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8月8日、最後の花火まで②

第70章

 その後、数年後に、再び、ミオはアイシンとマユの側に戻って来た。


 「おはようございます。お二人とも遅れますよ」


 「ああ、ありがとう。いつもすまないね。行ってきます」


 「お父さん、早く! 早く!行 ってきます! 」


 ミオは、紫家の家政婦として、再び、二人の元に転生して来たのだった。


 「なんと・・・!! メイドなんて・・、金持ち庶民でもなく、この世界のメイドに・・」



 頭の整理を始めて、今回のミオは、雇い主である紫直哉を愛していながら、仕事をしているメイド?

 「ミオの気持ちって、いつも同じなのに・・・、彼は、相変わらず、本当に鈍い人だ」


 アイシンは、主の異世界を出る時に、名前を頂いていた。『紫 直哉』それがアイシンの名前だった。


 アイシンは、異世界を出る決心をしたのは、ミオを失った為で、主の助言もあったのだろう。


 「主にとって、結局、アイシンは、可愛い孫で、マユは、ひ孫にあたる。いつまでも闇の中に置いておけるはずもなく、陽の当たるこの世界に、二人を出したのだろう」


 「しかし、アイシンは多忙な日々を過ごしていて、マユとの関係は良好とは言えない」


 「年ごろの娘は、難しくて、彼にとって、腫れ物の様な存在らしい・・・」


 「それに・・、アイシンは国会議員になっていて、地元にいる事はほとんどない。マユとの交流は少なく、マユとは距離をとっているようにも思える」


 「一体、どうして・・・・」


 ミオとマユは、紫直哉が留守をしている時には、二人で過ごす事が多く、二人でいる時は、マユは素直ないい子に思える。但し、愛情不足は、否めない。


 「あんなに、マユの事を頼んで、旅発ったのに・・・、アイシン・ヴァイオリン、どうして・・」


 思春期爆発のマユは、父親と大きな喧嘩の後、東京の大学に通う為に上京して行ってしまった。


 母親としては、何もしてやれない、もどかしい気持ちで一杯だった時に、一枚の診断書を発見した。


 その診断書には、マユの病状が記されていて、マユは中学校の時に大きな手術をしていた。その時は、まだ、転生していなかったのだが・・・。


 ミオは、その診断書を見て、愕然とした。それと同時に、その診断書からマユの不幸が見えて、アイシンの苦悩もわかった。


 「このままでは、二人は、絶対に不幸になる。駄目だ・・・・。一度、リセットしなくては・・・。二人の為なら何でもできる。それしかない!」


 その後、ミオは、マユも上京した為に、辞職を紫直哉に申し出て、実家に帰る事にした。


 前世のミオにとっては、自分の実家は思い出の実家で、親しみも多いはずだが、しかし、今のミオにとっては、この場所は起点になっていた。ミオは、この前、覚えた魔法で、竜巻を起こし、この世を去った。


 「ミオさんのお母様、ごめんなさい。また、復活しますから・・・・」


 その後も、時間は繰り返され、紫直哉とベットを共にすることもあったが、アイシンの記憶は戻らず、絶望し、マユの病気も、治る事はなかった。期待と絶望を繰り返し、その度に、実家に戻り、竜巻を起こし、転生を繰り返した。


 絶望する夜は、主を罵り、罵倒して、寂しい夜を耐え抜いた。


 「主!! あなたは絶対に知っていたはずだ。この世界で、二人に襲い掛かる不幸を・・」


 「ああああぁぁぁぁ・・・。どうして・・・・。バカヤロー!! 」


 ミオは何度も泣いて、運命を呪いながら、転生を繰り返し、どうにか二人を幸せにすることだけを考えていた。


 

 何度目かの転生後、ミオは、地元の病院でマユに出会った。ミオは、この時も絶望を感じ、急いで、マユを抱いている男性に声をかけた。


 診察を待つ間、血の気が引いて行くのがわかった。

 「まさか・・、マユは・・・、また・・・・」


 「流産しかけています。絶対に安静が必要です」と医師から告げられ、東京から駆け付けた紫直哉は、嬉しさのあまりに泣いていた。その後、二人は可愛らしい孫にも出会う事が出来た。


 マユと一緒にいる彼氏と彼氏のご家族は、どう見ても異世界の人間に思えるが、紫直哉もミオも、全然、気にならなかった。


 「マユは、異世界で幸せになるんだ・・・。タクシンと同じように・・、私たちの側にはいないけど、二人の幸せの方が、何よりも大切だ。静かに送り出そう」


 その後、母親になったマユは、ミオやアイシンの気持ちを察して、正直に話をしてくれた。


 「お父さん、私たちは、違う世界に、行かなくてはならない」と、その前に、紫直哉に結婚するように後押ししてくれた。


 ミオは、その時、初めて気づいた事があった。


 「そう言えば、一度も、アイシン・ヴァイオレットが、進んでプロポーズしてくれた事がなかった。最初の結婚は、プラスムス家のごり押しで、二度目は、授かり婚、主の意向、それからタクシンとマユの後押し・・・。どういう事?」


 「こんなに頑張って来て、片思いなの?もしかして、尽くし過ぎてる?はぁ~~~、そんな、泣けてくる」


 アイシンは、昔のように、静かな呼吸音を保ちながら眠り、ミオは、その横顔を片目を開けてみる事が好きで、温かいアイシンの胸に抱かれながら、それでもこのまま生きて行く事を決めていた。


 「愛しいアイシン・ヴァイオレット、あなたの側で眠る事が一番の幸せです」



 マユが、この国を去ってから、ミオは再び妊娠して、男の子が誕生した。


 紫直哉は、紫家の仕事から手を引き、澪と托師の側で暮らす決心をして、地元の市長になった。



 8月8日、全国的に台風情報がテレビから流れる。朝食の準備をしながらミオはたずねる。


 「あなた、今日は、お休みですが、台風の為、役所に向かうのですか?」


 「ああ、午前中は、心配だから、役所につめていようと思っている。二人とも今日は、家の中でオリンピックでも見てなさい」


 「はい、お父さん、行ってらっしゃい」


 この頃、ミオは、すでに、諦めていた。アイシンは、結局、思い出さない。もうすぐ、あるじの言っていたタイムリミットが近づいて来る。それでも、ミオは、今の、この時間を大切にしたい。


 「マユの花嫁姿が見れて、たまに可愛い孫も連れて来てくれる。側には、アイシンと托師がいつも付き添ってくれる。・・・・幸福だ」


 ミオは、キッチンでお皿を洗いながら涙をポタポタ落としていた。


 「お母さん、どうしたのお腹が痛いの?食べ過ぎ?さっき朝ご飯食べて、また、チョコ食べたから?お腹が痛くなったの?」


 ミオは泡が着いた手を上にあげながら、しゃがみ、托師を抱きしめた。


 「違うのよ、お父さんがいて、托師がいて、マユ達一家がいて、幸せだな~~~って、思っていたら涙が流れて来ました。おかしいよね」


 「おかしくないよ。僕もいつもそう思っているよ」

 「本当?」

 「本当だよ。お父さんも、きっとそう思っているよ」


 夕方になって、台風がこの町を通過しないとわかると、紫直哉は、帰って来た。父親の帰りを心待ちにしていた托師に連れられて、結界の張られている橋にやって来た。


 この場所は、マユ達がやって来る入り口で、紫直哉が買い占め、マユのご主人が結界を張っている。


 その川と橋は、田んぼの中にあって、今は、最後のホタルが見える幻想的な場所になっている。


 「綺麗・・・、今年のホタルは少し多めで、美しいわね。マユさん達が、もうすぐやって来るの?」


 アイシン・ヴァイオレットは、振り向き、優しい声で、ミオの名前を呼ぶ。


 「ミオ・・・・」


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