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ゼグラーン戦記  作者: 椿
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交差する思惑 Ⅱ

8時間前のゼグラーンでは捕虜に関する壮絶な議論が起こっていた。


「だから、あの女性士官とその部下を解放して、不可侵条約的なものを結ぶことが最優先だろ、この戦いが長引けば間違いなく負けるのは俺らや。そうなったら残された同志がどんな扱いを受けるか、元の世界のこと知ってればわかるはずや」


タケヒロがそう声を上げて言うと、反論するものもいた。


「ですが元帥閣下、あの捕虜は我々が決死の思いで捕まえたのです!そんな簡単に逃すなんて、まして捕虜を解放したところで王国が不可侵条約を受け入れるとは思えません!!!」


それも正論ではあった。現在のゼグラーンは最も危険な位置で、棺桶に右足を突っ込んでいる状態なのだ。だが、タケヒロ以外の書記長も平和的な解決を望んでいた。


「200年前にあったかの国は、有能な軍人の平和的解決を無視した指導者のせいで300万人という犠牲を出すことになった。戦争に負け、教育が変わり、自国を卑下するように育てられたという。そんな風にはなりたくないやろ?わかってくれ、これは俺たちが最も生き伸びる可能性がある話なんだ」

「ですが…」

「もうよせ、それを決めるのは最終的に国民だ。それでで全てが決まる」


一人の士官が熱くなった一人を落ち着かせ、司令部には静けさが漂った。


「ありがとう、その通りだ。最終的には投票だ。我らの同志たちの判断を扇ごう」


そしてその夜に急遽用意されたゼグラーン国家方針投票で、捕虜を解放し平穏を選んだ国民たちが大多数だった。


「まぁ、やはり好んで戦争する奴はおらんな」

「そらそうや、好きで戦争やるのは武器商人か頭のおかしい連中だけやろ」


タケヒロの言葉にユウヤが答える。投票が行われたゼグラーン大宮殿の政府関係者以外立ち入り禁止の場所で、幹部の俺らはくつろいでいた。


「でも、さっきの彼の意見は正論や、捕虜がたとえ価値のある働きをしても、戦争をやめるかどうかを決めるのは向こうや」

「俺らは祈ることしかできないのね…」

「しゃーない、もし向こうが条約に耳を傾けなかったら国王と十天創元を殺すしかない。そうすれば国民の士気は下がって戦争どころじゃなくなるやろ」

「憶測だな」


互いに意見をぶつけ合っても不安は拭えなかった。そして、捕虜解放を最初に考えたタケヒロがドラグーン数十体と共に王国のシュレーデン要塞に向けて飛び立った。




「ドラグーンで俺たちを皆殺しにするんじゃ…」

「いや、それならなぜフェルブラント上級大将がいる?」

「本物とは限らん、撃ち落とせ!」


要塞にいる人間は皆思い思いに話しているが、そんな躊躇は与えまいと要塞の大きなバルコニーに降りてくる。


それを見た途端に逃げ出す者がいたが、カーンや他の将校はしっかりとその場に残っていた。


カーン自身も相手がどんな要求をしてくるのか、大体は見当がついていた。しかしドラグーンの存在が考えを否定してくる。ここに和平を求めに来たのならドラグーンは不必要だからだ。


タケヒロと捕虜が乗ったドラグーン1体がバルコニーに足を置いてゆっくりと姿勢を下げる。


捕虜と数十人の兵士たちが放り出される。


「この捕虜と引き換えに、不可侵条約の締結を要求します」


カーンや他の将校は、思いもよらない展開で汗が止まらなかった。


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