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ゼグラーン戦記  作者: 椿
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アウェンス・カーン上級大将

「こ、これは…」


王国の偵察兵が望遠鏡で見えたのは、湖を挟んで西側のティダロフェルとの国境に帝国軍が集まっている光景だった。


「報告しなければ…」


草を頭に被ったその兵士は雑音に紛れてすぐさま、姿を消した。その報告がどういう結果を招くかは今は誰も知らない。


最初の戦闘の後、互いは激しい行動に出ず、少々の小競り合いで時間が流れた。


「国境沿いでの小さな戦闘が続いている。攻勢に出るべきだという者もいるが、フェルブラント上級大将たちの行方がわからない以上、下手に動くことができない。最悪身柄を拘束さえているとなると、その情報だけで他の3大国が動く可能性もある」


王国と帝国のほぼ中心にある湖を一面見渡せるようにできている王国が建設した軍事要塞がある。


シュレーデン要塞である。先の大戦でもティダロフェルの湖からの侵攻を防ぎ、東側から王都に行くには必ず通らなければならない拠点だ。


この要塞が存在したことで、ティダロフェルは王都までたどり着くことができず、要塞に兵力を回した結果、全体の戦力の均衡が崩れ、大敗北を起こしたのだ。


「しかし、このまま小さな戦いだけではー」

「大変です!!!!」


王国軍の幹部たちの会議にその言葉が強く響き、一斉にその声の元を辿る。息を上げて汗を流す一人の兵士。


その者が手に持つ一枚の紙は強く握られたためか、少しシワが入っている。


無言で幹部の一人に近づき、一度敬礼をしてその紙を渡す。


「……………何!?ティダロフェルが!?」

「!?」


その発声られた単語『ティダロフェル』にその場にいた者たちは目を見開いた。


「ゼグラーンより厄介な奴らが来ました。西側のベルディオン山脈に目視だけでも3万の軍がいたとのことです」

「3万!?なぜこの時期に…いやこの時期だからこそなのか?」

「これはすぐにでも西側沿いの国境線に兵を増やすべきです」

「駄目だ、増員となれば北側と海岸線の守りが薄くなる」


ティダロフェルの動きに焦りを隠せない幹部たちは、各自に自分の意見を述べ出し、場が騒然となる。


「落ち着いてください、この状況で最も重要視するべきなのはティダロフェルです。北の十七連合は現在内戦が激しく、とても他国間の戦争に入れる状況ではありません。それにリリーヴェ魔術共和国は昨年、ラザール大陸へ侵攻し、大きな敗北を得てから慢性的な兵員不足に陥っております。」


そう冷静に話したのは、王国上級大将、アウェンス・カーンだ。没落貴族と言われたカーン家に生まれた彼は、幼少から戦術や基礎戦闘理論に興味を持ち、初めての戦場であるオリガステル=ティダロフェル戦争で功績を挙げ、さらに無敗のまま現在まで至る。その結果、36歳という若さで現在の地位にいる。戦闘指揮に置いて、王国将軍と並ぶほどの腕前と言われている。


「ですが大将閣下、だからといって北や海岸線を無防備にするわけにも行きません」


王国中将のルコイス・マルテラデランがそう反論すると、首を縦に振ったカーンがこう話し始めた。


「それは承知の上です。なので私は、ゼグラーン連邦との講和を進言いたします」


カーンの発言はその場にいた者たちのほとんどが眉を潜め、議論はさらに長くなると全員が肌で感じた。




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