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ゼグラーン戦記  作者: 椿
30/40

新装備

水の滴る音しか聞こえない牢で鉄格子を挟んで目を向け合う男女。


一人はゼグラーンの第二書記長兼航空幕僚長のタケヒロ。


もう一人はオリガステル王国の十天創元統帥長、ミフィーナ・フェルブラント。


だがフェルブラントはなぜ自分がこのようにして捕まったかを理解できていなかった。いや、詳細に言うなら思い出せなかったのだ。


「あなたに魔術をかけた。数時間前までの記憶を全て消した。だからあなたはここに入る前後の記憶が欠落しているんだ」

「……………」


そう言われ、少し黙り込むフェルブラントに、さらに言葉を投げた。


「あなたのことはこの前見た時から何かしら権力のある人間だということがわかった」

「変な気を起こすな、そうすればいずれあなたは王国へ帰れる」

「!?」


その言葉に驚愕と疑問の表情を浮かべるフェルブラントだったが、武器も持たないこの状況では、逆らうことは得策ではないと考え、ベッドの上に座った。


それを見たタケヒロは何も言わずに、その場を後にした。


その頃、仮司令室では士官学校の設立と装備の充足率強化務めていた。だが、労働力をできるだけ軍需に回してしまったために食料の自給率が一時的に落ちてしまい。一週間、食料は配給制になった。


「それでは行ってまいります。同志中将」

「うん、気を付けて」

「では」


馬車に乗ったカスミがティダロフェルに向けて走り出す。なんとか食料や資源の提供に関する交渉で成功を収めてほしい。


「さてと」


カスミを見送った後に、召喚獣に乗ってある場所へ向かった。

第二ゼグラーン工場(別称 第二国営ゼグラーン工場)だ。現在ここで、新装備の開発に力を入れてもらっている。


「お待ちしておりました、同志中将」

「例のやつはできてる?」

「はい、後は中将の許可さえあればいつでも量産できます」


そう言って、若い青年に導かれた先で、重い金属音が鳴り響く場所の中心に一式の装備が置いてある。


右から鉄帽、小銃、上着、手袋、ブーツだ。だがどれも今までのとは違い。ある細工を施している。


「耐物理と耐魔術はちゃんと付与したか?」

「もちろんです、それに従来なら付与されるだけで重くなった上着やブーツも軽量化に成功しています」

「ありがとう、これもみんなの団結のおかげだ」

「はい!」


そう言いながら小銃を手に取る、近接戦をしない俺からは重く感じるが、兵士たちからすれば、十分扱いやすくなったとは思う。

手袋やブーツも実際に付けて、重さや利便性を確かめる。


「うん、これなら十分に兵士たちを攻撃から守れるだろう。後で許可を出す。だが、今は有事だ。すぐにでも量産に入ってくれ」

「了解!」


互いに敬礼を向けた後、俺は少し思った。自分は敬礼されるほど有能な指導者になれているのだろうか。


不安の方が大きかった。


みんなの忠誠心に応えれるように必死にやっているつもりだが、何が正解か俺にはわからない。


だが、一刻も早く、こんな戦いが終わってくれるのをただ願うばかりだった。

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