第三話 親友と昼食の時間 へようこそ
ギルドの館に難しい顔をして帰ってきたエルを迎えてくれたのは、フリムが腕によりをかけた料理だった。といっても、財政難の現状で用意出来たのは、家庭菜園で採れた野菜中心の質素な物だったが、すでにお昼過ぎ、朝食も食べずに飛び出したエルにはありがたかった。
「お帰り、エル。」
「ただいま、フリム。食事の用意してくれてたんだな。ありがとう。」
二人は食卓に着き感謝の祈りを捧げ食事を始めた。
エルは固いパンをスープに浸しながら、国営ギルド本部での話を、どう切り出そうか悩んでいた。
「やっぱり解散?」
先に口を開いたのはフリムだった。
「えっ、うん。えぇ」
「そうだよね~そんな甘くないよね。」
「あぁ……って、オレ何も言ってないんだけど。」
「何年付き合ってきたと思ってるの。エルの行動パターンくらいだいたい分かるよ。国営ギルド本部に行って、解散処分の取消お願いしにいったんでしょ。それで、難しい顔して帰ってきたってことは、良い結果ではなかったんだよね。」
「その通りだけど、凄いな。もしかして、バッカスに絡まれて、ライラさんに助けられたことも?」
「いや……それはさすがに。」
国営ギルド本部に行って帰ってくるだけで、何でそんなことになってるのwフリムは苦笑した。
「ちょっと待って。今、ライラさんって言った?あのライラさん。灰燼の炎姫、アネモネのスカーレット様!」
「灰燼?……様?!あ、あぁ……そうだよ。そのライラさん」
「うわぁ~いいなぁ~あの人、超カッコいいよね。物凄く綺麗だし、今人気実力共にうなぎ登りの、銀等級冒険者なんだよ!憧れちゃうな~。」
「あの人の通った後には、全てが一瞬のうちに焼き尽くされて、灰しか残らないんだって。」
「そ、そんな凄い人だったんだ。」
「エルが知らなすぎるんだよ~。それで、何か話せたの?」
「ん、あぁ……今度助けてもらったお礼のためギルドに伺う約束と、いつか一緒に冒険しようって言われた。」
「えっずるい、それはずるいよエル。…いや待てよ。僕もついて行けばいいんじゃないか!」
ライラさんの名前を聞いてから、フリムが謎に盛り上がっている。これからする新ギルド立ち上げの協力を求めるには良い流れだが……。
「一緒に行くのはライラさんに許可もらうとして、いったん落ち着いてオレの話を聞いてくれ。」
「うんうん、そうだね…許可が必要だね。で、話って何?」
「実は……。」
エルは改めて、解散処分は覆らないこと。ギルドの存在意義。新ギルド立ち上げについて、今後、自分がどうしたいかを話した。
フリムは話を聞き終わると、大きく深呼吸した。
「ギルド……マグナ・アラエ解散は本当に残念だ……アクレス達の大切な場所を守ることが出来なくて悔しい。今の僕たちではどうすることも出来ない。だけど、エルのやりたいこと、考えていることは分かっているつもりだよ。」
「フリム……」
「やろうよ……エル。アクレス達が安心して帰って来られるようにギルドを作ろう。たくさんの仲間を迎えて、たくさんの冒険をして、マグナ・アラエとは違うギルドにはなっちゃうかもだけど、僕たちのやり方で最高のギルドを作ろう!」
「あぁ……そうだな、最高のギルドを作ってやろう!絶対にだ!!」
「僕たちならできる!」
親友の頼もしい言葉にエルの迷いは完全に消え去った。
「名前はまだないけど、誰もが安心して帰ってこられる場所、それがオレたちのギルドだ。」
新ギルド設立
それにはいくつか乗り越えなければならない条件がある。
「拠点となる館に、構成員五名以上で、さらに鋼等級以上の冒険者の在籍が必要か。」
「それに準備資金も必要だね。」
「ああ、全部足りないな」
等級と準備資金はあまり時間をかけたくないからクエストを頑張るとして、早急の問題は拠点と仲間だ。
拠点となるギルドの館を買うのはもちろん、借りる金すらない。お金を稼ぐには日々のイツデモバイトだけでは、その日を生きるので精一杯。やはり、クエスト受注して、稼がなければ話にならない。
そして、クエスト受注には、最低三人パーティーが条件だ。
拠点と構成員五名を同時進行で探さなければならない。
拠点は都市部だと、購入するにも借りるにも高すぎるから、少し離れた町に引っ越すとして、仲間を募るのに良い方法はないものか。
解散処分まで何もしてこなかった訳ではない。大都市には大勢の冒険者がいるし、集まってくる。直接勧誘していたこともあるが、大都市が故に、希望や野望を持って来る者がほとんどだ。衰退していくギルドに興味を持つ者はいない。
とりあえず動き出すしかない。片っ端から声を掛けるか、貼り紙でもするか、国営ギルド本部のエリナさんに相談するか、全部試すしかないか……ブツブツ独り言をしながら思考を巡らしていると……。
「トン……トン」
玄関の扉をノックする音がした。
来客……はないか、国営ギルド職員が館の明け渡しの催促にでもきたのかと警戒していると。
「トントン……」
再び扉をノックする音がした。
警戒しているエルの代わりに、フリムが扉を開けると、そこには1人の女性が立っていた。




