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戻らぬぬくもり

 とある日の深夜のこと。

 瑠奈は、ふと目を覚ました。


 何だろう、何かとても嫌な夢を見た気がする。

 内容を思い出すことはできないけれど、そんな実感だけがこわばった体の中にあった。

 ふと、自分を包む掛け布団の向こう側へと視線を向ける。

 そこに寝ているはずの主は、しかし今はそこにいない。


「琉衣夜……」


 かけ布団を横に退けて、ベッドから降りる。彼が普段寝ている布団は、冷めきっていた。

 多分、瑠奈が寝たのを見届けてから外に出たのだろう。冷え切っていることから、布団を抜けてから相当の時間が経っているのは自明の理だった。

 隣の部屋に通じる扉を開ける。

 リビングにも風呂場にも、動くものの気配は何もない。……何も、いない。

 玄関まで歩いて見てみれば、彼が普段使っている靴がなくなっていた。


「どこに行ったの、琉衣夜……」


 自分の口からこぼれ落ちた言葉が、あまりにもか細いことに気づいて自分でも驚いてしまう。

 けれど、それほどまでに彼女の心は動揺しきっていた。


「帰ってきてよ、琉衣夜……」


 呟く。

 けれど、少女の言葉は誰にも届かず、夜の静寂に溶けていくのみであった。


 寄り添う者のいない真っ暗な部屋は、普段の暖かさを知っているからこそ余計に彼女の心を冷たく蝕む。

 ただ待っているしかない少女には、それはあまりにも冷たく心細いものだった。


「お願いだから……琉衣夜……」


 うわごとのように玄関で縮こまりながら呟いても、聞いてくれる人は誰もいない。いつもなら、彼女がこんなことをしていたら「何してるんだよ」と呆れたように言いながら頭を叩いてくれるのに。

 期待しても、そんなことは起きない。


 少女の頰から、一筋の涙が零れおちる。

 けれど、最も届いて欲しい相手には、その涙が届くことはない。


 夜は、ただ静かに更けていく。

 少女の嘆きを、その暗闇に包み込んだまま


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