表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

第十二話 不思議な力 へようこそ

―――薄暗い部屋の中、一人の女性が水晶玉を覗き込んでいる。

「あら大変……でも、まだやれるわね。頑張って……。」

 女性は水晶玉に向かって語りかける。

 そこに映るのは、モンスターに飲み込まれたエル。

 女性は水晶玉を見つめたまま静かに見守る―――


「オレはどうなったんだ?」

 カナンを助けようとモンスターの前に立つと、視界は真っ暗になり身動きが取れなくなった。


「喰われたのか。いや、身動きは取れないが痛みはないな……丸呑みされたか?」

 エルは己の身に何が起こったのか理解し、パニックに陥りそうになりながらも状況を確認する。


 手足は僅かに動かせるが、声が出せない。出せないというより詰まる。息苦しく、呼吸が上手くできない。


 弾力のある肉壁に挟まれどうすることもできず、何か方法はないか考える。


「そうだ!盾スキル。」

 すぐに発動させるが変化はない。


「くそ、だめか!こんな時に魔法があれば……。」

 カナンの防御魔法ルミナス・ヴェールならなんとかなるのではないかと思っていると、全身を淡い光の衣が包む。


「カナンか?ナイスタイミング。」

 淡い光と肉壁の間に隙間ができる。



 エルがモンスターの体内で試行錯誤している頃、カナンとフリムはというと――


「どうしよう、私を庇ってエルが食べられちゃった!」

「ぎゃーっ、エルを食べないで~。僕の筋肉の方が美味しそうでしょ……でも、食べないで~。」

 しっかりパニックに陥っていた。


「あれ、デスボイズ・ワームだよね。ここ十年出現してなかったから、この地からは移動したって情報なのに。」

 必死に頭の引き出しを開けるフリム。


「待って、あそこ……中から光ってない。」

 デスボイズの体の一部が薄らと光っているのをカナンが見つける。ちょうど人間の大きさだ。


「きっと、エルがあそこにいるんだよ。カナン、あの辺に魔法を撃って。」

 光る場所の少し下を指すフリム。


「ええ~っ、わかった。撃つよ!」

 カナンはフリムの言葉に従って、光る場所へと特大の魔法を放った……。


「わ~もっと下だよ~。」

「へっ?!」


 放たれた特大の魔法は見事に光る場所へ命中する。


 ……デスボイズの胴体をエルごと貫く大惨事かと思われたが、特大の魔法は胴体を傷つけることなく霧散した。



 エルはデスボイズの胴体を襲った衝撃で、確保していた隙間を失ってしまう。

 身を包んでいた淡い光も衝撃で薄くなり、肉壁の圧迫が強まってくる。


 意識が遠のく……。



―――「何をやってるのかしら、あの子たち。」

 水晶玉に映るドタバタ劇に、女性は微笑を浮かべる。

「面白いものが見れたし、今回は助けてあげる。」

 手に持つ扇子が青紫色に光る―――




 エルは首筋に生温かいものを感じた……携帯袋から、人型の紙切れがするりと出てきて、青紫色に発光する。




 外では、デスボイズが人ひとり丸呑みしたことで満足したのか、フリムとカナンの奮闘も虚しく、地中に潜ろうとしていた。


「待って、お願い……行かないで。」

 フリムがどこかで聞いたことのある言葉を呟いたとき。


 突如、デスボイズの動きが止まり、身をくねらせ暴れ出す。

 しばらくすると、光っていた辺りの胴体が膨らみ、そのまま膨らみは口へと移動してエルを吐き出した。


「げはっ……がはっごほ」

「大丈夫?」

 咳き込むエルに駆け寄る二人。


「あぁ、助かった……カナンがルミナス・ヴェールかけてくれなきゃ、やばかった……。」

「えっ、私使ってないよ。」


 そんなはずはない、あの身を包む光は確かにルミナス・ヴェールだった。


「助けようとして、無意識のうちに使ったんじゃないか?」

「そうかなぁ、あの時は必死だったからわからないや。」

「きっと、そうだよ。」


「その後の謎の衝撃にとどめ刺されそうになったけどな。」

 エルの言葉に空気が凍り付く。

 

「それは……はい、私です。ごめんなさい。」

 消え入りそうな声で謝るカナン。


「違うよ、あれは僕の指示が曖昧だったからで、カナンのせいじゃない。」

 自分の不注意だと言うフリム。


「モンスターの腹の中にいる時、外で何が起きていたかわからないが、二人はオレを助けようとしてくれた。そして、結果は無事だったんだ、それでいいだろう。」

 なんとなく察したエルは明るく振る舞う。


「エルがそう言うならいいけど……。」

 まだ申し訳なさそうなカナン。


「リナーカカイナに着いたら、スイーツを一つ奢ってくれ。」

「うん、わかった。」


「それにしても、エル。どろどろだね。」

「あぁ……臭うし最悪だ。早く洗い流したい。」

「少し先に進めば川があるから、そこまでの辛抱だね。」


 悪臭を放つエルを救うため、三人は川を目指して先を急いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ギルド解散を阻止するのかと思ったら、新しく作るというのは想定外で面白かった笑 「帰る場所を作る」がキーワードですね。 設定はド定番の王道ですが、未熟な新米冒険者が一歩ずつ成長する過程が丁寧に描かれて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ