軍靴の足音
「なぜのこのこ帰ってきたのだ!!」
王国と帝国の国境付近にある、レアックスという軍事拠点で、怒号が飛び交った。
「貴様らは東部平野の重要さを理解していないのか!?あそこを突破されれば王都への道が開くのだ!それを竜の一匹や二匹が現れただけで、撤退しおって!」
その将軍の言葉になすすべなく跪き、謝罪を体全体で表しているナザック隊長に、将軍の後ろから現れた女性が、言葉を添えた。
「サザーク将軍、今一度気を落ち着かれるべきかと」
それは、十天創元のミフィーナだった。
「フェルブラント大将、これは国を守る軍人として、許してはならぬ行為です。十分な処罰が必要かと」
「ですが、魔術師もいない部隊でのドラグーンとの戦闘は、甚大な被害を被ります。見方の被害は最小に、そして敵には最大の被害を与えることに戦闘は1番の意味があります」
「どうかナザック隊長を重い罪に問われるよう、私にはその方の判断は正しかったと感じます」
その言葉にサザークは目を瞑って下を向き、ゆっくりと目を開いた。
「将軍の負うことは確かに正論ですな」
「ナザック、今回の件、フェルブラント上級大将の慈悲もあってのことだ。心に刻むがいい。貴様は1ヶ月牢に入っていろ」
「は、はい!!!」
通常では死罪に値する前線からの命令無視と撤退だが、ミフィーナの一言でそれが覆ったのだ。
これだけでも十天創元という組織が王国でどれだけの力を持っているのかわかるであろう。
ナザックを部屋から出した後、残ったミフィーナが一枚の紙をサザークに出した。
「…………」
無言のまま紙を手に取り、内容を読む。
「国王陛下からの勅命でありますか…」
内容はサザークには予想できていた。
ティダロフェルとの国境沿いに出現した謎の国家ゼグラーン、戦略的にも脅威になりうる国家を早期に破壊するため、十天創元とサザーク隊による連携でゼグラーンを滅ぼすようにと書かれていた。
「はい、それに署名をお願いいたします。すでにヴェラシデリ将軍とゴーセン将軍の署名はいただいております」
「そうか、ガルシアたちもか」
「わかった、少し待っていてくれ」
「はい」
サザークが書類に署名しているときに、ミフィーナは窓から外を見た。
青く綺麗な小鳥が二匹追いかけあっている、それを鋭い眼光で見つめるミフィーナは闘志を燃やしていた。
「雨か…」
先ほどまで青く輝いていた空が、一瞬で濁った雲に覆われ、小雨が降ってきた。
「よろしいかな、上級大将閣下?」
「はい」
「ですが、何故これほど戦争を急ぐのか、わたしには理解できません。小さい国家を滅ぼすのは武力以外でもいくらでもあります」
書類をミフィーナに渡しながらそう聞くサザークに彼女はすぐに返答した。
「これはティダロフェルへの牽制でもあるのです、かの大戦から何も反省していない帝国には武力での牽制が一番です。まして東側のラチェン平原に現れた国家など、障害以外の何者でもありません」
「それは、さらなる戦線の拡大を起こすかもしれませんぞ」
「分かっています、ですのでゼグラーン攻撃には私も参加いたします」
「!?」
驚いたサザークだったが、すぐにいつも通りに戻り、こう述べた。
「幸運を祈っております、上級大将閣下」
国内の問題が残るゼグラーンに軍靴の足音がゆっくりと近づいていた。




