格差の危惧
「じゃっじゃーん! これが学園の制服だよ! どう? 似合ってる?」
『みつちゃん、かわいい……と、思う。……わたし……おしゃれ? とか、したことないから……変装ならできるけど……』
「変装できるの!? えー、凄いなぁ……! アルちゃんが変装とかするところ見たいなぁ……」
『わたし、みつちゃんの中にいるから。ごめんね』
鏡の前に立ち、アルテに制服姿を見せながらルピアはアルテが変装をする姿を想像しようとする。
だが、ルピアはアルテの姿を知らないために想像すらできなくて、ルピアは肩を落とした。
だが、アルテにかわいいと言われたことを思い出して、ルピアは途端に頬を緩める。
「アルちゃんアルちゃん、もう一回言ってほしいな。制服姿、かわいい?」
『かわいいと、思う。……わたしは、かわいいと思う』
「えへへ……褒められるのって嬉しいな。……よしっ、じゃあ、汚しちゃいけないし着替えないと。アルちゃん、見ちゃダメだよ〜?」
『意識しないことはできるけど、視界を共有してるから……見れなくするなんて、できないよ……恥ずかしい、から……わたしも、見れなくしたいけど……』
「ふふっ、冗談だよ。もうわかってるから。恥ずかしいのにごめんね、なるべく早く着替えるから」
『わ、わたしも、中々慣れなくて……ごめんなさい……』
少し震えたアルテの声に、ルピアはニコニコしながら素早く服を着替えた。
そして、ソファーに腰掛けると、アルテとの話を再開する。
「対策できたらいいんだけど……その、私って……貴族だし。……というか、公爵家の一人娘で……一人で着れるようなのは選ばせてもらってるけど、どれも複雑で、目を閉じたまま着られなくて。ごめんね」
『う、ううん。そこまで気を遣わなくて、大丈夫……あの、着たいなら、一人じゃ着られないようなのを着ても……』
「私あれ苦手だからいーのっ。お茶会とかではドレスを着ないといけないけど、学園に行くから数年間はそういうのほぼ無いし! 最高の気分だよ! ……友達ができないかもって考えたら、ちょっと気が重いけど」
『……友達作るの、苦手……? みつちゃん、優しくて明るいから、そういうの、得意だと思ってた』
不思議そうなアルテの声に、ルピアは苦笑いを返した。
そして、少し遠くを見つめながら言う。
「うん……友達と遊ぶのは好きだし、友達を作るのも……苦手な方じゃないと思う。……でも、私は公爵家の娘で……結構、高貴な立場な感じ? だから……なんていうか、近寄りがたいみたいなんだよね。話しかけやすい雰囲気は出してるし、なるべく積極的に話しかけてたんだけど……はぁ、友達ができなくて。学園はそういうの、少ないといいんだけどな……」
『……貴族がたくさんいる学園なら……むしろ、格差は大きいと思う。師匠が言ってた……そういう環境では、元の環境の差が大きく出てしまうから……成績とかでも差が出て、格差がどんどん大きくなるって』
「そっかぁ……じゃあ、覚悟しとかないとだね。あんまりこういうの言いたくないけど……私は、公爵家だから。手出しできる人はいないだろうけど……そういうの、見るのも気分悪いし」
ルピアはそう言うと、はぁ、と憂鬱そうに溜息を吐いた。
アルテはそれにハッとして、申し訳なさそうに言う。
『みつちゃん、ごめんなさい。わたし、ここのことをわかってもいないのに、勝手なこと……』
「ううん、慎重になるのは良いことだもん。大丈夫だから、気にしないで! アルちゃんは自分の知ってる情報を伝えてくれただけ。でしょ? それが絶対ってわけじゃないけど、覚悟を決めるのには役立つよね!」
『……みつちゃんは、やっぱり凄く優しい。ありがとう……』
「どういたしまして! ……あっ、でも……授業中、アルちゃんとは喋れないんだね。脳内で会話! とか、できたらいいんだけど……アルちゃん、私が考えてることはわかんないんだもんね」
『うん。確かに、それができたら便利だけど……できなさそう。みつちゃん、今何考えてるかなって色々試したことはあるけど……ダメだった』
アルテは一方的にルピアに話しかけることができるが、ルピアは話しかけるために声に出さないといけないために、学園内ではアルテと話すことは難しい。
それがどうしても嫌で、ルピアは悩ましそうに空中に視線を投げた。
解決法としてパッと思い付くのは、魔法に頼ることだ。
ただ、ルピアはまだ魔法について基礎の基礎くらいの、知っていて当然の常識の範囲内程度のことしか学んでいないし、魔法を使うことすらしたことがない。
そんな状態で、自力で解決することは難しいだろう。
「ん〜……うーん……でも、アルちゃんとお話したいなぁ」
『このままでいいと思う。みつちゃん……きっと、わたしとの話に夢中になっちゃうから』
「アルちゃんひどいよ〜……もしかしたら、私がどっちにも凄く集中して、アルちゃんとお話ししながら真面目に授業も受けられるかもしれないでしょ!?」
『ううん。みつちゃんは、そんなに器用じゃない。……みつちゃんが努力して、魔法を使ってわたしと話すなら……それは、自由だと思うけど』
「それならある程度時間も必要で、ちゃんと勉強も身に付くだろうから……でしょ? もう、アルちゃんってば年下なのに、私に厳しすぎるよ……」
不満そうなルピアにくすくすと、アルテは『微笑む』。
柔らかく笑うその顔が、ルピアにははっきり見えた。
「……今……え?」
『……? どうしたの、みつちゃん……?』
「アルちゃんの顔が、見えた気がする」
『……え?』
唐突な言葉にアルテは不思議そうに声を零し、ルピアの話に耳を傾けた。




