再会は劣等感と共に
10日後。
しばらく自分の体臭に気を遣いながら過ごした翔は、いつか必ずあの店にリベンジに行こうと決めていた。口臭ケアスプレー、衣服等にかけるスプレーを毎朝必ず鞄の中に入れておくのが新たな習慣になった。
出かける準備を済ませ、最後に髪型の際チェックをしてから部屋を出る。
先日、大学時代の友人である柴田紀仁から連絡が来て、急遽同窓会を開くことになった。
今月は上手く金銭管理ができている。まだ厚みの残る自分の財布の感触を確かめ、翔は待ち合わせ場所へと足を速めた。3か月ぶりに会う友人たち、内1人伏見とは街でたまたま出くわし虚しい思いをした。しかし、今日の自分は違う。金はあるし、もやしの入った袋も持っていない。
変な自信が今自分を支配していることに気付かない翔は、意気揚々と久しぶりに顔を合わせるメンツを思い浮かべていた。たった3か月しか経っていないのだから、ほとんど変わっていることはないと、この時は確信していた。
少し早めに着いたため、近くのカフェに入って時間を潰すことにした。待ち合わせ場所が目に入る位置に席を取り、アイスカフェオレと携帯を手に、皆の到着を待つ。適当にネットを回りながら、バイト先で使えるネタを探していると、ディスプレイが柴田からの着信を知らせた。
「もしもし。」
「よう、吉村。お前今どこ?」
「ん?早めに着いたから今ロッソっていうカフェで時間潰してる。柴田今どこ?」
「あ~?あ~!!いたいたお前見えたわ!!もう皆着いてるから、出て来て。入口んとこで集合してっから。」
「あ、まじか。うぃー。了解。」
電話を切って顔を上げる。が、しかし見覚えのある顔が見当たらない。とりあえず居酒屋の方へ向かってみると、黒づくめの集団に入口が占拠されていた。
「あ、ちょっとすいません。通ります。」
片手を前へ出し、集団を横切ろうとすると突然誰かに肩を掴まれた。
驚いて勢い良く振り返ると、そこにはこちらと同じように驚いた顔をした柴田がいた。
「おいおい、どこ行くんだよ(笑)俺ら全員お前待ちしてたっつうのに。一人で勝手に中入んなよな(笑)」
「は?あれ?柴田??」
「そうだよ(笑)おーいみんな!!吉村来たぞ!!中入ろうぜ~。」
「え?皆?ってえっ!?」
よく見ると先程の黒づくめの集団は、仕事終わりスーツ姿の友人たちだった。
それに気付き、翔は安心したと同時に、居酒屋のガラスに反射して映る自分の服装を見た。
白いシャツにカーキのパンツ。黒のカーディガンに赤いスニーカーを合わせた
「自分まだまだ学生っす!!」と言う恰好の自分を取り囲むスーツ姿のお兄さんたち。想像もしていなかった状況に肩を落としつつ、中の店員にバレないように集団の真ん中に収まるようにして店内に入るのであった。




