと。」
時間は昼前、冒険者がクエストを求めて国営ギルド本部に集まってきていた。
ライラは席に着くと自分を見つめる二人について聞いた。
「こちらの二人はエル君のお友達?」
「はい、男の方が幼なじみで、冒険者仲間のフリムです。」
「フリム君ね。私はライラ、ライラ・スカーレット。よろしくね。」
「フ、フリム・グラント……です。」
憧れの存在と握手を交わし、緊張のあまり固まるフリム。
「そちらの可愛い方は?」
「か、可愛いだなんてそんな……。」
なぜか顔が赤くなるカナン。
「彼女……」
エルは言いかけて、どう説明すればいいか迷った。
「彼女なの?ガールフレンド?ふむふむ、エル君も隅に置けないねぇ。」
ライラは悪戯っぽく笑う。
「ちょっ……違いますよ。彼女はアクレスたちの知り合いで、カナンっていいます。今はオレたちの仲間です。」
「カナンちゃんね。ライラ・スカーレットよ。よろしくね。」
「カナン・ステラリスです。こちらこそ、よろしくお願いします。」
握手を交わしホッとひと息つくカナン。
「今日は三人でクエスト受けにきたの?」
「いいえ、実は……。」
エルはマグナ・アラエが解散になってしまったこと。カナンとアクレス達のこと。新ギルド設立のためのこれからのことを話し、アネモネへお礼に行くことがしばらく後になりそうなことを詫びた。
「それは大変だったね……マグナ・アラエは解散か……。」
少し寂しそうな表情を見せたライラ。
「すみません、オレたちが不甲斐ないばかりに。」
「悪いのはアクレスたち!君たちは何も悪くない!!頑張ってマグナ・アラエなんかより凄いギルド作って、帰ってきたとき驚かせてあげなよ。そして、みんなで遊びにおいで。」
ライラは優しく力強く励ましてくれた。
「ところでライラさん、今日はクエストですか?」
「今日はギルドのおつかい、新人の子の冒険者登録とステータス確認。あっ、ちょうど終わったみたい。」
一人の女性が迷子の子猫のようにきょろきょろと辺りを見回している。ライラはコッチだよと女性に向かって手を振った。
気づいた女性は少し恥ずかしそうに急ぎ足で近づいてきた。エル達の座るテーブルまでくると小さくお辞儀した。
長く艶のある美しい黒髪に、黒のローブを纏う、少し影のある大人しそうな雰囲気の女性だ。
「この子、アネモネの期待の新人なの。」
ライラが自慢げに言う。
期待という言葉にビクッと反応する女性。
気にも留めず自己紹介を促すライラ。
女性は諦めたようにため息をつく。
「リュカ・ノクターン……です。」
消え入りそうな声で名乗った。
ーーーその頃、国営ギルド本部ではちょっとした騒ぎとなっていた。
それは、光と闇2人の精霊使いの出現が何かの前触れではないかと……。
スキル紹介
盾:物理・魔法を防ぐ見えない盾を展開する
薬師:薬草から様々な薬を作り出せる
精霊召喚:精霊を召喚できる
各属性魔法:属性に応じた魔法が使える
絆:仲間との絆を力に変える
人物紹介
リュカ・ノクターン
所属:アネモネ
職業:闇の精霊使い
種族:エルフ
身長:166
年齢:19
性格:引っ込み思案で大人しい
普段は人間のフリをしているが実はエルフ
おまけ
ルミ
種族:光の精霊
ーステータスー
STR:283
VIT:375
INT:333
MNO:428
DEX:292
AGI:379
LUX:400
等 級:白金クラス
《あなたは冒険者ではありません》
ースキルー
????
ー属性ー
光Lv7
主の精霊使いの成長と共に強くなる。
精霊召喚Lvに応じてステータス変化。




