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9/22

瑛

おとなだからね。うん。

色々、経験は違うし、考え方も違う。

おとながサッカーを始めるってこんなことになるんだ。

私は、とにかく律の組んだ私のための練習で試合のイメージを作ることになった。今回集まったメンバーの中で、1番サッカー歴が浅いのが私だ。ただ、だからこそ面白いと律は言ってくれる。

私は空手をやっていた。なので、体幹や蹴りは膝下で振り切ることができる。

律からの最初に与えられた課題が、左右100本ずつのパントキックだった。

高く投げたり、バウンドさせたり色々なパターンで100本蹴る。

利き足が無かったので、どっちが苦手もなかったが、正直、どっちも苦手で当たらない。

山さんは「腰から鞭のように振れてるから、当たったら、いいシュートになるよ」と言ってくれるんだけど。鞭がどんな動きかもわかんないし「当たったら」って言われても、当たらない分にはただのミスキックだ。


そもそも、なんでパントキックなんだろう。


これなら確実なインサイドキックの練習をして、CFW山さんやRMF仲さんやRSB幹さんに繋げたほうがいいんじゃないかと思う。みんなそれぞれ、律から出された課題をやってるけど、個人練習は私だけだ。

まあ、1番経験がないから仕方ない。ちょっぴり腐ってると圭さんがやってきた。

「律って面白いよね。俺、なんで律がこの練習を瑛にさせてるかわかるよ」

「え?なんでですか?私はわかんないですよ」

「そっかーわかんないんだ」

「・・・・わかんないです・・・・教えてください」

「いやですw多分、それに気がつくのも律から出された課題なんだと思うよ」

「意地悪ですね」

「いやいや。だってさ、サッカーって考えるスポーツじゃん。今やってる練習に実際の試合のイメージつけれ見れば?ひとつ、ヒントね。律からサイドチェンジの浮き玉がきたら、瑛、どうする?」

「トラップして・・・」

「ほら、そこだよw相手の出方で、対応は色々ある。そこを考えて練習すると楽しいよ。で、多分次は俺と練習を組ませると思う」

「え?C Bの圭と?」

「そ。そこまでの答えをイメージできると、律の練習ってワクワク!」

「イメージかー」

「今はさ。テトリスの1つ1つのパーツを作ってんのよ。俺、それがわかっちゃったから楽しくてさ。大変そうな瑛に少しだけ、お裾分けしにきた」

「うーわからん!」

「まずは、イメージ!」

「おけ!イメージね!」


イメージ。

サッカーでは大事なこと。

空手は「型」だったからな。

ちょっと型で考えてみよっと。

さっき、トラップを選択して笑われたよな。じゃ、ダイレクトパス?ダイレクトシュート?フェイント?即、ドリブル?

律からのサイドチェンジは浮き玉。ダイレクトパスをゴール前の山さんに出す。ボールが浮いてる間に山さんの位置を見なきゃ。DFの位置も。ゴール前にいなかったら?スペースに自分へのパス。一発でDFを交わすなら足元のトラップじゃダメだ。律のサイドチェンジの位置が深かったら・・・クロスだ。

ゴールに飛び込んで・・・ダイレクトシュートだ!


わ!見えた!


そか。これ、ゴールを意識して浮き玉を足のいろんなとこに当ててコントロールするんだ。で、どこに出すかをイメージして。だから、練習としてはとんでもないボールでも足に当てなきゃいけないし、優先順位はゴール最優先だからパントなのか。え?え?これって、かっこよくない?


これか!ワクワクって!


同じピッチで練習してる仲間を見ながら目があったり、動きを見たりしてるとボールはなかなか当たらないけど、ストーリーがあるから体が動く。軸足の位置、体の向き。すると景色が変わる。


「当たったら、決まる」


私のシュートがゴールに刺さる瞬間。山さんにクロスが上がる。山さんのヘッディングシュートがGKの手をすり抜ける瞬間が見える。


そんな風景、ずっと見てきた。


自分がその風景を作るって考えただけで、練習が単純じゃなくなる。

あー頭の中にイメージが湧き上がって100本じゃ足りない。


「いいねー瑛。見えてきたね。んじゃ、そろそろ圭と組んで練習しよっか」

ふふふ。きたな。これ、圭さんが言ってたやつ。

「圭のロングキックは柔らかいから。ダイレクトでコントロールしてもいいし、トラップしてもいい。イメージ選択肢の8割は攻撃ね。ダイレクトでゴールを狙うイメージ。落とす時は丁寧にコントロールすること。できればダイレクトの方がパワーが伝わるから、圭に丁寧に返す。圭には動いてもらうから当てる前に確認して」って、急に要求が増えたじゃん!


そっかー。パントキックはこのための基礎だったんだな。

圭のロングキックは初心者の私への入門編のパスを受ける練習。速くて重いボールは初心者の私には処理できない。圭が言ったのはそう言うことなんだ。

自分の投げたボールと生きたパスは全く違う。


「圭、この次、律は私にどんな課題を出すと思う?」

「今やってんのは俺の練習でもあるわけよ。だから、次は航が絡んでくるね」

「ん?どうして?」

「瑛にDFをつけるw」

ぎゃー!今、フリーでも大変なのに・・・

「やばいわー」

「だからさ。今から意識した方がいい。俺の出すパスもね、ミスじゃなくてD Fの位置を意識して左右前後に出すから。航の練習にもなる」

「わかった。今から意識する」


これがテトリスになって行くってことか。

それだけで、なんか嬉しい。

名波が見ていた景色には、まだまだ遠い。

でもさ。

私、今、その景色の中にいるんだ。

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