7時13分の衝撃
5分も経たない内に乾杯のビール(内1杯ウーロン茶)が運ばれ、全員の手元に届く。
「よーし、全員手元に飲み物いったな!?では、幹事の俺が代表して乾杯の挨拶を。」
わざとらしい咳払いをしながら柴田がジョッキを片手にその場で立ち上がる。
「え~、本日はお日柄も良く皆よく集まってくれたな!社会人になって3カ月目の俺らだけど、今日は学生気分に戻って思い切り楽しもう!!晃が来れなかったのは残念だが、あいつの分も楽しむぞ!!今日は飲むぞお前ら!!じゃあ、かんぱーい!!」
「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」
うぇ~い、うぇ~いとお互いのジョッキをぶつけ合う。
久しぶりに喉を通るビールの心地良さに、一気にグラスの半分も空けてしまった。
「お~!翔良い飲みっぷりじゃん!!あ~俺も飲みてぇ~!!」
「あ~、うまっ!!めっちゃ久しぶりに飲んだわ。今日俺潰れるまで飲むかも。歩けなくなったらおぶってね、ダーリン。」
と隣の石田の肩に寄り掛かれば、
「任せろよハニー。」
と反対側の肩に手を回してくる。それを見て爆笑する伏見。
なんら変わらない。学生時代と変わらないテンションで返してくれる彼らに翔は安堵した。
(変わっていないのは自分だけじゃない。皆仕事では肩肘張ってるだけで、実際は何にも変わってない。良かった。)
石田の肩に寄り添い、ふっと小さく溜息をもらせばカシャッというシャッター音が耳に入った。ふと顔を上げて見ると、にやついて伏見にスマホを見せる石田の親友、緒方勗がいた。
「おい~、撮るなよ~。マネージャー通せよマネージャー。おい伏見!お前も俺のマネージャーならちゃんとファンの行動制御しろよな~。」
「えっ!?無茶ぶり!?俺翔のマネージャーなの?あっちょっ…ゴホンッ…困りますよ。うちの翔はまだ駆け出しですので、このようなゴシップが世間に出回るとこれからの芸能生活に支障が出ますので。先ほどのデータ、消していただけますよね?」
無理矢理怖いお兄さんのような声を出して緒方に迫る伏見を見て、今度は翔と石田がにやける。さあこのノリにどう返すのか。
「ば~か(笑)誰が吉村のファンだ。俺は誠の弱みをゲットしたんだよ~(笑)。」
「は?俺の弱み?なんだそりゃ?」
「これ、見てみ?」
そう言って石田にもスマホを見せる緒方。
「ん?翔が俺の肩に寄り掛かってるだけだろ?なんでこれが俺の弱みになんだよ(笑)」
「よ~く見てみ?吉村の前髪で顔隠れて女にも見えるだろ?(笑)これを、彩名に送るとどうなるかな~?」
「馬鹿っ!!やめろよ!!洒落にならん!!」
テーブルを挟んでスマホを取り合う二人に周りが注目する。
「なーにやってんだお前ら?」
柴田が声をかけると、スマホを極限まで石田から離れるように持った緒方が答える。
「誠と吉村のツーショットがさ、ショートカットの女が誠に寄り掛かってるように見えるんだよ。これを彩名に送ったらどんな反応するかな~って思って(笑)」
「おいっ!まじでやめろって!!」
「彩名って誰?石田の彼女?」
初めて聞く女性の名前に翔が尋ねると
「ちょっと前までは彼女。今は婚約者(笑)」
スマホを取り上げようと必死になっている石田を片手で軽くあしらいながら緒方が笑う。
「えっ!?何々!!?誠結婚すんの?」
突然の発表に驚きを隠せない伏見が食いつく。
その間も緒方に手を伸ばし続ける石田に根負けした緒方がスマホを差し出す。
即座に画像を消去されてしまい、翔は少し切なくなった。
「てかさ、てかさっ!!誠結婚すんの?いつ!?」
他人事ながら興奮する伏見にやれやれといった様子で石田が答える。
6人全員の目が石田誠をとらえる。
「はぁ、もうちょっとしてから正式に皆に言おうと思ってたのに…。勗のせいだからな!!」
顔を少し紅くして話し出す。
「実は、高校の時から付き合ってた幼馴染の彩名に、正式にプロポーズしたんだよ。」
「「「「「「おぉーーーー!!!!」」」」」」
「おーって勗は知ってただろ!?初めて聞きましたみたいなリアクションすんなよ!」
「悪い悪い(笑)俺と、誠と彩名は子供ん時からの付き合いなんだよ。」
悪びれた様子もなく話す緒方に伏見が更に食いつく。
「幼馴染で付き合ってそのまま結婚なの!?なにそれなんていうドラマ!?てかそうなると勗寂しくなるな。俺で良かったらいつでも相手してやっからな!!」
「いやいいわ(笑)こいつが彩名と付き合ってからも普通に3人で遊んだりしてたし、結婚したところで新居に入り浸る気満々だから俺(笑)ってか全員で押しかけようぜ~。」
「ひどっ!勗ひどっ!俺の優しさ返せ!!(笑)」
「マジで勘弁してくれよ…。まぁまだ婚約の段階で、結婚資金貯めたりしないといけないから、結婚式とか入籍はまだ先になりそうなんだけどな。けじめとして、ちゃんと決めただけだよ。」
ただの同窓会ムードから祝福ムードに切り替わり、より一層盛り上がる一同であったが、翔は一人考え込んでいた。
(つい最近まで学生だったのにもう結婚か…。早くね?まぁ、石田は元々責任感も強い奴だし、こいつと結婚する人が幸せになんのは確実だろうけど。この歳でそんな甲斐性あるもんなの?石田だけ…だよな?)
友人グループ一番のしっかり者の石田誠の変化を知った7時15分。




