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貴方の初恋に付き合うつもりはございません!  作者: 彩紋銅


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7 叶った初恋【エドワード】

 ◆◇◆


 私が生まれた時、両親と()()()()はとても喜んでくれたらしい。

 跡取りたる王子が生まれたと。

 しかし、母である先王妃が事故で亡くなると、暗雲が立ち込めてしまった。


 その当時、国では疫病が流行しており、その対策のために国の財政が危うくなった。

 私の父である国王陛下は資金援助を受けるため、特例として側室をとった。

 側室となったのは、裕福な侯爵家のご令嬢だった。


 私の母が亡くなったのは、それからすぐのことだった……


 そして、側室は現王妃となった。

 この期間はかなりゴタゴタしていたため、世間では先王妃が亡くなってから後妻として現王妃が王宮に嫁いできたということになっている。


 そうなると、王子である私の存在は邪魔になるので、病によって死んだということにして、私は物心つく前に王宮を離れた。


 私を受け入れてくれたのは、アルメリア伯爵家だった。


 アルメリア伯爵家は表向きは過去に王族が嫁いできたくらいにしか特徴のない目立たない貴族だが、その正体は王家の〝影〟を多く輩出している家だ。


 その後、王宮では異母弟のジェフリーが生まれ、彼が唯一の王子であり王太子となった。


 私はアルメリア伯爵家で、様々な技能を習得した。

 修行は厳しかったが、できなかったことができるようになるのは、楽しかった。


 そして、私はアレクシア(運命)と出会う。


 私が十歳、アレクシアが八歳の時だった。


 私は、護衛の実地訓練のためにも、アレクシアの執事兼護衛として、彼女に仕えることになった。


 彼女は私を、とても嬉しそうに歓迎してくれた。


 ◆


 それからは、疫病も収束し国の財政も回復していった。

 ジェフリーも、王太子として申し分ない成長をしており、十歳の時にアレクシアとの婚約が結ばれた。

 家柄と、ジェフリーの一目惚れでこの婚約は整ったらしい。


 私は、心がチクリと痛んだが、当時はその理由が分からなかった。

 そして私たち三人は幼馴染として成長した。

 二人が国を治める側で、その手助けがしたいと思っていた。


 しかし、二人が十四歳の時に転機が訪れる。


 ジェフリーが、アレクシア以外の誰かに恋をしたため、アレクシアを愛せないと宣言したのだ。


 それも、彼女の十四歳の誕生日パーティーの席で!


 その頃にはジェフリーを愛していたアレクシアは傷付き、数日泣いて過ごした。

 陛下からはすぐに謝罪の手紙が来たが、ジェフリーからは現在に至るまで謝罪の言葉すらなかった。


 私は異母弟を殴りたかったが、伯爵家の令息でしかない自分にはどうすることもできなかった。


 それから、ジェフリーは『初恋の君』の捜索に時間を割くようになり、その分アレクシアとの時間を削った。

 陛下や姉たちは態度を改めるように諭し、ブルーベル公爵家からは改善要請を出したが、ジェフリーの態度が治ることはなかった。


 ジェフリーの態度は、二人が貴族学園へ入学してからも続いた。

 いや、むしろ悪化した。


 ジェフリーは『初恋の君』が見つからない苛立ちをアレクシアにぶつけ、取り巻きたちと共に彼女を馬鹿にし始めたのだ。


 私は、アレクシアを守るために同じ時期に入学した。

 しかし、性別が違うと学園ではずっと一緒にいられないので、認識変更の魔法具で女性に見えるようにした。

 年齢も私はアレクシアより二歳年上だが、アレクシアと同じ時期に入学した。

 年齢に関しては、()()()()()はよくあることなので、そこまで不審には思われないが。


 ジェフリーとは、アレクシアの誕生日パーティーのあの日から疎遠にしているが、初恋に狂ってしまった彼が私のことを気にすることは無かった。


 ジェフリーの学園生活は、あまりいいとはいえなかった。

 彼の入学と同時に、三人の姉たちが嫁いだり、婚約者と同居したりと彼を諌める者たちが一気にいなくなってしまったのも原因だが、恐らくこれも現王妃の差金だろう。


 二年生になり、取り巻きの意見に流されあっさり『初恋の君』以外の相手と関係を持ち、相手が『初恋の君』でないと分かるとあっさりと相手を捨てるのも不誠実で最悪だった。

 そのおかげで、アレクシアの心が完全にジェフリーから離れたのは僥倖だったが……


 しかし、三年生になり、ようやくジェフリーの『初恋の君』が見つかった。

 これでアレクシアとの婚約も解消されると安堵したのも束の間、ジェフリーは婚約解消はせず、アレクシアに仕事を押し付けるためだけに婚姻契約を結ぶと言い出したのだ。


 その上、「愛する人には苦労をかけたくない」だと?

 さすがに、見下げ果てた。


 卒業記念パーティーでそう宣言し、さすがにアレクシアも心が折れてしまった。


 だからその日の夜、私とアレクシアは人知れず()()()()()()


 本当はこのまま二人でどこかへ逃げてしまいたかった……


 ◆


 その後、アレクシアはジェフリーと書類上だけの婚姻を結び、登城した。

 私も、魔法具で見た目と性別を偽り、学園の時と同様に侍女としてアレクシアについて行った。


 離宮にほとんど引きこもっていたおかげか、誰も私の正体には気づかなかった。

 まあ、元々印象に残りづらいようにはしていたのだが。


 当てがわれた()()()()()()にてアレクシアは日々、公務に追われていた。


 夜会などの人前に出る仕事はジェフリーの『初恋の君』であるリタ嬢が担っていたが、それ以外のデスクワークなどは、アレクシアが担当していた。

 私も手伝っていたが、次第に王太子妃の仕事以外のものも含まれ始めた。


 それなのに、あいつらはアレクシアを害そうと動き始めた。


 許せなかった。


 だから、〝影〟に()()()、彼らが用意した魔獣を予定より早く解き放った。もちろん、被害が出ないよう誘導と退避経路の確保は済ませていた。

 そもそも、あの魔獣はかなり弱体化させておいたので、完全に見掛け倒しだったのだが。


 アレクシアに特異魔法を使わせたのは、彼女の実力を周囲に知らしめるためだった。

 その目論見はうまく行ったが、まさかジェフリーの本当の『初恋の君』がアレクシアだとは思わなかったが……


 ジェフリーと二人きりの時に聞いた話では、彼はアレクシアが『初恋の君』である可能性について考えたことはあったらしい。

 しかしもしそうなら、彼女の十四歳の誕生日パーティーでのやらかしで彼が完全に悪者になってしまうので、その可能性を必死に心の中で否定していたそうだ。

 要は、謝りたくなかったのだ。


 それが、彼女を冷遇するという行動に繋がったらしい。


 彼は必死に謝罪の言葉を口にしていたが──もう遅い。


 もう二度と、アレクシアがジェフリーを愛することは無いだろう。


 そもそも、私が許さないからね。


 ◆


「アレクシア、綺麗だよ」


 私は、ウェディングドレス姿のアレクシアに見惚れていた。


「ありがとう。あなたもかっこいいわ、エドワード。いつも侍女の姿だったから、男性の姿はいまだに新鮮だわ」


 彼女も、私に愛おしげな視線を向けてくれる。


「ああ、ようやく君を表立って愛しても、問題がなくなったよ」


 すべてのことが片付き、この日私たちは結婚式を挙げる。


 王太子だったジェフリーが臣籍降下になったので、私が王太子となった。アレクシアは王太子妃を続投だ。


 とはいえ、私たちは()()だ。

 いずれ生まれる、姉たちの子供に男児が生まれたら、その子に王位を譲る予定だ。


 アレクシアにはこれまで苦労した分、自由な時間を多く取りたいと思う。


「末永く、一緒ににいようね」


「もちろんよ」


 晴れた空の遠くで、祝福するように遠雷が響いた。


 ◆


 その後、現王妃殿下が先王妃の死に関わっていることも確定され、蟄居している屋敷で毒杯を賜って死んだ。


 カルミア元伯爵も死刑が完了した。


 リタ嬢はジェフリーを婿として迎えたが、子供が生まれたことで髪を染めていることもジェフリーにバレて、夫婦仲は険悪になってしまったそうだ。

 しかし二人は別れることができない。

 それが、ジェフリーに対する罰でもあるからだ。


 ジェフリーはカルミア伯爵の爵位を継いだが、いまだにアレクシアのことを諦めてはおらず、要注意だという。

 彼も、アレクシアを蔑ろにしなければ、もっと良い人生になっただろうに愚かなことだ。


 まあ、ジェフリーにアレクシアを渡す気は無い。


 初恋は誰にとっても特別なものだが、それに狂わされてはいけない。

 そもそも、初恋が叶うこと自体が稀だ。


 そんなものに振り回され、彼のように真実に気付かず、本当に大切なものを失ってしまうかもしれないからだ。


 だが、愚かなジェフリーのおかげで()()()()()()()()のだから皮肉なものだ。

 まあ、彼女のことは、私が幸せにするのだから、彼には領地で自分の行いを悔いていればいい。


 その後、ジェフリーが領地から姿を消したという報告が入ったが、間違いだと信じたい……


 まさか、そこまで愚かではないよな? ジェフリー()よ。


 ◆


 その後、私たちの予想に反して私の王としての在籍期間は、長いものになった。


 理由は父や姉たちが、王を辞めることを許さなかったからだ。

 悪い意味ではなく、いい意味で、だ。

 アレクシアの人気が高く、王位を退くのを国民が拒否したのだ。

 嬉しいことではあるが、アレクシアとまったり余生を送る夢が遠のいてしまったのは申し訳なかった。

 彼女は笑って許してくれたけど……


 結局、後継も私たちの子供が継ぐことになった。


 そして、末永く私たちの子孫が、この国を治めていくことになり、私たちの名やエピソードも、末永く語り継がれることになるのは少し誤算だったかな……







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