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8月8日、最後の花火まで

第69章

 その後、ミオとアイシンは順調に結婚して、犯人も捕まり、ダルマルとミルクも、めでたく結ばれた。ミルクの魔法によって、大規模農場から一転し、国民たちは、自分の農場を持つことを許され、国民たちは、1プレーヤー(ファーマー)として、野菜作りに励む事がこのゲームの楽しみとなり、そして、各々が、エンディングを迎える。


 


 エンディング後に、ミオとタクシンは、一度、主のいる、現代社会に戻る事にした。


 都会の公園に姿を現した二人は、夏の暑い時間、いつもよりも交通量の少ない道を不思議に思いながら、手を繋ぎ歩道を歩いていると、タクシンが突然、橋の向こうを見つめ、知らない橋に向かって、走り出した。


 「母上!! 父上です。父上はきっとあるじの元を、訪ねて来たのです。『あつまれ王室恋愛ファーマー』が終わって、私たちを思い出したのかも・・・。父上~~~~!! 」


 「タクシン!!危ない!」


 それは、あまりにも一瞬の事で、ミオやタクシンにも、訳がわからなかった。


 繋いでいた手を放し、タクシンが、その橋を渡った瞬間、タクシンは違う世界へと転生してしまった。


 気を失ったミオが、目覚めた所は、あるじの住まいだった。見渡すと、見覚えのある部屋で、主は、背中を向けて、テレビを見ていた。


 「主、何をしているのですか?」

 「オリンピックを見ている」


 「主、タクシンは・・・どうしたのですか?ーータクシンを、また、どこかに行かせたのですか?」


 「ああ、今年は、4年に1度の年ではないが、オリンピックは開催された。まさに! 異例だ。異例づくしで、恐ろしい事が起こりそうだ」


 「??????」


 「だから、すごし、時を戻すことにした。儂は、この国が好きで、結局、この国を残したいと考えている」


 「??????」


 「ミオ、数十年前の日本に転生するがいい・・・、そこで、アイシンと出会いなさい。アイシンは、君を覚えていないだろうが・・・、しかし、チャンスは一度ではない。何度もある。何度も挑戦してみるがいい。その時まで、君に時間を与える」


 「主、何を企んでいるのですか?それに・・・、腰が真っ直ぐなあるじに慣れません」


 ミオは、頭の中で考えて、主にたずねる。


 「ジュリエールが、この日本に誕生しているのですね?主は、その事を知る為に、私をラミベース国に送り、ミオの占い能力で、正確な行方を知りたかった。だから、ここを拠点にして待っているのですね。ーーーなんと自己中な・・・人間」


 「タクシンは、タクシンは、大丈夫でしょうか?」


 「タクシンは、既に成人だ。彼もいつかは家族が必要になる。わかるか・・?いつまでも、母親に付き添っていてはいけないのだ。それは彼にとっては愛情ではなく、残酷な事になる」


 ミオも、確かにそう思った。自分が愛する人を探しいる間、タクシンは決して大人にはなれない。


 そして、タクシンは、愛する人を見つける事が出来ないのだ。


 「主、タクシンは、愛する人を見つけて、暮らせるのですか?」


 主の屋敷には、ダルマルが作った池が再現されていた。ミオは、その場に移動させられて、池に浮かぶタクシンの未来を見る事ができた。


 「あああぁぁ・・、涙が止まらない・・タクシン・・、タクシンは、人を好きになって、その人とその国で、生きている。凛々しいタクシン・・、どうか、どうか幸せになって・・・。タクシン・・。私たちのわがままに付き合ってくれて、ありがとう」


 ミオは、この時やっと、タクシン離れできたのだろう・・・。


 「ミオ、タクシンは影だ。さぁ、これからは、君一人で、アイシンに気づかせなくてはいけない。できるか?時間は、2021年8月8日までだ。最後の花火が鳴り終わるまで、ミオのすべてを尽くして、アイシンと幸せになって欲しい」



 それから、ミオは、現代から数十年前に転生した。アイシンは、紫家に産まれ、紫家の家業を継いでいた。紫家の家業は、代々、主の仕事を手伝いながら、日本の政治家が進むべき道を教えている。

 「・・・それって、ミオの能力なのに・・・!! 」


 進むべき道を教えても、不甲斐ない政治家たちは、その道を選ぶことをしない時もある。


 しかし、何度、失敗しても日本と言う国は、立ち上がり、国を再建する。



 主の異世界は、アイシンには、何故か、小さい頃から許嫁が存在していて、名は、ミオと言う。


 二人は、主の支配している架空世界で、一緒に過ごす事が許されていて、他の子供たちと共に勉強したり、川遊びを楽しんだりして、大勢の中の二人だった。


 ミオは、アイシンを知っているが、アイシンは、ミオが自分の許嫁だとは知らない。その時、ミオは、まだ、体が弱くて、川遊びに参加できるような体力はなかった。


 でも、みんなが遊んでいる姿を・・アイシンが遊んでいる姿を見ている事が大好きだった。


 「お嬢様、風が出てきました。戻りましょう」と催促され、いつもその場所を離れる。


 しかし、夜寝る時は、必ず、明日こそ、話しかけて、自分に気づいてもらう事ばかり考えていた。


 主の異世界は、実はエリート集団で、本当にどこに出しても、きっちり仕事をするような人間を育てていた。その中でも、アイシンは引けを取らないが、重要な決定をする人間は、他にも存在していた。


 子供ながらに、この異世界の厳しさを実感していると、初めてアイシンは、ミオを見つけ、二人は見つめ合った。その瞬間、ミオの帽子が飛び、アイシンは、ミオの帽子を拾って、川の土手を駆けあがり、届けてくれた。


 「はい、コレ! 君もここの人間なの?いつも土手の上にいるけど・・・、下には降りないの?」


 「少し体が弱くて、まだ、下には行けません。でも、私は、ずっとあなたを見ている事が好きで・・、ごめんなさい、ストカーだとは、思わないで下さいね」


 「ハハハハ・・、知っているよ。僕の許嫁でしょう?主から聞いています。僕たちは、一緒に学んで、いずれは結婚するって、だから、君が僕を知りたい気持ちは理解できる。僕も君を知りたいから・・・」


 「本当?」


 「本当だ。でも、いつか川に入ってみるといい、すごく気持ちがいい。暑い夏には贅沢なあそびだ」


 「絶対に入りたい。冷たい水に足を入れて、冷たいって、言いたい、その時はきっとそばに居てね」


 本当は、ずっと、ずっと、側にいて下さい。と言いたかった。

 「アイシン・ヴァイオレット、私の側からいなくならないで・・・・」



 それから何年も二人は一緒にいて、ミオは、密やかに、アイシンの手伝いもこなし、二人はそれでも普通の恋愛をして、正式に主に結婚の承諾を得た。


 ミオは、その時の主の複雑な顔を、見逃してはいなかった。


 「また、彼は、自分を置いて、この世を去ってしまうの、どうして・・・?何度も約束したのに・・」


 しかし、事実は、まったく逆だった。


 幸せな結婚生活が始まり、毎日が幸せで仕方なかった。もしも、アイシンがこのままミオを思い出さなくても、この時代で一緒に過ごせるのであれば、それでもいいようにも思えた。

それくらい本当に、幸せだと思えた。


 その後、妊娠して、ミオはタクシンが産まれてくると予想していたが、二人の間に産まれたのは、タクシンではなく、マユだった。


 「そうだよね。タクシンは・・・、もう、私の所には生まれて来てくれないのかも・・・」

と思ったりもして、嬉しさの中にも寂しさがあった。


 元々体が弱かったミオは、その出産を終えた後、みるみる体調を崩してしまい数年後、今度は、ミオがアイシンとマユを置き去りにしてこの世をさった。


 「そんな・・イヤ、お願い・・、一番心配なマユを置いては逝けない、あなた、マユを、マユを守って!! 」


 「あなた・・・。あなた・・・・。お願いマユを・・、マユの幸せを・・・、お願い・・」


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