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順調にいかないのが人生

久々に肉を口にし、機嫌の良い翔はいつもなら受け取らない口直しのガムを店員から受け取り店を出た。


念願が叶い、自然と鼻唄が飛び出す。そのメロディーの流れに合わせて、普段なら素通りするセレクトショップへと足を踏み入れた。


外観からは分からないが、こじんまりとはしているものの、店内の雰囲気は良く、動く度に焼肉臭を放つ自分が入ってしまったことに少し後悔しながら店内を見て回った。翔の存在に気付いた店員が近づき、営業スマイルで店員がよく言うフレーズその1「いらっしゃいませ。何かお探しですか。」というストレートボールを投げて来たので、こちらも正直に「いえ、たまたま立ち寄っただけでとりあえず見ているだけです。」と投げ返せば、「では、ごゆっくり。気になる商品ございましたら、そちらの鏡で合わせて見て下さい。試着される際には一度店員にお声がけをお願い致します。」とよく言うフレーズその2が返ってきて会話のキャッチボールは終了した。


最初は50センチ程離れた距離にポジショニングした店員がこちらの呼吸のタイミングに合わせて、10センチ、また10センチと距離を取ることに違和感を感じていたが、その謎は彼女が自分から完全に離れてしまった後のはっはっという少し荒い呼吸から推測できた。


「そんなに臭いか?」と一人手の平に息を吹きかけてみたり、シャツの首元の匂いを嗅いでみたが、自分では分からなかった。


先程の店員がいる方をちらりと見ると、鼻を押さえながら他の店員に小さな声で「あれはきつい」と話しているのが聞こえ、居心地が悪くなり、何一つ商品を手に取ることなく店を出ようと決心した。


女性店員2人が出口まで出て、「またお越し下さいませ」とよく言うフレーズその3と共に見送ってきたのを会釈で軽く流し、哀愁を背負って、白い光が射す自宅へと足を進めた。すぐさま口直しのガムを口に入れたのは言うまでもない。

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