戦いの残痕
「今回の戦闘で、防衛線の薄さが際立った。今現在、新たなトーチカと塹壕の建設をしているけど次の戦闘までに間に合うかはわからない、前線にはタケヒロが監視にあたってくれてるけど。次どんな攻め方で来るかもわからない。」
そう言うのはユウヤだ、今この会議室にはユウヤの部下含め、俺とシュウキが円形のテーブルを中心に座っている。
ユウヤの言葉を最後に沈黙が数秒流れる司令室で、シュウキが口を開いた。
「さっきの敵さ、妙なタイミングで撤退したよな?」
その言葉にこの場所にいる全ての人間が表情を固くし、聞き入った。
それは先ほどの敵が、不自然なタイミングでの撤退をしたことについてだ。一瞬敵の戦力の大幅な減少が撤退の要因になったように見えるが、それにしてはおかしなタイミングだと思った。
南からの敵の強襲があったにもかかわらず、北東西の敵は攻勢に出てこなかった。本来なら敵を北東西から離さないために、攻勢に出る、もしくは攻勢に出たと思わせるような行動を起こすのがあの戦術では普通なのに、敵はそうしなかった。
つまりは、何か異常事態が起こった、それしか考えられない。
それがどんなことかはわからないが、あの場面で敵が撤退してくれたのは幸運だった。
だが、第二波に十分警戒しなければならない。油断こそ最大の敵というのは皆理解していた。
「うん、これで会議は終了する。各自持ち場に戻ってくれ」
ユウヤの言葉を耳に入れた者たちはすぐにその場から去り、自らの役職に戻っていった。
「ん?」
まだ暗い夜の仮本部のすぐ横では、頑丈な作りで建設されているダルンケスト大通りの様子がうっすらと見えた。
まだ街灯がなく、日の明かりだけで視界を保っている状態だったが、もう大通りや女神像、ゼグラーン大宮殿は完成しかけていた。
「すごいな、ここまで建設速度が速いとは」
まぁ確かに、召喚獣は眠ったり休むこともないので、これが普通なのか?だが、この大通り一帯の建造物が完成すれば、市民の心の拠り所になるのではないかと俺は期待していた。
しかし、現在は戦争中だ。完成を喜ぶのは戦いが終わった後になるだろう。
それに、今は装備や弾薬が一時的な消耗を起こしている、早急に対処しなければならない。
地下工場での生産数を増やしているが、次の戦闘までに間に合うかはわからない。
我々は準備せねばならない、次の戦いで犠牲者をより少なくし、有利な交渉を行えるように。




