第2章 追い縋る者-4
「……っていうことで、撃退しておきました」
「お疲れ様でしたねぇ。まさか一人で撃退できるとは」
感心したような表情のミランが、心からの賞賛を述べてくる。
とはいえ、消化不良気味な琉衣夜にとっては正直あまり嬉しくもない。
「正直雑魚だった。多分戦闘の経験もほとんど無い。ただ自分の力に振り回されてる、そんな感じだったな」
「まあ、敵対組織の鉄砲玉かもしれませんねぇ。個人としてはさておき、“罪咎の巣”としては狙われる要素なんてやまほどあるでしょうし」
「この時期なら、わかりやすい対象もいるわけだしな」
そう言って、彼らはちらりとある一点へと視線を向ける。
その先には用意された朝食をもりもりと平らげる二人の少女がいた。
「ん、どうかした琉衣夜?」
「いや、何でもない。うまいか?」
「すっごい美味しいよ。琉衣夜も食べなよ」
「……そうだな、これを飲んだ後にもう少しもらうよ」
手元のコーヒーを傾けながら言うと、瑠奈はにっこりと微笑んで再び食事へ戻った。
今日の朝食はイタリアの習慣に合わせたものということで、伝統的なイタリアの朝食がテーブルに並んでいた。
どうも彼らの習慣として朝食に塩っ気のあるものは食べないらしく、食卓の大半は甘味が占めている。
瑠奈も静も甘いものが大好きなので、朝からもしゃもしゃ食べているというわけだ。
琉衣夜はというと、甘いものが苦手な訳でも無いが流石にそれだけを食べるほどの甘党という訳でも無い。
コーヒーにも砂糖が入っているのがベースらしく、「甘くないものを」とお願いしてキョトンとした表情をされながら差し出されたマキアートをチビチビと飲んでいる次第である。
半眼でコーヒーをすすっている琉衣夜に、苦笑しながらロレンツォが話しかけてきた。
「日本の方からすると、甘いですよね。大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。実際美味しいし、食べられない訳じゃ無い」
「だと良いんですが。人によってはこれにどうしても合わない方もいらっしゃったので」
「……だろうな」
年齢層の若い彼らはともかく、ある程度の年齢の人にとってはこの食事は慣れるまで時間がかかるだろう。
とにかく甘い。
和食に慣れているとギャップが強いのだ。
「昼にはバイキング形式で色々出るので、それまで待ってもらえると……。もしあれでしたら、僕が何か買ってくることもできるので」
「いや、とりあえずは大丈夫かな。ありがとう、ロレンツォ」
「いやはや文化の違いとは如何ともしがたいものですねぇ。我々からすればこれが日常ですが、他人にとっては非日常ということですか」
そう言って、ミランもコーヒーを口に運んでいる。
だが、あのコーヒーは琉衣夜からすればベタ甘であること請け合いだ。
先ほどコーヒーと同じくらいの量の砂糖が投入されているのを見てしまった琉衣夜としては「……そっすね」と返すことしかできない。
それを見てミランは首を傾げ、ロレンツォはさらに苦笑を深めるのだった。




